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救済のGemini  作者: きのうちえる
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第1話 おわりのはじまり②

高校生の双子の兄弟・紀一ノリカズ)真二シンジ

夏期講習に向かう途中で大規模な自動車事故に巻き込まれてしまった。


「……な……」


深い海の中から何かが振動し聞こえる。


「………って………」


これは声だ。人の声だ。それもよく聞き馴染みのあるものだ。


「……お…!」


いや、違う。海の中にいるのは自分だ。


「なあってばあ!!!!!」


「うぉおッ!?!?」


反射のように勢いよく起き上がる。

声の主は馴染み深い顔の弟だった。


「あれ、海…?」


「寝惚けてんの?勘弁してくれよ…」


はぁ、と真二(シンジ)は深いため息をつく。その瞳は動揺と困惑で揺れ動いている。


先程まで海中に居たような感覚があったが、どうやら深く眠っていただけなのかも知れない。

海と云うには、いささか緑が多過ぎる。


「なんだこりゃ…え、何、山?森?どこだここ」


「俺もわっかんねぇよ…けどさ、けど…」


眠る前最期に見たのは──。


「俺ら、死んだよな」


「……ああ。オレも大分頭動いてねェけど、ありゃ死ぬよ。玉突き事故ってレベルじゃなかった。車の洪水だよ、避けられるハズ無い」


「そうだよなあ。じゃここあの世?」


あの世──特に悪い行いをした覚えは無いので、天国を想像する。

大抵、空・雲の上なんてイメージだが、目の前に広がる地形はどうやら異なる。

辺りは見渡す限りの山。標高こそありそうだが、今居る地面は石で重量も感じられた。二人がいる場所は人の手で整備されたような痕跡もある。


「なんかこう…ここゲーム画面っぽいな」


「所々壊れてるけど、ここ祭壇ってやつ?アニメでこんなの見たことあるなあ」


「じゃ空の上ってこと?やっぱオレら死んでるじゃーん!」


紀一ノリカズ、手貸して」


返事を待たずしてグッと真二が手首を掴む。


「あ痛ッッ!!」


高校1年にして強豪校の投手ゼッケンをもぎ取った男の握力は中々のものだった。

5.6秒ほど掴んだのち、次は己の手首を触る。


「!脈か…!!…いやオレにも優しく触れよ!」


「夢かどうかの確認も含めて…。てか、そうなんだよ。あるんだよ、脈」


「えー…?マジでどゆこと……」


死んではいない。しかし己の意志でこんな見覚えもない場所に来た記憶もない。

馬鹿げた推測だったが、思い当たる節は一つだけあった。


「え、異世界転生?」


「いやこの後に及んでふざけんなって。んなモンありわけないだろ。漫画ゲームやり過ぎ。だからお前も部活とかさあ…」


「うるせーーな!おめぇ母ちゃんかよ!」


その言葉を皮切りに、母の顔が浮かんだ。母、父、ペットの犬に落ち着く我が家。祖父母、学校、クラスメイト達─。


「心配してるよな」


「帰らないと」


少し前までこんなに感慨深いものになるとは思いもしなかった記憶が無性に彼等を駆り立てる。

帰らねば、戻らねばと。


「ここどこだ」


「良くて近所の山、悪くて海外っぽさある」


「わかる。ペルーとかそういう雰囲気あるよな」


「参ったな、とりあえず下りてみる………?」


カシャン、と朽ちた祭壇から瓦礫の音がした。


「!?」


即座に振り返り、警戒をする。

野生動物─それも熊あたりなら最悪だ。近場にあった石や枝を咄嗟に手にした。


「怯えないでください!」


「!」


「日本語…?」


ああやっぱりここは日本の山中だったかと二人が胸を撫で下ろしたのも束の間。

視線の先から現れたのは随分と風変わりな女の子だった。


「お加減はいかがでしょう…?」


物腰は柔らかそうで、おそらく敵意は無い。

これがただの『風変わり』で済んでいれば全く問題も無かっただろう。

髪の毛はベージュに近い金色で、肌は限りなく白に近く瞳は人間のものとは思えない程鮮やかなグリーンだった。

更に頭部には雄鹿のような凛々しい角が2本突き出ている。一番の問題は足元にあった。


「う、浮いてる…?」


声の主が近付いてくると、足が地面から数センチほど離れているのに気が付く。


「すみません、無礼でしたね。少し冷静さを欠いてしまい…これで宜しいでしょうか」


スッと軽く地面に両の足がつく。浮いてる時点で確定ではあるのだが、とても人間技とは思えない。


「何、手品!?え、あ、え!!?」


「なあちょっと顔!!?ん!?ウロコッ!?」


真二が紀一の肩をガシガシと揺らす。二人の目の前まで来た彼女の頬には薄っすらと鱗のような模様がついている。

それがゆっくりと人の肌へ変貌までしているのだ。


「重ね重ね失礼いたしました。先ほどまで─」


「ちょっとぉ!!!!!!」


大きく太い声が空間をこだまする。どうやらもう一人現れたようだった。


胡莵コトッ!アンタ龍化してアタシのこと置いてったわね!?せめて乗せて行きなさいよッ」


「………?」


こちらはこちらで別の動揺が生まれた。

新たに現れた人物は姿形に違和感こそ無かったが、なかなかに難解な見目だった。


「だって重いじゃないですか」


「アンタ人が気にしてること言うんじゃないわよッ」


身長180センチはゆうにありそうなガッシリとした体躯に真っ赤なハイヒール、そしてスリットのある異国風ドレス──所謂チャイナ服を着ている男性だ。


「おかまさん?」


「うるさいわね!!!」


勇気ある兄が軽口を叩いても本気の悪意は感じられなかった。この謎の2人はひとまず危険は無いと判断し、冷静に弟は尋ねた。


「あの、ここはどこなんですか?」


真二の問い掛けに対し、謎の2人組は瞬時に目を合わせる。


「ということは…やはり…!!!」


「遂に…会えたのね…」


彼等は紀一と真二の前で膝を折る。男の方からカンッと異様な音がしたが、見知らぬ人物達からの唐突な土下座に言葉を失う。


「お願いです。どうか…どうか私達を…」


「殺してくれませんか」


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