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(20)時雨(しぐれ)

 照る照る坊主を()るしておいたから、次の日は晴れていた。

『よかった、よかった…』

 と、心の内で平坂(ひらさか)澄斗(すみと)はホッ! と安堵(あんど)の息を漏らした。ところが、である。喜び勇んで家を飛び出したまではよかったが、空に暗雲が立ち込め、瞬く間にパラパラと時雨(しぐれ)出した。

『よくない、よくない…』

 平坂の喜びは一転し、テンションは俄かにガタ落ちになり始めたのである。ただ、空を見上げれば暗雲が立ち込めているのは上空のほんの一部で、天空のほとんどは青空だった。平坂は、妙な天気だな…と思いながら、しばらくの間、上空を見上げていた。その所為(せい)か、首を下げると首筋に鈍痛が走った。

『ははは…さっぱりだっ!』

 苦笑いした平坂だったが、テンションは、さらに下降していった。雑念に沈みながら歩道を歩くうちに、いつもの月極(つきぎめ)の駐車場が見えた。ドアを開け、車に乗ろうとした次の瞬間、今まで立ち込めていた暗雲がパッ! と消え去り、パラパラと時雨ていた空からの小雨がピタリ! と止んだのである。

『こういうこともあるのか? まるでマジックだな…』

 平坂の心に、ふたたび光明が射し始めた。

 その後、時雨は止んだり降ったりを繰り返し、平坂のテンションは上がったり下がったりと大忙(おおいそが)しになった。平坂は思った。もう、雑念を湧かすのはやめよう…と。すると妙なもので、その後は時雨が嘘のように止み、青々とした空が全天に広がったのである。ただ、平坂の心はすっかり疲れ果てていた。

『もう、どうでもいいや…』

 自暴自棄になった訳ではなかったが、平坂は(うと)ましくなり、雑念を湧かさないことにした。

 時雨は雑念を捨てれば晴れるようです。平坂の照る照る坊主の願いが(かな)ったかどうかまでは知りません。^^


                  完

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