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Phase6-2:私は道を見つけるか、さもなければ道を作るであろう

 アエラ、首都テラ。

「さあさあ、じゃんじゃん食べてくれえ!」

 ザ・コックはウインナーと野菜を炒めながら吠えた。

 アエラの壁沿いに、無数の屋台が並んでいた。そこでは生産スキルを持つプレイヤーがひたすら料理を量産し、これから戦地へおもむくプレイヤーたちに振舞っている。

 用意された簡易のテーブルの列の一画に、個性的な顔ぶれが集まっていた。

「さあ、新人君。食える時に食っておくんだな」

「は、はあ……」

「おいハンプティ! 俺のスクランブルエッグ食うんじゃねえ!」

「うるせえダンプティ! お前魔法攻撃力なんかいらねえだろ!」

 数日前にアロの街で起きた即興劇。その騒動に参加した、あるいは巻き込まれたプレイヤーたちだった。絶対防御のマーカス、巻き込まれた新人ホープ、そして双子のハンプティとダンプティ。四人はスタミナを上げるだけでなく、一定時間ステータスを上昇させる様々な料理を次から次へと食べていた。

「大丈夫かな……いきなり戦争なんて……」

「心配ないんだな。一週間四人でダンジョン巡りをした甲斐あって、君も下手なベテランくらいには戦えるようになってるんだな」

「それって結局下手なままなんじゃ……」

 ゲーム内であるにも関わらず、ホープはあまり食が進まない。

「新人君、もしかして緊張してるんだな?」

「そりゃしますよ! 副業になったらいいな、くらいの気持ちでゆっくりやっていこうと思ってたのに、いきなりこんな大イベントに……」

「なーにホープ、これは単なる祭りだ」

「わーっと盛り上がってればいいんだ」

 ハンプティとダンプティが喉を鳴らして笑う。

「はあ……」

 ホープが適当に相槌を打ちながら慣れない手つきでスープを啜っていると、甲高い鐘の音が一帯に響き渡った。

 それを聞いた途端、食事をしていたプレイヤーたちが慌ただしく動き始めた。

「きたぜきたぜえ、出陣だぜ!」

「テンション上がってきたぜ!」

 ハンプティとダンプティは、残ったホープのサンドイッチとスープをあっという間に平らげて立ち上がる。マーカスも椅子から降りて、自慢の蒸気機関の大盾を担いだ。

「合図なんだな。これから緩衝地帯へ侵入して、陣形を組むんだな」

 ホープは緊張の面持ちで頷き、装備を手に立ち上がった。


 四人は人の波に乗って、アエラの壁中央にある巨大な門をくぐる。人の波は門をくぐると左右に分かれ、アエラの壁に沿って広がっていった。

 緩衝地帯の面積は石川県の能登半島程で、アエラ、イーオンそれぞれの壁の長さは約四十キロに渡る。その広さを横陣でカバーするには、五十万弱の軍勢でもかなりギリギリだった。

 ホープたち四人は北方面に配置される。ホープとマーカスが盾を構えて前に立ち、その後ろにメイジのハンプティとヒーラーのダンプティが立った。

「あ。あれって……」

 緊張から操作が怪しくなりつつあるホープが、陣の前で待機している竜騎士たちを見て声を上げる。

「ん? なんだな?」

「ほら、あの人」

「トルストイのことか?」

「サマナーのあいつか?」

 ハンプティとダンプティは少し先の瓦礫の上にいる大男を見ていた。

「いや、そうじゃなくて、あれ」

 ホープが頑張って指差したのは、アオミノウミウシをモデルに作られた霊獣、グラウコスに跨る女騎士だった。まとめて竜騎士と呼ばれているが、すべての竜騎士が竜に乗っているわけではない。

 マーカスもその姿を見つけた。

「ああ、あれはルシオラだな」

「あの人も、参加するんですね」

「なんだホープ、惚れてんのか?」

「助けられて惚れちゃったのか?」

「ち、違いますよ」

 ハンプティとダンプティにからかわれて、ホープはさらにふらつきながら否定する。

「残念だがホープ、あいつはお前にゃハードルが高すぎるぜ」

「あいつは一年で騎士に抜擢されたスーパープレイヤーだぜ」

「い、一年で……」

「空の守りの要なんだな。あの風の斧槍は超強力なんだな」

「あの、アロの広場でみんなを吹き飛ばした……」

「ああ。けどあいつが本気を出したらあんなもんじゃねえ」

「全力を出せば、戦闘機くらいならまとめてなぎ払えるぜ」

 話を聞きながら、その凛々しい横顔を見てホープは息を呑んだ。

「む、お偉方のお出ましなんだな」

 マーカスは空に向かって敬礼をする。ホープがルシオラから視線を逸らして空を見上げると、巨大な飛空艇が港から姿を現した。それに続いて、壁の至るところにある港から大小様々な飛空艇も登場する。

「す、凄い」

「アエラ各国の艦隊と、旗艦“サピエンティア”。あれだけは落としちゃいけないんだな」

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