情報収集
竜視点
ヒカルの父親を連れて村を出た後、キンググリズリーが住処としている場所に案内してもらいながら歩く。
父親「あんたら、この世界の事が分からないと言っていたがどういう事なんだ?この世界の住人ではないのか?」
まぁ当然そこは突っ込んでくると思っていた。
竜「信じるか信じないかはあんた次第だが、訳あってこの世界とは違う世界から転移させられたんだ。んで、転移させられた先がこの森だったってこと。」
父親「......いや、信じよう。時代の節目になると転移者が現れて争いを終わらせるという伝承がある。今この世界は魔王が討伐され、次の世界の王を巡って争いが起きているのだ。」
竜「魔王?そいつが前の王だったってことか?」
父親「そうだ。魔王が世界の王座についておよそ300年間、魔族が他の種族の国政を行って統治していたのだ。最初の頃は良い国になっていたと聞くが、私が知る限りでは魔族以外の種族はほぼ奴隷のような扱いで、10年前に各種族の長が集まりクーデターを起こして魔王を討伐したんだが、今は各種族で次の王を巡って種族間での争いが起きているのだ。」
俺達が神を名乗るやつから聞いてる話と違う内容だがどういう事だ?
今この世界で起きているあらすじみたいな事は分かったが、まだまだ情報が足りない。
俺はとりあえず、争いあっている種族のことを聞いたが、思ったよりも情報が多く、龍は全く聞いちゃいないっぽいので俺なりに簡単にまとめてみた。
まず人族で、まぁ前の世界と見た目は変わらない人間だ。
非凡で秀でた能力はないが、1番数が多い。
稀に英雄と呼ばれる凄まじい力を持った人間が産まれるらしいが、現在この世界には英雄と呼ばれている人間が3人居るみたいだ。
次に先程話に出てきた魔族。
見た目は頭部に2本の角と、背中から黒い翼が生えてるらしい。
強力な術と強力な腕力を持っていて、頭もキレるからタチが悪いみたいだ。
だが、全種族の中で1番数が少ない。
次にエルフ族。
耳が尖っていて全員整った顔立ちをしていて、肌が黒い者と白い者がいるそうだ。
共通して強力な術が使えるが、腕力は弱く、肌の色によって使う術の系統が違うらしい。
次にドワーフ族。
ドワーフは大人でも背が小さく、男女共にガタイがいいらしい。
主に肉弾戦が主流らしく、術はそんなに得意では無いみたいだ。
次に獣人族。
人型と獣型が居るみたいだが、獣型でも言葉を発することが出来るらしい。
隠密を得意とし、主に奇襲をかけて群れでの戦闘をするみたいだ。
ただ、人族とは友好関係みたいで中には生活を共にする者もいるという話だ。
最後に、精霊族というのが居るらしいが、この種族は争いには関わっていないらしい。
というか、存在しているのは確かだがどんな姿で何をしているのか、というのは誰も知らないらしい。
要するに、人族と獣人族が組んでいて、魔族、エルフ族、ドワーフ族の4勢力で王座を賭けて争っているってことだ。
竜「争いってのは戦争してるってことなのか?」
父親「いや、種族間での人数が違いすぎるから戦争にはなっていない。各種族ごとに代表者を選定して世界のどこかにあるという精霊王の祠を見付け、そこに居るとされる精霊王に認められた者が次の王になるというのが代々から伝わる王位決定のやり方なのだ。」
竜「ん?争いじゃねぇじゃん。」
父親「精霊王の祠というのがなかなか見つからんらしくてな。各種族から代表者を送り出してから5年は経つが、未だに発見したというのは聞かない。だから精霊王の祠を見付ける前に他の代表者を潰してしまおうという考えになったらしく、今は代表者同士での争いが起きているのだ。」
なかなかめんどくせぇ展開になっているみたいだ。
だが、俺達はこの世界の神が殺されたから次の神の候補者として転移させられたはずだ。
王ではないはず。
この世界で起きていることは分かったが俺達が転移させられた意味については情報が無さすぎて先が見えねぇ。
とにかく今はキンググリズリーを倒さねぇと先に進まないのは確かだ。
村長からも情報を聞ければ俺らが進む道も見えてくるだろう。
龍「なぁ、あそこに熊っぽいの居るけどあいつか?」
少し前を歩いていた龍が熊を見付けたらしいが、俺にはまだ見えない。
龍「お?なんだこれ。ワイルドグリズリー...?おい竜、お前もこれ見えてんのか?」
龍がよくんからん事を言ってるがなんの事だ?
俺には森しか見えてない。
とりあえず龍が熊がいると言った方向へ近づいていくと、灰色の体毛をした熊が見えた。
『ワイルドグリズリーLv20』
頭の中にそんな情報が浮かんできた。
竜「俺にも見えたぞ。なんだこれ。」
父親の方を見ると訳が分からないといった表情でこちらを見ていたから多分俺達にしか見えていない情報なんだろう。
『オルトLv15』
これは....父親の情報か?
なんで今まで見えなかったのに急に見えるようになったんだ?
龍「おい竜、あの熊こっちに気づいたっぽいぞ。」
竜「分からねぇ事が多すぎるけどとりあえず今はやるしかねぇか。」
父親「ワイルドグリズリーも充分強いからな。私も加勢しよう。」
そもそも熊って素手で倒せんのか?
まぁとにかくやるしかねぇ。
考えんのは後回しだ!