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女神様を讃える歌

 王国にも音楽はある。

 だが、あまり進展していない。

 まさしく日本の中世レベルで平板な音楽しかない。


 ここに持ち込むのは、地球の古典音楽だ。

 G線上のアリア

 ヘンデル アリア

 アベマリア カッシーニ

 などの超有名曲。


 これをみんなに聴かせたところ、


「おお、素晴らしい……」


 と大好評だった。

 中には涙ぐむ人もいたぐらいだ。


 できれば、これらを女神様に歌って貰えれば最高なんだが、


「拒否」


 一言で終わった。

 ルシールが言うには、重度の音痴らしい。

 リズム感も壊滅的だという。


 なので、女神倶楽部にいる人達全員に

 歌を学ばさせている。

 その中で見込みのありそうな人をピックアップ。

 お菓子を食べつつ、音楽の訓練をすると、

 音楽スキルが発現するのだ。

 英才教育を施して専属歌手にする。


 でも、地球の本職、有名歌手には負ける。

 圧倒的に。


 

 だから、魔導具も導入した。


 1つ目は、高級MP3プレーヤーと

 アンプ、スピーカー。

 それなりの広さで鳴らすことを前提とするから、

 PAクラスのスピーカーが必要だ。


 もう一つは携帯型。

 携帯型のMP3プレーヤーを参考にして

 再生専用の音楽プレーヤー魔導具を開発した。


 音楽を魔法陣に取り込んで小さな板に書き込む。

 それをプレーヤーで再生する。

 スピーカーは魔導具全体。


 これを格安で販売する。

 だいたい、千ギルぐらい。

 日当が1万円前後であるから、全然負担にならない。



【女神様ズ】


 などと女神倶楽部を推し進めていると


『相崎くぅん、面白そうなことやってるじゃなぁい?』


 女神様ズがやってきた。


「あれ、おひさしぶりですね」


『そうよぉ、ひどい目にあったんだからぁ』


 ミネルバ、シアリーズ、プロセルピナ様たちだ。

 彼女たちはクリスティーナ様の忠告にも関わらず、

 思いっきり日本での食生活を堪能したため、

 見る影もない体型になってしまったのである。


 そうなると、天界ブートキャンプ一択。

 ルシールだけでは全く戦力不足で眷属総出で天界へ輸送したのだ。


『その時のことですか……未だに傷の癒えないもの多数、といったところですか』

 

 なにやら、ルシールが遠い目をして述懐する。

 シマエナガの小さい目をして遠い目を感じ取れるのだから、

 相当な激戦が繰り広げられたのだろう。


『止せばいいのに、囃し立てにきた神々がいらっしゃいまして……石になった神が3柱、木に変身させられたのが5柱、銅像になった神が2柱と惨状を示しております』


 うん、発言には気をつけよう。



『でもさぁ、ちょっとひどいじゃない?私たちにだまって美味しそうなもの食べてるなんてぇ』


 ははは、いえ黙ってたわけじゃないんですけど、

 試行錯誤の途中でして。


『そうじゃぞ。日本の高みには至っておらんがの、この世界的にはかなりやりおるわ。むろん、天界的にもじゃな』


『そうなのぉ?いいからぁ、ティーナと同じものもってらっしゃいな』


「あの、賢者様、神々しい女性たちはもしかすると……」


「そうなんだよ。クリスティーナ様の同僚。女神様ズさ。失礼のないようにね」


「ひぇぇぇ!というか、眩しすぎて正視できないです!」


 といいつつ、ひれ伏そうとしている。


 ああ、僕は女神様からある種の耐性をつけてもらっている。

 女神様を見てもドギマギしないように。

 

 でも、普通の人間には絶えられんだろうなぁ。


『みなさん、かしこまらなくてもいいからぁ、気楽にやってね?』


 といいつつ、僕にかけた女神耐性を

 みんなにもかけたようだ。


「あああ、女神様。ありがたや、ありがたや……」


 それでも僕ほど耐性がつかないようだ。

 畏まって拝む人がいると思えば


「キャー!超美形!」


 などと大はしゃぎする人もいる。

 部屋が騒然とするなか、カフェの従業員が

 ギクシャクしつつスィーツをもってきた。


『あらぁ、見栄えはなかなかやるじゃない?すっごく、洗練されてるわよぉ』


『現物を日本からもってきておるし、ネット動画も見させておる。それにじゃ、料理関連スキルを持つものが何人かいての。どんどん上手になっていったのじゃ』


『そうなのね……あら、本当。とっても美味しい』


 女神様ズはそれを合図にバクバク消化していく。

 ペースは凄く速いのに、

 それでも優雅さを保ったままなのはさすが女神様だ。


 でも、ちょっと食べ過ぎのような。


『大丈夫よぉ、私達も学習したからぁ。ちゃんと毎日ダイエットエクササイズしてるわよぉ』



 各種ケーキ、チョコレートドリンク、カフェラテ

 など、僕達の力作を披露した。


 



『これって、地球の歌でしょ?私、知ってるわよ』


「プロセルピナ様、ご存知でしたか」


 無口な女神様でめったにご発言をなされない。

 彼女は冥界の管理者ハデス様の奥さんなんだけど、

 派手に喧嘩して別居中らしい。

 一時期冥界が機能不全に陥って大変だったのだと、

 クリスティーナ様が教えてくれた。


『ティーナに聞いたわよ。この歌でみんなを楽しませるのね?私、日本のテレビ見ててアイドルっていうのに興味あるから、私もまぜてほしいわ』


 おお、プロセルピナ様。

 ありがたいお申し出。


 歌ってもらった。

 うん。

 ルシーナの言うことは確かだった。


『女神様はみんなクリスティーナ様と同程度ですから』


 ルシールのやつ、歌う前に姿見えなくなったと思ったら、そういうことか。


 ものには限度があるってもんだ。

 これ、騒音とかのレベルを越えているぞ。

 音程もリズムもあわないのに、

 音圧レベルはジェット機と同程度以上。

 部屋の中がいろいろ破壊されていく。

 僕はすぐに結界を張ったから助かったけど、

 ちょっと遅れていたらどうなったか。


 どうやって諦めてもらおうか……


 ◇


 3柱の女神様ズ。

 歌を歌うのはなんとかあきらめてもらった。

 冷や汗ダラダラで、人生一番ってぐらい緊張した。


「女神様の美声は美しすぎて、聴いている人が桃源郷を彷徨ってしまうんですよ。ほら、女神様のお姿と同じですよ。下々にはあまりの美しさを処理できないのです。で、そのまま桃源郷から抜け出せなくなりますから、残念ですが」


『ああ、そう?美しすぎるのも罪なものね』


 僕は女神様たちに対して、

 日頃から美しすぎて下々のものは萌死するだの言ってきたから、

 女神様達も自分の美しさに客観性が備わってきた。

 多少の、だが。

 だから、僕の説得をなんとかうけとめてもらえたようだ。



 さて、段々と女神倶楽部が形を現してきたのだが、

 働く人をどう募集しようか



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