(4)決断力
雑念が湧くと、どうしても決断力が鈍りやすくなる。
この男、とある町役場の市民課に勤める都筑も、出勤前の朝ご飯を食べながら雑念で迷っている一人だった。
『いやいや、ソレをしてから課長補佐に伺いを立てた方がいいか…』
そう思いながら椀の味噌汁をグビッ! と喉へ流し込んだ。すると次の瞬間、別の雑念が、ふと浮かんだ。
『待て待て…ソレをしてからだと、課長に朝一に頼まれたアレが後回しになるな…』
都筑にすれば当然、課長の方が課長補佐より優先権があるように思えた。なんといっても人事異動前の二月半ばだったからである。決断力が回復した都筑は、よしよし、課長のアレからだな…と決断ながら味付け海苔に醤油を少しつけた瞬間、また別の雑念が湧いてきた。
『待てよ…そうすると、部長に頼まれたナニが遅れるな…』
都筑にすれば当然、部長の方が課長より優先権があるように思えた。よしよし、部長のナニからだな…と、鈍っていた決断力がふたたび回復したとき、すでに開庁がギリギリ間に合う時間になっていた。慌てた都筑は、バタバタしながら家を出ると町役場へ向かった。
「おはようございますっ!」
庁舎の入口でガードマンに挨拶したとき、都筑はすっかりアレもコレもナニも忘れてしまっていた。
決断力が鈍らないよう、上司からの多くの依頼を簡単に受けない方がいいようですね。^^
完