歯磨き粉と洗口液
「うわっ、本当に白くなった!」
子供たちが大喜びしている。
僕が渡したのは、日本製の歯磨き粉と歯ブラシ。
「凄い!歯が白くなるととっても健康的にみえるわね!」
「うん、美貌も3割増しって感じ!」
「息も爽やか!」
「今まで気にもしなかったんだけど、これ使うと口臭が凄く気になるわ」
「そうね、歯磨きなしだと人前に出られないかも」
「ああ、みなさん、この歯磨きは月1で行ってください。効果が半端ないみたいなので」
日本製品をこちらにもってくると強力になる。
歯磨き粉も例外ではなかった。
千円ぐらいのホワイトニングをうたった歯磨き粉、
くすんだ歯があっという間に白くなった。
「で、ですね。食事後にはこれを使ってください」
僕は洗口液としてモン◯ミンを配った。
お口クチュクチュってやつだ。
これも威力が強化されており、
歯磨き粉で歯を磨いた程度の効果があり、
爽やかな香りが半日は持続する。
僕が歯磨きを推奨したのは、
村人にキレイになってもらいたいのと、
毎日甘味を食べることが多いので
歯の健康が心配になったからだ。
今のままでは確実に虫歯になる。
特に子供たちは。
ただ、いつまでも日本製品を使うのはよくない。
極力、産地産消が望ましい。
そこで、歯磨き粉と洗口液を自作する。
洗口液は簡単だ。
重曹と精油を混ぜるだけ。
重曹は掃除にも活躍する通り、
お口の汚れや臭い菌を分解。
精油はそろそろ増産体制が整い始めている。
ただ、重曹と精油を混ぜるだけというが、
その重曹がなかなか天然では存在しないらしい。
また、簡単に作れるものでもない。
「ルシール、こういう物質なんだけど」
重曹の現物はある。
「重曹鉱石というのがあるらしい。探し出せないかな」
『わかりました。半径千キロメートル程度の範囲を捜索してみましょう』
ルシールは暇があると捜索に飛び回った。
そして半月後に、
『マスター!ありました!』
と喜び勇んで僕にピンクがかったベージュの
鉱石を見せてくれた。
「ああ!これだよ!ありがとう!」
金属回収スキルで僕は重曹を取り出してみる。
純粋な重曹だ。
化学合成重曹は石灰石と塩とアンモニアで作る。
だから、少しアンモニア臭い。
天然重曹はそんなことはない。
ただ、カンスイが含まれていることが多いし、
重曹を熱分解させるとカンスイに変化する。
つまり、ラーメンの麺臭くなる。
だから、注意が必要だ。
「これでお口クチュクチュやってみて」
「あ、こっちのほうがモン◯ミンよりいいかも」
「ね。モン◯ミンみたいに口が辛くない」
モン◯ミンは初めての人には刺激が強い。
低刺激のものをもってきたのだけど、
それでも抵抗を感じるようだ。
次元わたりで効能が強化されるために、
違和感も強くなるのだろう。
「この洗口液は普段使いね。で、こちらは週1で使ってみて」
と言って渡したのは自作歯磨き粉。
重曹+精油にオリーブオイルまぜただけのもの。
これを週1と指定したのは、
重曹は研磨効果が強く、
歯の表面を削りとると言われているからだ。
歯ブラシに関しては、
歯ブラシを参考にして固い木や
動物の毛で代用して村人が作り上げた。
【女神様ズの評価】
女神様は本来汚れを気にしない。
汚れないからだ。
『このホワイトニングとやらはいいの。歯が白くピカピカになるのじゃ』
『そうねぇ、それとお口が爽やかになるしぃ、息が花の香りっていうのもポイント高いわぁ』
「あ、でも毎日使うと効果が強すぎますよ?」
『妾たちは女神なのじゃ。問題ないのじゃ』
毎日使っちゃ駄目、という僕の忠告も
女神様たちには右から左だ。
てんで聞いちゃいない。
ただ、これは僕の杞憂であったようだ。
歯磨き粉の洗浄力ごときでは
女神様の強靭な身体を傷つけるなど、
これっぽちもないようである。