(48)いよいよ
大相撲の本場所も、あれよあれよ…という間に終わってしまったテレビ中継を見ながら、大事な一番に臨んだ力士の心境は、いったいどんなものだろう…と、飼葉は野次馬気分で雑念を巡らせた。
『{前奏に引き続き御唱和を…}か。先場所は{心の中で御唱和下さい…}だったな…』
それだけコロナが和らいだ・・ということか? と飼葉は関係ないことに雑念を向けた。
『それにしても、呆気なかったな…』
呆気なかった・・とは、優勝が決定する最後の一番である。その一番を思い出した飼葉の雑念だった。
『呆気なかった・・ということは、負けた力士は、いよいよという立ち合いのとき、気持が昂って冷静さを欠いた・・ということになる。結果、それが相撲内容に出てしまった・・と、まあ、こうなるんだろう…』
飼葉にとっては人ごとだから、人知が及ばない自然の節理のように気楽に雑念を巡らせた。
『とすれば、勝ったもう片方の力士は冷静だった・・ということになる。心技体と相撲では言うが、やはり心理[メンタル]面の強さの差なんだろうな…』
そのとき、重たそうなトロフィーが二人がかりで優勝力士に手渡された。
『それにしてもあのトロフィー、何キロくらいあるんだろう?』
飼葉は、またまた関係ない雑念を巡らせた。
いよいよという瞬間でないと、飼葉さんのように雑念が滾々(こんこん)と湧き出るようです。^^
完




