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腐った姉の最推しとして爆誕した俺!!  ~転生した先は「ドS鬼畜メガネ」でした……(泣)~  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)


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第五章 戦慄の学園祭、到来!!⑦

     七


 思えば、転生してからの日々は本当に大変だった。

 特に、二学期になり主人公・鈴木ハルトが編入して来てからというもの、ことあるごとにイベントを起こそうとする主人公相手に、一瞬も気の抜けない日々が続いた。

 イベントの切っ掛けになる出来事を少しでも事前に知っておくために、懸命に姉との会話の記憶を思い出そうとしたことも今となっては懐かしいくらいだ。

 明人は自分で自分を褒めたい気分でいっぱいだった。

(主人公よ、誰かと幸せになれ。)

 全てを終えた明人の心は凪いで満たされていて、主人公の幸せを願うことすら自然に出来た。

 そんな明人を祝福するかのように、フィナーレの花火が上がり始める。

「ここからは奇麗に見えるな……。」

 その場にしゃがみこんだ状態のまま、夜空を見上げる明人。

 花火は皓皓と夜空を照らしていた。

 学園祭までの準備は大変で毎日忙しく、こんなに穏やかな気分になることはなかった。

 生徒会の仕事も、ルート分岐回避も、成功した今、ようやく肩の荷を降ろした気分になった明人は、ただ花火だけを見つめていた。

 今まで気を張っていた分、気を抜いた途端、今までの全ての疲労が明人の身体を襲う。いくら水嶋シュウのチート的ポテンシャルをもってしても、脱力してしまった身体はしばらくこの場から動けるようになる気がしなかった。

 ドンッと、花火の衝撃が身体を突き抜けていく。

 何だかもうこの場で眠ってしまいたくなってきて、明人は笑った。

(水嶋シュウって、屋上とかで寝ても大丈夫なのか?)

 試しに寝転がろうとしてみたら分かるかもしれない。だが、一度寝転がったら絶対に起き上れる気がしなかったので、明人は少し逡巡した。

(……まあ、今の季節なら凍死とかしないし大丈夫だろ?たぶん……。最悪、風邪はひくかもしれないけど、明日は休みだし……。)

 明人本来のズボラな性格がむくむくと顔を出し始める。

 出来れば上に着たり下に敷いたりできる新聞紙や段ボールくらい校内のいたる所に転がっている物を持ってくればよかったと、そんなことを考えながら、またも明人は笑った。

「ふふふふ。」

「何がそんなに面白いんですか?」

 そんな明人の耳に、空耳のような声が聞こえた。

 その声の響きに明人は固まった。

「あのー……。わぁ!ここ、スゴイですね?花火の特等席だ!!」

 明人の返事を待つことなく、無邪気な声が響く。

 明人は足元から地面がガラガラと崩れ去っていくような衝撃を受けながら、ぎぎぎっと嫌な音を立てて首を声のしてきた方向に動かした。

 視線の先には、何故か無邪気に花火に喜ぶ主人公・鈴木ハルトの姿があった。

 たった今、屋上にやって来たようで、一つしかない扉の前に立って夜空を見上げている。

(……げ、幻覚か?)

 明人は今、自分の網膜が映し出している現実を否定した。

(……やはり、疲れているからな。現実にいない者が見えても仕方ないな……。)

「副会長は、こんなとこにいたんですね?」

 明人が幻覚と決めた相手が話しかけてくる。

 明人はそれを幻聴だとすることにして、いつも通り無視した。

「……もう、いつもそうやって、聞こえないフリするんですよね……。」

 幻覚(仮)は口を尖らせて拗ねるような表情で、こちらを見つめている。

 幻覚であると決めつけはしたが、逃げた方がいいに決まっている。

 明人はそう判断したが、如何せん疲労困憊の身体が言うことを聞いてくれない。それに、走って逃げようとしても、屋上からエスケープできる唯一の扉の前には、幻覚(仮)が居座ってまるで通せんぼをするように立っている。

 まさに万事休すだ。

 それでも、明人は何とか自分に出来る範囲で抵抗を試みる。

 相手を幻覚と決めつけていながらも、とりあえず疲労困憊の身体の中でも動かせそうな口を開いて話しかけてみる。

「……フォークダンスはどうした?」

 いつもは話しかけられない相手に話しかけられたことが嬉しいらしく、尻尾を振る子犬のような表情で顔を輝かせる幻覚(仮)。

「副会長が一緒に踊ってください。」

(誰が躍るかボケ!!)

 心の中では明人は瞬時に叫んでいたが、口をついて出たのはもっと水嶋シュウらしい言葉だ。

「……見て分からないか?俺は、酷く疲れている。踊りたいのなら、一人で踊れ。」

 明人の返事に、幻覚(仮)はあからさまにしゅんとして落ち込んだ。

「ひ、一人でって、フォークダンスですよ!」

「…うるさい。」

 とりあえずもう黙って欲しかった。そして、何より幻覚であって欲しかった。

 明人は痛み出した頭を抱えながら、突如襲ってきた絶望に対処する術すら持つことが出来なかった。


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