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Phase4-3:人は、彼らが信じたいものを容易に信じる

 土佐の運転する車に乗って、弥永は少し離れた場所にある病院までやってきた。土佐が駐車場に車を停めに行ったので、弥永は一人でレナの病室へ向かった。院内は清潔で無機質な白で統一されている。

 エレベーターに乗って通路を少し歩くと、教えられた病室に辿り着いた。弥永は少し緊張しながらも、病室のドアをノックする。

「はい、どうぞ」

 中から聞き馴染みのある声がして、思わず笑みがこぼれた。弥永はドアを開いて中に入る。ベッドの上には、肌の白い眼鏡の少女が座っていた。

「これは王女様。ご機嫌麗しゅうございますか?」

「……ええ。とても」

 少女は弥永を見て一瞬驚き、心から嬉しそうな笑顔になる。弥永はベッドに近付いて、その少女を抱きしめた。少女も弱々しくもしっかりと、弥永の腰に手を回す。しばらく抱擁を交わしてから、二人は離れ、お互いの手を取り合った。

「ありがとう、会いに来てくれて」

「それはもう、王女様のご尊顔を拝見できるのなら、緩衝地帯の果てまでも」

 弥永は複雑な笑みを浮かべ、芝居がかった口調で言った。

「あら。ここはあんなガラクタの山と違って、緑豊かな素晴らしい場所ですよ」

「そうみたいだ。元気な子供たちもいるしね」

「やられたんですね」

「ああ、こっぴどくやられた」

 レナは可笑しそうにお腹を抱えた。元気そうな姿を見て、弥永は安堵する。

「体調は悪くないみたいだね。入院してるって聞いた時は驚いたけど」

「もう全然。ちょっと体が弱いからって、軽い風邪でもすぐに入院させられるんです」

「いいじゃないの。遊び放題みたいだしね」

 そう言って、弥永は不自然に膨らんだ布団を指差した。

「バレましたか」

 恥ずかしそうにしながら、レナは布団の中からインターフェイスを取り出した。

「看護師さんかと思って、咄嗟に隠したんです」

「おーおー、リアルでも見かけによらずワルだね」

「ホタルも、リアルでも口が悪いんですね」

「そこにポットがあるな」

「やめてください」

 いつものやりとりをして、二人はまた笑い合った。

「今日は泊まっていくんでしょう? ゆっくりしていってくださいね」

「うん。また明日も顔見せに来るけど、どうせ今夜もオムニスで会うよね」

「そうですね。たまにはダンジョンにでももぐります?」

「いいね。最近できたおすすめのダンジョンがあって――」

 会話の途中でノックの音がして、土佐が部屋に入ってきた。

「失礼しますよ。レナ、なにか欲しいものはあるかな? 売店で買ってきてあげるよ」

「本当ですか? じゃあ……プリンが食べたいです」

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