パラドックスの報い
「ま、待ってくれ! 私は人に恨まれるような覚えなんてない、善良な一市民なんだ! なにかの間違いじゃないのか?」
暗い路地の切れかけた街灯の下、銃を手にした俺の前でそいつはそう言った。だが俺はその言葉を無視して無慈悲に引き金を引く。
一瞬の轟音の後にその男はばったりと倒れた。
その死体に向かって俺は呟く。
「ああ、お前が善良な市民であることは知ってるよ。なにしろ俺が未来で行った強盗をお前が通報したせいで俺は捕まったんだからな」
だがその目撃者もこうしていま消した。これで俺が捕まることはないだろう。俺はこの時代へとやってくるのに使ったタイムマシンの方へと歩いていった。
これで俺が前科者だという事実もなくなるだろう。
そして未来へと戻った俺は意気揚々と街へと出かけ、そしてそこで警官に捕まった。
「数年前に夜の路地で人を撃ったのはお前だな?」