Phase5-4:人は教えている間学んでいる
三人は他のNPCと共に作戦室を退出し、兵装管理室へと向かう。作戦室に来たのとは別のエレベーターに乗り、数分通路を歩いた場所にそれはあった。NPCの群れに続いて三人も部屋に入る。
中にはありとあらゆる種類の兵装が、まるでスーパーマーケットのように棚に陳列されていた。アサルトライフル、ハンドガン、ランチャー、ナイフ、ソード、爆薬各種、各ロール用アイテムポーチなどなど。NPCが標準のソルジャー用装備を身に付けていく中、ケイとミヒロは棚を物色する。
「んー、なんか使ったことのない武器使ってみるかな」
「調子に乗って死ぬのだけはやめてね」
ケイが迷う中、ミヒロはメディック用のアイテムポーチを装備する。
「なにをしてるの?」
その様子を見ていたノックスがケイの制服の裾を掴んで訊ねる。
「これから戦いに行くから、武器を持たなきゃいけないんだ」
「武器……」
ノックスは感情のわからない顔で棚に陳列されているものを見ていく。
「……やっぱりやめておくか?」
「えー!」
ケイの発言に、ミヒロはあからさまに不満そうな顔をした。ケイはミヒロの腕を掴んで、部屋の隅まで引っぱっていく。
「あのな、前にも話したけどノックスは子供かもしれないんだぞ」
「だからなによ」
「あんまりこういうリアルな戦いをさせると、教育上良くないんじゃないか……」
「別に普通でしょ? 私だって小学校の頃からやってるし」
「そりゃそうかもしれないけど……お前と違って、ノックスは凄く純真な気がするんだよ」
「喧嘩売ってるの?」
「お前は俺の言うことに全部突っかからなければ気が済まないのか」
「すいませんね、気が短くて。……まあ、わからないでもないよ。じゃあどうする? やめておく?」
「そうしよう。もう少しゆっくりでもいいだろ」
二人の意見がまとまって、ノックスにそれを伝えようと振り向くと、
「これ使ってみる」
ノックスはすでに見よう見まねで腰にアイテムポーチを巻き、武器を手に取っていた。
「やる気満々みたいだけど?」
「……わかった、もう止めない」
ケイは溜め息をつきながらノックスのところへ戻る。
「どうやって使うの?」
ノックスは選んだ武器を恐る恐る掲げて示した。
「カノンエッジとは、また渋いの選んだな」
ケイが手伝って、ノックスはホルスターからそれを抜き、しっかりとグリップを掴んだ。それは一見、艶消しの黒で塗装された剣だったが、僅かに曲がったグリップにトリガーとトリガーガードが付いている。
「引き鉄は撃つ時まで指をかけちゃ駄目だぞ」
「うん。さっきミヒロちゃんに教えてもらった」
「ならよし。あとは撃ってもいいし、斬ってもいい。ある意味万能、ある意味器用貧乏な武器だな。そんなに難しくはないよ」
ノックスは二人と少し距離を取って、ゆっくりとカノンエッジを振ってみた。
「かっこいい」
「ノックスはそういうのが好きなのか」
「映画とかアニメでこういうの見たことある」
「なるほどね。んじゃ、俺は無難にハンドガンかなー」
ケイはシーカー用のポーチと、近くにあった適当なハンドガンのホルスターを腰に巻く。
「ミヒロちゃんはなにを使うの?」
ノックスに訊かれて、ミヒロは自分の手のひらを拳で叩いた。
「私はこれだけで充分」




