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Phase5-1:人は教えている間学んでいる

 オムニスにログインしたケイは、目の前に突きつけられている銃口を見て、両手を上げるしかなかった。

「待て、どういう状況だ」

「あら、素晴らしいタイミング。そしたらね、引き鉄に指をかけて――」

「おいこら」

 ケイはノックスの持つハンドガンの引き鉄の間に指を入れ、撃てないようにしてからそっと抜き取った。

「こんにちは、ケイ」

「ああ、こんにちは。久しぶりだなノックス」

「なによー、折角可愛い新人さんに銃の使い方教えてあげてたのに」

「住民登録はまだだよな?」

「うん。ずっと遊んでた」

「そうか。じゃあ早速役所に行ってだな――」

「ちょっと無視しないでよ! ちゃんと言われた通りここまで案内してあげたんだから!」

 ケイはミヒロを一瞥すると、ノックスの耳元に顔を寄せて、

「いいか、ミヒロには逆らわない方がいいぞ。一見可愛い女だけどな、少しでも恨みを買うとミッション中に後ろから撃たれたり――」

「お前が早速逆らってるじゃねーか、無視すんなコラ」

「ごめんなさい」

 途端に声色が変わったミヒロに胸倉を掴まれて、ケイは即座に謝罪した。

「おほん。まったく、こんな可愛い子をノーパンのまま歩かせるなんて、とんだ変態ね」

「仕方ないだろ、用事があったみたいですぐログアウトしちゃったんだから。俺だって住民登録まで済ませて、ここでお前のタンス漁ってパンツ履かせるところまでやりたかったさ」

「ケイ、その銃ちょっと貸してくれる?」

「絶対にノー」

 ミヒロは舌打ちを響かせた。

 三人はガイドラインの本部であるガレージの中にいた。ガレージ内は本部と呼ぶに相応しくない生活感に溢れている。壁沿いには洋服ダンスや本棚が並び、角にはシャワールーム。一画にはテレビやソファ、観葉植物が置かれ、まるでリビングのようになっていた。

 ケイは銃をジャケットにしまうと、座っていたベッドから腰を上げて、キッチンにある冷蔵庫へ向かう。中から適当に飲み物を出して口をつけた。

「ノックスにはなにか食べさせたか?」

「もちろん。得意のラーメンをね」

 言いながら、ミヒロは湯切りの動きを披露する。

 オムニスにはスタミナというパラメーターがあり、食事をしない、あるいは一定時間睡眠を取らないでいると、キャラクターの動作が鈍くなっていくという仕様がある。そのため、少なくとも一日に三回の食事と、ベッドでの数時間のログアウトが必要だった。

「ラーメンか……。ラーメン食べたいな、リアルで。インスタントじゃないやつ」

「……作りに行ってあげてもいいよ?」

「心からノー」

 ケイが両手のひらを前に突き出しての拒否。ミヒロは軽く跳ねてから走りだして、

「ふんっ」

 たっぷりと助走をつけたドロップキックを放った。ケイは勢い良く冷蔵庫の中に上半身を突っ込み、中に入っていた瓶やペットボトルを盛大にぶちまけた。

「ノックス、これがドロップキックっていう技だよ。いつでもこいつで練習して構わないから」

「うん、わかった」

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