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(55)凍った雪

 困ったことに凍った雪は重くなって樹々を痛める。雪にまた食われたか…と雑念を巡らせながら箱宮は雪折れした枝を手に取りテンションを下げた。前日に降った雪が融け切らず、凍った場合は悪者の雪・・と箱宮は定義づけていた。今回も二日前に降った豪雪が融け切らず凍っていた。

『まあ、仕方ないか…』

 凍った雪にブツブツと語りかけて怒ってみても、これはもうお馬鹿さん以外の何物でもない…と、これくらいの道理は箱宮にも分かっていたが、どうも怒りが治まらなかった。箱宮は箒を逆にして叩き、凍った雪を取り除くことにした。凍った雪の下には丹精して育てたアイリス[アヤメ科]の茎葉が埋まっていた。それは(あたか)もツアースキーで危険なコースを滑り、雪崩に巻き込まれたスキー客に似ていなくもないな…と箱宮は雑念を増幅させた。司法試験を一発合格した箱宮の考えでは、自然現象とはいえ、雪崩は人を傷害致傷に至らせる未必の故意犯という結論だった。

「北アルプスの〇〇岳で雪崩に巻き込まれた二人が心肺停止状態で発見された、か…。たぶん、カチカチに凍ってたんだろうな…」

 痛ましい…と思える雑念が心中を騒がせ、箱宮は新聞紙面を(めく)って別の記事を読むことにした。そのときどういう訳か、冷蔵庫でパーシャル冷凍した肉の状態が、ふと気になった。箱宮は急いで冷蔵庫へと直行した。少し鮮度は落ちていたが、まだ十分に調理できる肉の状態を確認した箱宮はホッ! と安息の息を漏らした。

 人は身勝手で、凍った雪は怒れ、凍った肉は状態が心配になるようです。^^


                  完

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