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(23)先手必勝!

 ここは、なにがなんでも勝たないと…と、ラーメン店へ入れなかった宮崎は小市民的な雑念を巡らしていた。昨日は同じ会社の同僚、堀田に先を越され、美味(うま)いラーメン店に人数制限で入れなかったのだ。課が違うこともあり、昼食休憩のタイミングはそれぞれ違ったから、どちらが先に並ぶかは日によって異なった。宮崎は曜日別のラーメン店へ並ぶ人数の統計データを、こともあろうに課のシミュレーション・ソフトを駆使して解析していた。

『…と、いうことは、今日は水曜だから、コレくらいの人数か…。よしっ! 今日は課長に頼まれたファイル整理もないから店に入れる確率は高い。堀田に勝てるなっ!』

 宮崎はデスクに座り、自分の職分を(こな)しながらニンマリ哂顔(えがお)で、今か今か…と待っていた。

 やがて、正午を告げるチャイムが社屋に響き渡った。宮崎は先を争うように席を立とうとした。が、そのときである。

「宮崎君っ!! 悪いがこのファイル、至急、整理を頼むよっ!! 三日前、常務に言われてたんだが、うっかり、忘れていてねっ!!」

 少し離れた課長席に座る万年課長、豚尾の声が突然、(にぎ)やかに飛んできた。

「はい…」

 平社員の宮崎は、蚊が泣くような小声で応諾(おうだく)しなければならなかった。内心は、おいおいっ! 今かよっ! だが、そうとは口が裂けても言えない。

『もう、どうでもいいや…』

 (あきら)めた宮崎は先手必勝! の雑念を捨てることにした。たかだか、美味いラーメン一杯だけのことじゃないか…と割り切ったのである。すると妙なもので、気分は(にわ)かに楽になった。宮崎は会社近くのパン屋でパンを買い、社内の自販機で牛乳を買って昼食にした。

 先手必勝! などと勝ち負けの雑念を湧かさず、後手でもいいや…くらいの平常心で臨めば、コトは案外、スンナリと行くのかも知れませんね。^^


                  完

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