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腐った姉の最推しとして爆誕した俺!!  ~転生した先は「ドS鬼畜メガネ」でした……(泣)~  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)


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第六章 学園祭、その後……⑨

     九


 だが、鈴木ハルトは一向に誰か一人と特別親密そうに振舞うことはなかった。

 部屋の隅でそれを傍観しながら、明人は首を傾げる。

(……本当に、誰ともくっついてないのか?)

 鈴木ハルトは皆の中心にいるものの、その光景は学園祭の前とは変わりないものだった。少なくとも個別ルートに分岐するほど仲を深めた気配は、どのメンバーからも漂っていなかった。

 輪の中で楽しそうに仲間たちと笑っているスオウが、他のメンバーにも投げかけた質問を鈴木ハルトにも向ける。

「ハルトは誰かとフォークダンス踊ったか?」

(……もしかして、大穴で教師の高槻か?)

 明人はサブ攻略キャラの可能性まで考え始めたが、鈴木ハルトはスオウの質問に首を振った。

「……踊りそびれちゃいました。」

 そして、何故かちらっと明人の方にわざわざ視線を向けた気がした。

 だが、明人はその視線に気づかないふりをすることにした。

 フォークダンスの話題はそこで終わり、また一同は別の話題で盛り上がり始める。

 学園祭を終えたことで、生徒会のメンバーは結束力を増しており、共に過ごした濃密な時間のおかげで話題は尽きることがない。

 そんな和気あいあいとした雰囲気の中で、明人は一人、痛む頭を抱えていた。

 フォークダンスのパートナーに誰も選ばれておらず、鈴木ハルトが誰かと特別親密になっている雰囲気もない。現状の迅速な確認のために本調子じゃない身体に鞭を打って参加していたが、これ以上ここにいても何かが分かることはない気がした。

(……さすがに、ここまで付き合えば充分だろ?)

 頭痛がひどくなってきて、明人はもうそろそろ退散したくなり、タイミングを見計らう。

 そんな明人の事情を知ってか知らずか分からないが、今まで場の中心にいたはずの鈴木ハルトが部屋の隅に陣取る明人の元へと近づいてきた。

「あ、あのー。」

 おずおずと言った様子で話しかけてくる鈴木ハルトの手には、ペットボトルが握られていた。

 肘をついて頭を支えた姿勢のまま、鈴木ハルトに視線を向ける明人。

「……何だ?」

「何か飲みませんか?…こ、これ、甘くないです。」

 精一杯と言った様子で、握りしめたペットボトルを差し出してくる鈴木ハルト。持っていたのは、スパークリングウォーターのペットボトルだった。

「……そうか。」

 これなら飲めそうだと、明人は言葉少なに受け取る。

 早速キャップを開けて口に含むと、炭酸が爽やかで、少しだけ頭痛が軽減した気がした。

 明人が飲み物を飲んでいると、何故か鈴木ハルトは明人の隣に陣取り座る。

 明人が不審げな視線を向けたので、拳一つ分距離を空けてではあるが、いつもの鈴木ハルトでは考えられない行動である。

(何故、コイツはここに座る?いつもはびびって近寄らないのに……。)

 明人が首を傾げるが、鈴木ハルトは明人を見上げてそこから動こうとはしない。その上、果敢にも更に話しかけてくる。

「…美味しいですか?それ。」

「?」

(……コイツ、どういうつもりだ?)

 明人の脳内に疑問が浮かんでいくが、口に出して質問することはしなかった。

 鈴木ハルトはスパークリングウォーターのペットボトルを見つめたまま続ける。

「飲んだことないんです……。」

 普段甘いジュースばかり飲みそうな鈴木ハルトが、敢えて甘くもない水に炭酸が入っただけの飲み物など飲むはずもないのだろう。

 現状に対する様々な疑問に気を取られたままの明人は、特に考えることなく鈴木ハルトに尋ねた。

「飲むか?」

「……はい!」

 何故かやたら嬉しそうな鈴木ハルト。

 頷かれたので、明人はそのままペットボトルを素直に鈴木ハルトに渡した。

 明人から渡されたペットボトルを受け取り、鈴木ハルトは期待に満ちた笑顔で一口ごくりと飲みこんだ。

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