(41)俳句
鳥波田は乾燥した冬の室内で首筋をボリボリ掻きながら俳句作りに雑念を巡らせていた。
『チェッ! こう痒いと、いい句が浮かばん…』
いい句が浮かばないのを身体の痒みに転嫁させ、鳥波田は都合のいい理由で暈した。結論を先に言えば、鳥波田はまったくの凡人で、いい俳句づくりなど百年、いや千年先も早かったのである。^^ 才能の無さに気づかない鳥波田はペンを机に置くと、畳の上で仰向けになり身体を横たえた。そして、いつの間にかスゥ~ピィ~…と、心地いい寝息を立てながら深い眠りへと誘われていった。
夢の中は春三月だった。梅が綻ぶ庭の床几に腰を下ろしながら、鳥波田は筆と短冊を手に持ち、超有名俳人になったつもりで俳句づくりをしていた。
「ダメだな、こりゃ…」
眠たくなった鳥波田は勢いよく床几を立つと、両腕を伸ばしてひと声、吠えた。相変わらずの乾燥肌の痒さが鳥波田を襲った。鳥波田は俳句作りを断念し、入浴することにした。いい湯加減の浴槽に身を沈めると、鳥波田の雑念は消え、いい心地になった。
『湯煙や 嗚呼、梅の花 梅の花…』
いい湯加減の浴槽に身を沈めて十数分、両の瞼を閉じた鳥波田の脳裏に庭で咲き綻ぶ梅の光景が、ふと浮かんだ。鳥波田は愚作の句を、我ながら名句だ…と雑念で自負しながら浴槽を出た。すると、そこで目が覚めた。鳥波田は畳の上で寒さに震えた。
他人がどう思おうと、名作だ…と、自身で思えれば、それが名作・・と思われます。深く考えないことでしょうね。^^
完




