(13)検査
山郡は時折り通う病院の検査が嫌になってきていた。もちろん、検査をすることで病気の進行を事前に治療出来ることは理解していた。ただ、検査を受けたあとの医者との面談が嫌だったのである。何事も言われなければそれでよいのだが、もし、悪い結果を言われたときは…と考えれば怖かった訳だ。そんな、ビクビクさせられる検査を何度も受ければ、これはもう、恐怖の雑念の虜にならざるを得なかった。そんなに肝が据わっている訳ではない山郡とすれば、針の筵に座った気分だったのである。陽気で明るい医者ならまだしも、今通う病院の医者は陰気で余り笑顔を見せず暗かったから、余計に山郡を悩ませていた。
「まあ、悪くはないので、お薬を出すほどのことでもありません…」
暗い顔で事務的に説明されれば、誰だっていい気分になるはずがない。
「はあ…」
山郡は診察室で陰気な医者の言葉を聞きながら、『悪くないなら、もっと明るく言えよっ!』と怒れていた。ただ、そんな腹立たしいことでもなかったから、馬になることにした。馬になるとは、巷でよく言われる[馬の耳に念仏]という格言なのである。要するに、聞き流した[スルーした]のである。^^
インフォームド・コンセントには[患者に不安を与えないように明るく説明しなさい]とは書いていないようですが、検査が終わったあとの面談は、患者さんに不安になる雑念を湧かさない明るい接遇の方がいいようですよ。^^
完




