プロローグ
目の前には自分達に首を垂れた人物がふたり。片膝をつき、両手を顔前で合わせている。まるでファンタジー世界の姫君に忠誠を誓う騎士のようだった。
全てが唐突で何が起こっているのか分からなかった。
だが一つ、明確なのは彼等の見た目に違和感が生じていた。
2人のうち片方からは頭に角のようなものが生えている。注視すると頭部にはヘアバンドやクリップなどは確認出来ない。それどころか髪生え際から角の根元のようなものが見える。
思い返せばもう片方のガタイの良い人物からは、膝を着いた時カキンッと異様な音が出ていた。身に纏っているのは中華風ドレスのみで、足装具や金属製の物を着けているようには見えない。
果たして自分達と同じ【人間】なのだろうか。
呆然と立ち尽くす同じ顔の彼等は互いに目を合わせ、互いに困惑した表情を浮かべる。
「お願いです」
2人のうちの、シカ科の角のようなものを生やした女が顔をあげる。
「どうか私たちを」
おっとりとした顔には似合わない、そしてドキリとするよう犬歯が見えた。先程同様、人間にしては異様な鋭さだった。
「殺してくれませんか」
「「…は?」」
━━かくして二人の少年は、運命の扉を拓いたのだった。