表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/100

(70)蜃気楼(しんきろう) 

 我が国ではそうお目にかかれない蜃気楼(しんきろう)と呼ばれる自然現象がある。砂漠などでオアシスのヤシの木などの遠くのものが見える現象だ。

 この男、野畑健一は、旅になど出なくてもいいのにアフリカのとある国へと旅に出てしまった。その訳は、なんとも美味(うま)そうな砂漠のヤシの実を食べる原住民の姿を夢で見たからである。そのなんともジュ~シィ~なヤシから(したた)り落ちる樹液・・田所は夢から覚めたとき、口の中が唾液(だえき)でベトついているのに気づかされた。毛布がベチャベチャになっていた。そして、その半分に切り裂かれたヤシの実を口元へ流し込む原住民の姿がどうしても忘れられなかった。野畑のアフリカのとある国へ旅に出たいと思う雑念はその朝以降、強くなっていった。

「課長、十日ばかり休ませていただきたいのですが…」

 気真面目(きまじめ)な野畑が休暇を申請するなどということはまずなかったから、課長の漆戸(うるしど)は驚いた。

「いったい、どうしたというのかね、野畑君?」

「どうもねしやしません。ただ、ふと、旅に出たくなったんです…」

「そりゃ、止めだてはしないけどね。なにせ、君が休暇の申請をするなんてことは、天変地異だからね。勤務年数分だと…君、半年は休める計算になる。ははは…そんな休職するような長期休暇は会社も困るがね。よし、分かった! いつからか知らんが、休暇届を出しておいてくれ」

 野畑は居ても居なくても、そう勤務に支障はない…と瞬時に判断した課長の漆戸は、雑念を湧かすことなく、いとも簡単に野畑の有給休暇を承認した。

 アフリカのとある国へ旅出った野畑は灼熱(しゃくねつ)の砂漠の中にユラめいて立ち昇る蜃気楼を現地人のガイドが運転するジーブの中で見た。ああ、あのジュ~シィ~なヤシの実が食べられるぞ…と思った途端、野畑の車は砂にタイヤを取られて横転した。そのとき夢は覚め、野畑はベッドから転げ落ちていた。すべては野畑が夢で見た蜃気楼だった。

 美味しいものは現実では食べにくいもののようです。雑念は、ほどほどにしましょう。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ