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世知辛い異世界

龍視点

子どもに着いてきて暫くすると小さな集落が見えたきた。


子「ここだよ。」


こいつの親が先に村に帰ってるはずだと相棒が言っていたが、こんなチビを置いて帰るなんてきっとろくな親じゃねぇ。

顔を見た瞬間にぶっ飛ばしてやりてぇが相棒に黙ってろと言われてるから暫くは様子を見ることにする。


龍「おい、誰も居ねぇじゃねぇか。」

子「いつもなら見張りが立ってるはずなんだけど...」


とりあえず村の中に入ってみる。

土壁に茅葺き屋根といった、一昔前の家々が建っていて、所々燃えた跡のようなものがあり破壊されている。


竜「これは...なにかに襲われたのか?争った形跡にしか見えねぇけど。」


俺達が物色していると、奥の建物から男が出てきた。


男「あれ?何だおめぇら。今取り込み中だから余所者に構ってる暇はねぇんだ。帰ってくれ。」

子「おじさん、僕だよ。お父さん達帰ってきてるかな?」

男「あっ...ヒ、ヒカルじゃねぇか。こりゃマズイな...。村長に報告しねぇと!」


そう言って男はまた建物の中に消えていった。


竜「なんかお前が帰ってきたことがマズイ状況らしいな。ここでただ待っててもなにも分からねぇし乗り込むか。」


相棒がそう言って建物に向かって歩き始めたから、何が何だか分からねぇ俺もとりあえず着いていく。

チビもオドオドしながら着いてきた。


竜「お邪魔しまーす。」


相棒はそう言いながら躊躇いもなく扉を開ける。

ズカズカと中に入っていくと、そこには縛られた一組のボロボロになっている男女とそれを取り囲むように大人達が円を作っていた。


龍「何だこの状況。弱いものいじめか?」

子「お父さん!お母さん!どうしたの!?」


子どもの態度を見る限り、この縛られた男女はこいつの両親らしい。

本当に子どもを置いて帰ってやがったのか。

だけどなんで縛られてんだ?

子どもを捨ててきたのが村人にバレて村総出で絶賛お説教中か?


村長「なんだお前らは。そんでヒカル、なんでお前生きてるんだ?」


村長から出た言葉を俺は理解出来なかった。


竜「俺らはあの森で道に迷ってる時にこいつと出会ったんだ。そしたら親とハグれたみたいだからとりあえず村に案内してもらったんだが...なんだ?こいつが生きてたらなにか都合が悪いのか?」


こういう時は相棒が頼りになる。

難しい話は分からんから全部任せよう。


村長「あの森ではモンスターがウヨウヨいるから襲われたのは1度や2度ではないはずだが?どうやってここまで来たのだ?」

竜「モンスター?そんなもん1度も出てきてねぇよ。要するにこいつは口減らしのために捨てられたってことか。だとしたら何で両親が縛られてる?」

村長「モンスターが出てきてないだと...?そんなはずはない。いやしかし...お前ら何かしたな?子どもを置いて森から帰ってきたと思ったらいきなり攻撃してきたのは単純な報復という訳ではないのか?」


村長はそう言いながら両親を見下ろした。


父親「その子には1年前から魔除けの術を施してある。2年前にキンググリズリーが出現し、狩りが思うように出来なくなって村の意思で口減らしが行われるようになってからだ。未来ある子どもを犠牲にして貴様ら老人が生き永らえる風習が許せなかったのだ。この2年間で何人の子どもが犠牲になった?この風習を終わらし、いつの日かキンググリズリーを倒してまた平和な生活を取り戻すために貴様ら老害を根絶やしにしようと思ったのだ!」


竜「なるほどな。その魔除けの術ってのがどういうもんなのかは知らねぇが、それのお陰で俺らも無事にこの村に来れたって訳だ。んで、村長。今こうして両親を捕らえてる訳だがこの後どうすんだ?」

村長「ワシらには伝統を伝える義務がある!キンググリズリーもそのうちつがいを探しに森を出てくじゃろ!口減らしによる犠牲はそれまでの辛抱じゃ!その考えに賛同出来んのなら貴様らにも口減らしになってもらうまでよ!」


とりあえずこの親は子どもを捨てた訳ではないらしい。

なんならこれから出るであろう犠牲を守ろうとして現在こうなっているみたいだな。

口減らしがどうこうは俺の頭じゃ分からんが、要するにキングなんちゃらが消えれば問題解決なのか?


竜「口減らしがどうのこうのは余所者の俺らが口出すことじゃねぇけどさ、そのさっきから出てるキンググリズリーってのはどんなモンスターなんだ?」

父親「そこら辺によく居るワイルドグリズリーの上位種だ。討伐にはBクラスのハンターでないと歯が立たない強さなんだが、この村にはBクラスを依頼できる金が無いんだ。だが、穀物を育て、魚を摂り、それを売って金を貯めればいつかきっと依頼できるようになるんだ。」

竜「金貯めてる間にキンググリズリーが襲ってきたらどうすんだ?いくら口減らしした所でこの村に直接来ちまったらお前ら全員死ぬんだろ?」

村長「村の入口には魔除けの術が施してあるからこの村にいる限りは安全なんじゃ。当然じゃろう。」


あ、当然じゃろうって言われて相棒の目付きが悪くなった。


竜「じいさん、取り引きしよう。俺らは訳あってこの世界のことを何も知らねぇんだ。だからアンタらにとって当然なことも俺らは知らない。だから、この世界の事を出来るだけ詳しく教えてくれ。その変わり、俺とこいつでそのキンググリズリーってのを討伐する。見た目が分からねぇから案内役は付けてもらうけどな。」

村長「さっきの話を聞いてなかったのか?最低でもBクラスはないと討伐出来ないんじゃぞ?何も知らんと言ってる素性がわからん者を信用しろと?」

竜「信用なんかしなくていい。これは取り引きだ。俺らが討伐できなければただ俺らが死ぬだけだ。そっちに損はねぇだろ?討伐出来たら情報だけくれりゃあいい。」


村長は黙って目を閉じた。

相棒の目付きが変わった時は暴れるんじゃないかと思ってワクワクしてたけど案外冷静に話をしてて少し残念なのは内緒だ。


村長「わかった。案内はそこの父親を付ける。父親にはこやつらがちゃんと討伐したか確認させて証拠を持ってこさせる。それで文句ないな?」

竜「取り引き成立だ。じゃあ早速行こうかね。」


相棒はそう言うと、父親の縄を解き始めた。


子「お兄さん達大丈夫...?」


チビが不安そうな顔でこちらを見上げてくる。

俺らが死んだら多分コイツらも口減らしって奴で見殺しにされるんだろうなぁ。


龍「よく分からんが大丈夫だろ。なんせ俺らは神になる予定だからな!きっと最後は丸く収まるさ。」

子「神様に...?分かんないけど死なないでね。生きてお父さんと帰ってきて。」


俺はチビの頭をポンポンとやりながらキンググリズリーとやらの討伐に向かうのだった。

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