頭脳派君、初めての戦闘。そして本命へ
竜視点
龍が素手で熊を倒した時は正直目を疑った。
そもそも素手でやり合おうなんて思わねぇだろ。
あいつが脳筋で何も考えてないから出来た芸当だ。
結果、龍には特別な力が付与されていて、人外とも渡り合えるような身体能力になっているらしいというのはわかった。
俺にも果たしてそんな力があるのだろうか。
不安はあるが、同時に早く戦ってみたいとも思いつつ熊に近づいていく。
『竜Lv1
重力、引力操作
思考加速
空間把握能力』
これが龍が言っていた自分の情報ってやつか。
重力と引力の操作ってなんだ?
とりあえず試しに熊に向かって重力をかけるつもりで念じてみる。
すると心無しか動きが鈍くなったように見えるが、普通にこちらに歩いてきている。
発動方法はこれで合ってるのか?と疑問を抱えながら今度はさっきより強く念じる。
グシャッ
目の前で熊が見えない力によってプレスされた。
一瞬の出来事だ。
龍「すげーなおい。なにやったんだ?」
竜「重力操作ってのがあったからそれを使ってみたんだが、力の使い方を覚えなきゃだめだなこりゃ。」
龍「なんだそのチートみてぇなの。お前も人間卒業してんじゃねぇか。」
その言葉に俺は何も言い返せなかった。
父親「なんなんだお前らは...本当に人間か?」
龍・竜「当たりめぇだろ、ふざけんな。」
2人でそう言い返すとおっさんは盛大に溜息をつきながら熊の解体を再開した。
解体作業には時間がかかりそうだったので、俺と龍は周りの探索をしつつ、力の使い方を覚えるために新たな獲物を探しに行くと伝えると、勝手にしてくれと言われたので龍と森へ入っていく。
龍「お前の能力、なんか魔法みたいでカッチョイイよな。羨ましいぜ。」
竜「お前のはただの脳筋みたいな使用だからお前にピッタリじゃねぇか。良かったな。」
だが龍の防御無視という能力も大概ぶっ壊れていると思う。
熊の頭を消し飛ばす力で人間を殴ったら悲惨な光景が広がるだろう。
まぁ俺の重力操作に関しても同じ事が言えるから、どちらにせよお互いに力の使い方を完璧に把握しなければならないのだが。
龍「お。あそこに洞窟があるな。入ってみるか?」
森の中をしばらく進むと、あきらかになにかの巣のような洞窟があった。
竜「明かりがねぇから入るのは危険だな。引力操作ってのがあるからあの洞窟の中に向かって試してみるか。もしかしたら中に居る奴を引き摺り出せるかもしれねぇ。」
俺は洞窟の中に向けてものを引っ張るイメージで念じてみた。
すると葉っぱやら小石やらが出てくるのと同時に何かの唸り声が聞こえてきた。
龍「なんかいるっぽいな。まずおれからやっていいか?」
竜「ああ。お前がやり合ってる時に相手の動きを止めれるぐらいの力で能力が使えるように練習したいから一撃で終わらせないようにな。」
龍とそういう打ち合わせをしていると中から巨大な熊が出てきた。
『キンググリズリーLv35』
頭の中にそう表示されるのと同時に、とんでもない音量で咆哮が轟いた。
「グオオオオオオオオッ!!」
龍「で、でけぇ!5mはあるんじゃねぇか!?てかこいつ本命じゃねぇか!」
そいつは真っ黒な体毛を持ち、俺らを威嚇するように二本足で立ちながら両腕を広げて今にも攻撃してこようとしている。
竜「どっちにしろやるしかねぇよ!どうにか動きを止められるようにするから任せたぞ!」
そう言いながら熊に向かって重力をかけてみるが、奴は全く効いてないかのように龍に向かって腕を振り下ろした。
龍「うお!リーチ長っ!だけど避けられる速さで助かるぜ。」
熊は連続して龍に攻撃を仕掛けているが、龍はことごとく避けまくっている。
熊の攻撃は決して遅くはなく、むしろ人間の動きを超越した速さに見えるのだが龍の動きはそれを遥かに上回っている。
転移させられた時に身体能力が向上したのは間違いないだろうが、動体視力向上の能力も役に立っているのだろう。
俺はさっきよりも強めに重力をかけて熊の動きを止めようと試みる。
龍「お、だいぶ苦しそうだな。おかげで動きが止まってくれたぜ。オラ座れや熊公!」
どうやら重力が効いたようでその場に立っているのが精一杯、という感じになっている熊に対して、龍は熊の足を蹴り上げ、奴に尻もちをつかせた。
蹴り上げた時にべキッという嫌な音が聞こえたから多分足の骨が折れたのだろう。
熊は前足だけで逃げようとしている。
竜「おい龍。そのままトドメ刺しちまえ。」
龍「長引かせるのも可哀想だしな。悪いな熊公。」
龍はそう言うと熊の頭部に蹴りを放った。
ボキィッという音と共に熊は倒れ、それっきり動かなくなった。
首の骨が折れたのだろう。
だが、頭を消し飛ばしたり、プレスにすること無く熊を倒すことが出来たからお互い力の使い方は把握出来たきたってことで良いだろう。
『竜Lv5→15』
このLvにはなんの意味があるんだ?
そのうち何かしらの意味が出てくるんだろうが、今は特になんの変化もないから分からないままだ。
龍「よう、本命も倒せたしオッサンのところに戻ろうぜ。」
熊の足を掴んで引き摺りながら龍が言ってきた。
あんだけの巨体だから重さも相当あるんだろうが、軽々と引き摺ってるのを見るとあいつの力の底が知れない。
そうしておっさんのところに戻ると、熊を引き摺ってる龍を見て気を失ってしまった。
長年の悩みの種が討伐されて余程嬉しかったのだろう。
おっさんの目が覚めたら村に戻って、村長から情報を貰わなくては。
俺達はおっさんの目が覚めるまでの間、お互いの情報を見れるように色々試したり、自分の情報をいつでも確認できるように試したりして過ごしていた。
結果、おっさんが目覚めた時には自由に情報を...ステータスだな。
ステータスを見れるようになっていたのだった。