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(73)限界

 水で柔らかくした干し柿を一週間ほど食べ続けていた篠塚は、まだ食べられるだろう…と、夕食後、一つ(かじ)った。味は甘く、少しもダメになっていないように篠塚は感じた。

『なんだ…ちっとも傷んでないじゃないか』

 そう心で(つぶや)くと、篠塚は二つ目の干し柿を齧った。

『まあ、今日はこれくらいにしておくか…』

 篠塚は、そう思うでなく湯飲みの茶をガブリと飲んだ。その十分後、篠塚の腹は少し鬱陶しくなってきた。痛くはなかったが、トイレへ行きたいような感覚が篠塚を襲ったのである。仕方なく篠塚はトイレでコトを済ませた。少し緩くなっていた大便だったが下痢ほどではなかったから、さほど気にせず篠塚はトイレから出た。

『二粒ほど飲んでおくか…』

 雑念を感じた篠塚は、念のため丸薬を二粒飲んだ。就寝したあとは何事も起こらなかった。

 翌日の夕方、篠塚はまた干し柿を一つ齧った。その十分後、篠塚は少し腹部に痛みを感じた。まあ、それでも激痛ではなかったから、トイレへ直行してコトを済ませた。昨日よりは大便が少し緩くなっていた。それでも水便ではなかったから、篠塚はトイレでコトを済ませたあと、丸薬を三粒飲んだ。就寝後、それで痛みは治まった。

 翌々日の夕方も篠塚は干し柿を一つ齧った。すると、その十分後、腹が急に痛くなり、便意を感じた。篠塚はトイレへ直行した。完全な下痢状態だった。ただ、水便ではなかったのが篠塚にとっては救いだった。篠塚は丸薬を五粒以上と他の胃腸薬を三錠ばかり飲み干した。それでコトは最悪の事態を免れ、その夜は終息した。

 翌々翌日の夕方になり、篠塚は干し柿を齧ろうとしたが、手が一瞬、止まった。水で柔らかくした干し柿の底を掻き分けて見ると、青カビが生えていた。

『危なかったな…』

 篠塚は残った干し柿を食べず、生ゴミ処理機の中へ入れ、スイッチを入れた。

 翌々翌々日の朝、生ゴミ処理機の中に乾燥した干し柿があった。青かびは死滅していた。篠塚は処理した生ゴミを畑へ撒いた。するとしばらくして、雀の群れが乾燥した干し柿を突いている姿が家の中の窓ガラスから見えた。篠塚は食べられる限界のだった干し柿が上手く処理されたことに満足した。

『雀達は腹が痛くならないだろうか…』

 そんな雑念が優しい篠塚の脳裏を(かす)めた。

 翌々翌々翌日の朝、生ゴミ処理機で処理して撒いた畑の干し柿は、すべてなくなっていた。そして、木立に止まった雀達は相変わらずチュンチュン・・と鳴いていた。

『雀達の腹は限界に強いんだな…』

 篠塚はそんな雑念を浮かべ、食べてしまった雀達の腹を(うらや)ましく思った。

 野生動物は限界に強く、(たくま)しいのです。^^


                  完

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