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EP2 Reincarnation

  

おぎゃ 

  おぎゃ

______亀世ババの記憶はそのままで、タマ無しで転生した先は割と裕福な家庭で、一見すると問題がないかに見えた。

「やったがな。50%オフでも、これでオラの人生はバラ色で安泰」


 しかし99歳の人生経験と記憶を持って、乳児や幼児の真似をするのは、何とも歯痒いものがある。

「オラ、ハイハイ出来るまでは寝たきり。これじゃな~も病院とかわらんがな」


 転生我が家は言う事はない。すかす母乳じゃなく脱脂粉乳じゃったが、離乳食が飯に代わると何故かファスト・フードが多かった。

「これはおかすいぞよ」


______転生先の両親は仲が悪く、喧嘩が絶えない家庭の長女として生まれてしまったのだ。

「シット!」

リッチな筈が食事はインスタント。オラは幼稚園の給食が、唯一の楽しみになってしまっただよ。


「あの便所紙、オラを騙しやがった! スーパーの半額タイムセールならウハウハバッチ来いじゃけど、これは何の罰ゲームだい! オラ、吉田家の大盛特上牛丼、二尺(74cm)特大ハゲマスタピザ、ニンニクたっぷり金将ギョーザ、塩ピーナッツをたらふく食いてぇんじゃ」


 しかし亀世(うるみ)は6歳で何故か捨てられた。ある日突然、両親がオラを置いて蒸発したのだ。警察の調べでは、どうも女がらみの父親に多額の借金があったと言うのだ。

「いつの世も、男ってのはとろくせぇ事よな。その点、前世のオラは容姿容貌が最低の金なし。男も犬も避けて通っていたものさね」


 露頭に迷う事になった6歳のオラ麗美(うるみ・きよ)は、千葉の某市役所に駆け込んだ。その後、捨てられた孤児として施設で育てられる事になったワケじゃ。

Oh my 仏様! よのう。



◇私立養育施設<ウサギの家>◇

______そこは12人が暮らす施設で、親代わりとなった施設長夫婦は、捨てた両親に比べれば雲泥の差で、ここでやっと人間の優しさに触れる事が出来たのだ。


 施設では、99歳までの経験と知識は遺憾なく発揮されて、まだ6歳だと言うのに施設内の気配りと仲裁がうまいのだ。

「それを、おばあちゃんの知恵袋と世間は言うのぉ」


Rock

=新藤麗美(しんどう・うるみ=きよ)がやりたかった事。

女の子なら誰しも思う芸能界のスーパーアイドル......ではなく、ロックバンドのリードギター兼ボーカルで、便所紙のギフトだったのか音楽センスも含めて、大抵の事が天才的だった。


 加えて容姿容貌は、何故両親が捨てたのだろうかと思うほど、次第に超絶美少女に育って行くのである。

「ふ、あの便所紙、それだけは褒めてつかわす」


 小学生までは独学自主練習が主体で放課後、音楽室のピアノとクラッシック・ギターを借りて使う練習が続いた。

中学生になると、いろいろ天才故に成績が優秀な為、見かねた施設長が中古でも、HAMAYA製ギターと10wアンプ、ヘッドホンを付けても15,000円(税込)の激安セットを買ってくれたのだ。

「ほぉー。これで一応マイ道具が揃ったがな」



◇ワンマンバンド<ローン・ウサギ> 独りぼっちのウサギ◇

______いくら安かろうとマイギターに触れる事で、それからめきめき腕が上達。Rockの天才が芽生えていったのである。


 オラは放課後の音楽室か体育館裏で練習を続けた。しかもバス・ドラムまで購入出来て、ドラムを左足で鳴らすワンマンバンドを、<ローン・ウサギ>と名前を付けてみた。


挿絵(By みてみん)


 時は流れて15歳になったオラは、施設長の勧めで千葉県内の高校に入学出来た。知らんと思うが、昭和の尋常高等小学校とは違うぞよ。

Youtubeで見たロックに感動すると、演奏の主体はロックになった。それを期にワンマンバンド名を<The Cuty Bunny>と改名してやった。

ウサギに拘ったのは、恩のある施設名を付けたかったからと、セキシ―なバニコスとやらを着用してみたかったと言う欲望もあったワケさね。



◇跳ねるスーパー女子高校生 麗美(うるみ)

______高校1年の夏休みにはコンビニバイトを開始して、激安から念願の入門クラスのHendarストラトと、20wクラスのアンプ(計50,000円)を手に入れる事が出来た。


 実はバイト先ではオラのアイデアで、これまた憧れのメイド姿で接客をしたのよさ。これが大当たりして、カワイ子ちゃん(オラの事)が居るコンビニは大繁盛。ギターを新調出来たのは、臨時ボーナスが出たお陰でもあった。

(施設長が買ってくれたギターセットは大事にとってあるぞよ)


 JK会話はもちろん、正当なぶりっこ調で接客も完璧なJK。

「いらっしゃいませぇ~ご主人様ぁ♡」

オラ、秋葉のノリは最初抵抗があっただがや。すかす、これも(ぜに)の為だと割り切れば、客が渋沢さんに見えたもんさね。

「ふふふ、チョロイ甘い言葉で渋沢氏が......これを知ったらやめられんぞよ」


◇夏休み◇ 

 朝7時から12時までがバイト時間で、朝、弁当を買いに来る男性のお客様を、大勢ゲット出来たのはラッキーだった。

「握手まで求められてオラ、ちょっとしたアイドル気分になっちまっただ。案外これは悪くねぇなも」


 午後からの時間は練習に当てていたが、お客さまの口コミでオラは新聞に取り上げられたり、謀千葉市の広報誌の表紙にも採用されただ。

小さな事でも載せてくれる地元千葉新聞のヘッドラインは、<ワンマンバンドで今注目の美少女>の文字が踊り、オラはたちまち県内有名JKになったワケさね。おっと、美少女を付け忘れただ。


 次はHendar ジャズマスターとだぶる Reverbのアンプだと虎視眈々のオラだ。

Come on Shibusawa!!

「ギターに10万円は投資すべし」但し、お金が有ればの話で、今のオラには大金さね。


◇学祭のアイドル爆誕◇

______1年生の秋の学祭で、オラはまた注目を浴びる事になった。

 自慢ではにゃーが、中身はババでも天才肌で英語が堪能。ロックのナンバーが得意なオラだけど、そこは有名な<ハルピのGod Unknows>をチョイス。

当然ながらアニメのように、バニーガールのコスプレで披露しただ。

すると体育館は男子のドスの効いた歓声がオーオーと木霊し、オラが知らないうちに、熱烈な親衛隊まで結成されてしまう程だったげな。

「オラ、まだ一年生なんだぞい」


 ......まぁそれはえぇとして。

その様子を、誰かがYoutubeで流してくんさった。

超絶ギターテクニックと美声ボーカルで、ハルピのGod Unknows の評判はもの凄いことになってしまったのよ。

勢いに乗って、コミケで路上コスプレロックを披露しちまったオラ。

バニーガールとロック。これが爆発的に大うけしてしまい、会場は騒然となっただ。


______Spec

◇転生したオラ(麗美)◇

 身長四尺五寸、体重十二貫、 ロングの黒髪でバディは抜群。チチは成長し過ぎてバインバイン。もう前世のように最敬礼はしておらんぞよ。

「すかすだ、チチが邪魔でギターの弦が見えんし、走ると揺れて重ぇ。針金入りチチバンドは胸に食い込むぞよ。オラ前世では貧乳で、ずっとチチバンド無しじゃったし」

 まぁええか、そんな事は。


 しかし美味しいものには目がなく、オラは食べ物に釣られやすい。オラは美少女の見た目とのギャップが激しく、石焼き芋に釣られて誘拐されかけた事があったくらいじゃ。

幸い、オラの容姿容貌が知られている為、犯人はすぐ確保されたんじゃがな。

 あぁ、新聞のヘッドラインじゃが......

<石焼き芋に釣られた有名女子高校生誘拐>

「芋ねぇちゃんじゃのぉ~オラは」


 ファッションは施設育ちなので地味一筋。ユニケロパーカーがオラの普段着、トレードマークとなっておる。

今時ケータイを持っていないのも珍しいけんど、音楽活動にノートパソコンだけは必須、これはなんとか中古で手に入れた。外出した時は、特にフリーWiFiポイントが溜り場になっておる。



挿絵(By みてみん)


 さて、オラの演奏スタイルは、ガンズ アンド ローゼスの影響大で、ヘッド・バンキングまで披露するけれど、最後は<ケイコの夢は夜開く> で締めるところが俄然話題となり、今ではオラの定番となっている。

「ガンズは歌舞伎の連獅子みたいでのう、オラ、見た瞬間にコレやと股間が直感したべ」

 

 そして口コミと千葉謀新聞、地元ローカルTV局の取材もあって、オラ 新藤麗美(しんどううるみ)は、前世では考えられなかった夢のような階段を駆け上って行こうとしていた。

「これだべ、オラが望んでいた人生はよ」


 しかしオラは、あの便所紙の言葉を思い出してしまった。

 <人生はそんな甘いもんじゃないぞ>

その言葉を口にした時、オラの薔薇色の人生に、ウンコ色した暗雲が押し寄せたのである。


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