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(53)信用力

 何がなくても信用があれば食べられる…と、豆尾は雑念を巡らせて思った。季節は五月(さつき)で、鯉の吹き流しがあちらこちらの人家に見える。青空の中、心地よいそよ風に頬を撫でられながら豆尾は堤防伝いの土手道を歩いていた。川の中州では草野球の試合が行われている。よく見れば、カンバスを立て、絵を描く人もいた。しばらく歩いていると、豆尾は急に腹が減ってきた。家を出るとき、硬貨が入った小さめの財布は持って出たが、中身をよく見れば、百円硬貨が一枚と十円硬貨が三枚ほどしかなかった。これではパン+牛乳パックを買えない…と豆尾は困った。前方にパンの直売所が見えたところで、豆尾は堤防の土手を降り、店へと近づいていった。

「やあ、豆尾さん。どうされたんです? 今日は、やけに早いですね」

 店員は(いぶか)しげに(たず)ねた。

「天気がいいんで、朝から散歩だよ、鬼塚君」

 財布の中が百三十円で・・とはとても言えないぞ…と心の片隅で思いながら、豆尾は返した。

「でしたか…」

 鬼塚は焼き立てのパンを店頭に並べながら短く言った。

「しまった! 財布を忘れたぞ…」

 幾つかの菓子パンを鬼塚に手渡したあと、豆尾は財布を忘れたことにして独りごちた。

「いいですよ、次で…。いつもご贔屓(ひいき)にしてもらってるんですから」

 鬼塚はパンを店名入りの特製紙袋に入れながら笑った。この店は客用にエコ紙で作った自前の紙袋が売りで、客はレジ袋がいらないから、いつも重宝していた。

「ははは…有難う」

 豆尾は信用力だな…雑念を巡らせながら、信用で食べられることを痛感した。

 味気ない今の世は、信用力が大事なようです。^^


                  完

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