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南雲艦隊 ´ 現る

我ながら酷い。


本日三話です。

二話目は午前五時半に投稿します。

三話目は午前六時に投稿します。

 南雲艦隊時間、昭和十六年十二月六日、北太平洋洋上。


 二隻のそっくりな空母が漂泊している。


「貴様、俺の偽物だな」

「儂は本物だ。貴様こそ偽物だろう」


 お互いに南雲忠一であると譲らない、いや譲れない。譲ったら自分は偽物になってしまうから。

 他にも参謀長や航空参謀などが言い合っている。

 頭に血が上っているのはその三人だけだったが。

 他は落ち着いていた。アレがアレなので反って冷静になったとも言える。通信参謀と航海参謀はお互いに話し合っていた。 


「今は清和十六年十二月六日ということですか」

「さようですな。先ほど言われた西暦というのはなんですか」

「西暦というのはヨーロッパが始めた歴で・・・・・・・」

「そうなのですか。皇紀と仏歴は同じですな。しかし西暦か。ユリウス暦ならありますぞ。国際的にはユリウス暦が使われております」

「ユリウス暦ですと。ひょっとしてユリウス・カサエルのユリウス?」

「まことその通りです。今はユリウス暦二千四十一年十二月六日ですな」


「月が二個ではどうやって天測を?」

「六分儀では大きな方の月しか対象にしていません。長年の観測結果では小さい月は大きな月より遠い軌道を回る小さい星です」

「なるほど。それであんなに大きさが違うのですか。しかし月が二個とは」


 昨日の夜、多少の揺れと共にいきなり機関が止まり漂った南雲艦隊’は頭上の月に驚いた。大小で二個あるのだ。その後機関始動は出来たが、現在位置も不明だった。月がアレでは天測が正しいかもわからない。後方の補給部隊都の連絡も電波を発信していいのか判断に迷う。

 結局そのままの位置を維持し舵効速度くらいで動いていた。位置を保てば元の世界に戻れるかもしれないと。

 そして出会ったのだ。そっくりさんに。



「名前を書くので違いが無い確認しましょう」

「それはいいですな」

 ・・・・・

「は?」

「なんですかな、それは」

「なんだこれは…ダッシュではないか」


 愕然とした。違う世界に来てしまった人間の名前は最後尾に勝手に ´ が付いていた。


「なんだとー!」

「長官、本当なのです。書いてみてください」

「うむ。書いてみよう」


 南雲忠一´


 崩れ落ちた ´ orz


 何かかわいそうだ。周囲はそう思った。



「貴様達が他の世界からここへ何らかの理由で来たということは、信じられないが現実でもある。 ´ で判るかもしれないが何者かの介在は明らかだろう。だが、その何者かは何も言わない」

「ふん。ならどうするというのだ。この世界の俺」

「そこでだ ´ (ダッシュ)」  ボス!(グフ…)


 アレはこっちの長官が悪い。そう思ったこの世界の南雲艦隊幹部。向こうの南雲´長官がボディにフックを食らわせたのもわかる気がした。


「…効いた。済まんかった。だが、貴様達がこの世界に寄る辺ないことも事実。どうする」

「それだが。ああ、謝らんぞ。貴様の艦隊はどこへ行こうとしている」

「言ってもいいか」


 この世界の南雲艦隊幹部を見る。悩んだ末、頷いた。時間が無かったのである。


「真珠湾攻撃だ」

「「「「真珠湾攻撃だと!?」」」」

「戦時だと驚いたのか」

「いや違う。いいかな」


 南雲忠一 ´ が南雲艦隊 ´ 幹部を見て言う。幹部も頷いた。これは共同して攻撃。その後は面倒を見てもらおうと。


「我が艦隊も真珠湾攻撃だ」

「「「「は?」」」」

「だから真珠湾攻撃だ」

「まことか」

「そのための編成だ」

「まさかな」

「攻撃には参加する。その後、養ってくれ」

「図々しくないか」

「だが現時点で世界最高の攻撃力があると自負は出来る」

「それには同意出来る」



 南雲忠一 ´ は赤城 ´ に帰ってから、一同に説明をした。


 理由は不明だが地球では無い地球にとばされた。我々の寄る辺は無くこの地球の日本に頼るしか無い。そこで功績を挙げるために真珠湾攻撃は行うと。その功績を土産にすると。


 この方針は、他の艦にも伝えられた。反対意見はあったが、ではどうするという言葉に反論が見つからず結局従った。



 空母十二隻による真珠湾攻撃は清和十六年十二月九日に実行された。一日遅れであるのは、予期せぬ邂逅があったからだ。

 第一次攻撃隊三百三十機が発進した。

 攻撃隊とは別に艦攻が三十機索敵に出ている。行方が知れない空母、レキシントンとエンタープライズを警戒してである。

 直掩機として零戦四十機が残された。

 第二次攻撃隊三百機は索敵で空母が見つからないまま一時間半後に発進した。

 

 第一次攻撃隊は午前十時に真珠湾へ到達し攻撃を開始した。

 ちなみに南雲艦隊 ´ から発進した攻撃隊は全機陸用装備であった。交渉の末遠慮したのだ。この世界の南雲艦隊は対艦攻撃に全力を振った。

 ただこの陸用装備は真珠湾軍港の機能を完膚なきまでに破壊した。修理用ドックや重油タンクが破壊され、大火災と真珠湾および周辺に酷い重油汚染をもたらした。重油火災は湾内に拡がり被弾損傷して動けない艦艇も焼かれた。真珠湾軍港とアメリカ太平洋艦隊は壊滅的打撃を受けた。



 重油火災の鎮火に二ヶ月ほど掛かった。周辺機材にも相当な被害があり消化は困難で重油が燃え尽きるまでそれだけか掛かったのだ。

 調査はその後安全が確認された一ヶ月後に行われた。それでもまだ残熱で相当熱いようだった。焼かれた艦艇は全艦修理不能として解体されスクラップにすとるとした。その中にはエンタープライズも含まれていた。沈んでしまって解体出来ない艦は湾内の障害物として鎮座しておりこの浮揚に時間が掛かる。岸壁も焼かれた岸壁は強度が無く解体して作り直しだ。沈没艦の除去や重油火災により基部まで焼けた重油タンク群や破棄されたドックと燃え残り海岸など周辺にへばりついている重油の除去など、元の機能までの再建に戦艦数隻分という膨大な予算と万人単位の人員に大量の資材を費やしても五年前後掛かることが問題視された。


 真珠湾軍港は完全放棄された。真珠湾の艦艇群も手を付けないとした。

 ハワイ諸島はサンド島周辺を中継機能だけに絞って整備し運用することになる。 



 レキシントンは索敵圏外にいたらしく、捕捉は出来なかった。しかし功績としては高い評価を得た。


転移先世界の国際的な暦はユリウス・カサエルの生誕した年を紀元ゼロ年としています。

重油はあの量が2ヶ月で燃え尽きるかな?

この世界ではハワイが人気観光地になることは、当分無いでしょう。

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