(8)寄り道
とある大工店を一人で営む小山は、いつもより早く仕事が終わったことで、寄り道をしよう…と、湧かせなくてもいい雑念を湧かせた。その日は寒く、一杯ひっかけから帰ろう…と思った訳である。^^ だが、その雑念がいけなかった。久しぶりの飲み屋ということもあり、ついつい杯が進んだのである。
「旦那っ! もうそろそろ店を閉めやすんで、このくらいで…」
店の親父は、いい辛そうに、遠まわしで小山を追い出しにかかった。
「なにっ!! もう、そんな時間かっ!? な、なんだ…まだ、こんな時間じゃねえかっ! ウイッ! まあ、親父も一杯いけっ!!」
「へい、どうも…」
猪口を赤ら顔の客にグイッ! と目の前へ突き出されれば、店主としては断ることも出来ない。ほんの一杯だけのつもりで受けた杯が、親父が酒好だったこともあり、一杯が二杯、二杯が三杯・・と進んでいった。気づけば、二人ともヘベレケになっていた。そんなこともあり、小山がフラついて飲み屋を出たとき、すでに日は変わろうとしていた。
次の日の早朝から仕事があった小山だったが、二日酔いが災いし、その日は昼から家を出ることになってしまった。昼前、施主から苦情の電話が入ったことは言うまでもない。
ゆとりが出来たとき、ふと浮かぶ寄り道の雑念には注意が必要・・というお話でした。翌日の予定を考え、寄り道をせず、一直線に帰りましょう。^^
完