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腐った姉の最推しとして爆誕した俺!!  ~転生した先は「ドS鬼畜メガネ」でした……(泣)~  作者: 夢追子(@電子コミック配信中)


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第四章 小動物vs鬼畜⑦

     七


 結論から言えば、主人公・鈴木ハルトは大丈夫だった。

 というか、大丈夫どころではなかった。明人が向かう必要性すらなかった。

 更に言えば、向かうだけ損だった。

「………。」

 物陰で言葉も無く立ち尽くす明人。

 主人公・鈴木ハルトは明人の視線の先でいちゃついていた。

「か、会長~。」

「はははは。」

「す、すぐ退きます。お、重いですよね?」

「いや、全然。しばらく乗ってろ。」

(……いや、何やってんだ、こいつら……。)

 まあBLアドベンチャーゲームの世界の中なのだから、もちろんいちゃついているんだろうが……。

 どう見ても、野外でスオウを鈴木ハルトが押し倒して上に乗っかっている状態だ。

 明人は痛む頭を抱えた。

(いくら人通りの少ない裏庭でも、こんな堂々といちゃつくな……。)

 わざわざ大きな声を上げて自分の居場所を知らせた上での所業など、正気の沙汰ではない。親切で心配性の人が、様子を見に来てしまったらどうするつもりなのか?いや、既にそういう状況である。気まずいったらこの上ない。

 だが、明人は二人の様子をげんなりと見守りながら、ため息一つで別の見解を用意した。

(……いや、恋というものは盲目なのか……。)

 恋する二人の世界には、間違って踏み入る者の方が等しく邪魔者なのかも知れない。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえと、古来から言うではないか……。

(……まあ二人が幸せそうなのだから、それでいいか……。)

 明人相手には見せない柔らかな顔で笑っていた親友の顔を思い出し、明人はその場から立ち去ることにした。

 何だか色々とがっかりしてはいるが、二人に協力する気はあっても邪魔をする気はない。

 なので、二人の邪魔にならないように細心の注意を払って、音を立てずにそっとその場からフェードアウトする。

 ただ、ものすごく気を遣ったので、ものすごく疲れた。

 無駄に疲れた。

 疲労感の残る身体を引き摺りながら、明人は改めて購買へと向かう。

(……まあ、しばらくは主人公も生徒会室に寄りつかんだろ……。)

 あれはきっとイベントの最中という状態なのだ。

 ならば、二人の時間は大切にしてやらねばならんだろう。他のキャラとの接触が増えれば増えるほど、明人の未来に希望が見えてくるのが、この世界のシステムである。

 購買に向かうため、先程の一件でどっと疲れた身体を無理に動かして騒がしい校内を進む明人の脳内に、いつぞやの姉の声が蘇る。

「あのね、主人公のハルトはね。ドジっ子属性なのよ。会長のスオウのイベントとかでもね、昼寝してるスオウに気づかずに、スオウに蹴躓いて上に乗っかっちゃうんだから。」

(……あれは、スオウに蹴躓いた状態なのか……?)

 購買に寄り、健康補助食品の棚を見つめる。

 外見も明人だった頃は、こういう時にカレーパンとか焼きそばパンとかのガッツリ系惣菜パンを買ったり、何だったらカップ麺を買ったりしていたが、水嶋シュウになってからは合理的に栄養の取れる栄養補助食品に心惹かれるようになっていた。

 ゼリーかクッキーのブロックかを悩んだ後、クッキーの箱を手に取りレジへと向かう。

 無人のセルフレジ(こちらも動力は魔力である)へとスマホを翳し、会計を終えると明人は生徒会室へと向けて歩き出す。

「主人公のドジを優しく包み込む会長も素敵だと思うのよ。もちろん、ドジっ子主人公のハルトもカワイイと思うし……。そんなドジを優しく許されて、はにかんでるのもカワイイとは思うの。」

(……迷惑で厄介でしかないと思う。……スオウじゃなけりゃ。)

 脳内で蘇る姉の力説する言葉には、明人はちっとも同意できそうもない。まあ、器の大きい頑丈なスオウだから蹴躓かれても笑って済ませられるのだろうが、スオウじゃなきゃそんなの無理だ。

 いくら体格差があったとしても、男子高校生が蹴躓いた勢いで昼寝しているところに乗っかってきたら、他の人間はしばらく痛みで起き上がれない。筋肉がついて頑丈な肉体をしていなければ、内臓や骨が損傷する可能性だってゼロだとは言えない。

(少なくとも、俺はごめんだな。)

 あれが水島シュウ用のイベントではなくて、明人は安堵していた。

 だが、ふと何かが引っ掛かった気がして立ち止まる。

「………。」

 そこで、明人はもっと大事なことに気付いた。

 先程まで見落としていたが、気づいてみるとそこが今は一番重要である。

(……ちょっと待て……。……スオウのヤツ。昼寝してやがったのか!?)

 明人はその事実に思わず唸っていた。

 それは、少々獰猛にすら聞こえかねない唸り声である。

(……学内で多少いちゃつくのはかまわないが、このくそ忙しい時に昼寝だとっ!?スオウのヤツめ、覚えていろっ!!)

 生徒会室へと戻る明人の脳内では、スオウへと押し付ける仕事の算段が始まっていたのだった。




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