異世界に着いたら子どもが泣いていた。
竜視点
目を開けるとそこには見渡す限りの木々。
ここは森か?
たまに訳の分からん鳴き声が聞こえてくる。
横を見ると龍がだらしない顔で爆睡していたので横っ面を引っぱたいて叩き起した。
龍「いたあっ!ってなんだここ?あ、おはよう竜。」
竜「おはようじゃねぇよ。今俺達が置かれてる状況分かってんのか?」
あの神とか名乗るやつに質問したいことはまだまだ沢山あったのに例のごとくこいつに邪魔されて訳が分からないままこんな所に飛ばされてしまったのだ。
龍「とりあえず神になればいいんだろ?難しく考えんなよ。」
竜「じゃあ聞くが、どうやって神になるんだ?条件とかあるかもしれなかっただろ?」
龍「....いや知らんけど。」
竜「はぁ......お前のその後先考えずに行動するのには毎回頭が痛くなるぜ。まずここがどこなのか歩きながら把握してこの森?を抜けよう。話はそれからだ。」
龍「おん。じゃああっちだな。」
竜「あっちになんかあるのか?」
龍が自信満々に言うので俺の視力(1.5)には見えない何かを見つけたのかと思いそう聞く。(龍は2.5)
龍「あ?初めて来たんだから知るわけねぇだろ。勘だ勘。」
殴ってやろうかと思ったがこいつの直感はよく当たるので馬鹿にできない。
俺は何も言わずに歩き始めた。
歩き始めて数分で思ったことだが、まず植物が全て初めて見るもので、その辺にいる虫?みたいなやつも俺が知ってる虫よりゴツくて二回りぐらいデカイ。
龍が捕まえようとしてたが、毒があったらヤバいので止めておいた。
それにしてもここは本当に異世界なのか?
外国の虫とかはよく知らないからここが外国なのでは?とも思うが、あの神が言ってたことが本当ならばここは異世界...俺たちがいた世界とは別の世界なのだろう。
龍「おい竜、あそこに子どもがいるぞ。」
龍が指差す方を見るとそこには子どもらしき人影が見えた。
竜「とりあえず手掛かりも何もねぇし接触してみるか。」
そう言って子どもらしき人影に近付いてみると、その人影の泣いている声が聞こえてきた。
近付いたはいいが、ここが異世界なら俺たちの言葉は通じるのか?
コミュニケーションが取れないならそもそも近付いた意味がないのだが。
龍「おい、なに泣いてんだ?転んだのか?」
龍が人影に向かって話しかけると、人影はビクッとしながらこちらを向いた。
見た目は貧相な服装で、体の線も俺が知る子どもよりもガリガリだ。
歳はまだ10かそこらだろう。
髪はショートなので男か女か判断ができない。
こんな森の中で泣いてたということは迷子なのだろうか。
子「お兄さん達誰...?お父さんとお母さんはどこ....?」
やはり迷子のようだ。
とりあえず言葉は通じてるみたいで助かった。
龍「俺達は神になるために...ムグッ」
龍が要らんことを言いそうになっていたので口を塞いで黙らせた。
竜「俺らは今迷子になってんだ。お前も迷子か?」
俺がそう聞くと子どもは怪訝な顔をしつつも頷いた。
竜「父ちゃんと母ちゃんとはどこでハグれたんだ?俺らは道が分からねぇからお前の父ちゃん達と話がしてぇんだ。」
子「村の食料が底を尽きそうだから、いつもなら大人だけで狩りに行くんだけど、今回は僕も狩りを学べって連れてこられて...。モンスターを探してる時にお父さん達にここで待ってるように言われたんだけどいつまで経っても帰ってこないんだ。」
それを聞いた俺は嫌な予感がしたが、それよりもモンスターという気になる単語が出てきた。
竜「モンスターってなんだ?動物か何かか?」
子「モンスターはモンスターだよ。動物は食べられないでしょ。」
ダメだ、話が分からん。
普通は動物を狩って食料にするんじゃないのか?
龍「よう、とりあえずこいつの親を探せばいいのか?」
竜「いや、道がわからねぇ俺らが闇雲に歩き回っても体力の無駄だ。今はとにかくこいつに着いていって村に向かった方がいいな。お前、村まで行けそうか?」
子「うん....でも....お父さんとお母さんが帰ってきてるか分からないし.....ぐすん。」
龍「おい泣くんじゃねぇ。泣いても状況は変わらねぇだろ。泣いてる暇があったら行動しやがれ。」
龍の言い方はキツかったが、確かにその通りなので止めることはしなかった。
竜「....俺の考えが合ってれば両親は村に帰ってるはずだ。どっちにしろこのままここにいても状況は変わらねぇ。行動に移すかどうかはお前次第だ。」
俺がそう言うと子どもはトボトボと村があるであろう方向に歩き始めた。
龍「おい、こいつの両親が村に帰ってるってどういうことだ?狩りに来たんじゃねぇのか?」
歩きながら龍がそう聞いてくる。
竜「こいつの身なりや話を聞いた感じだとただ狩りに来たって訳じゃなさそうだな。まぁ村に着いてみりゃ嫌でも分かるさ。村に着いたら俺が話つけるからお前は黙ってろよ。話が拗れるから。」
龍は分かったような分かってないような顔をしながらそのまま黙って歩き続けた。
世界が違うから事情が何も分からないが、出来れば俺の考えは外れてて貰いたいもんだな。
そう願いながら俺達は黙々と村に向かって歩き続ける。
子「見えた。僕らの村だ。」