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モノクロの君に捧げるモノローグ  作者: 花式カイロ
一章
36/61

14-4

「——ということは、元々あの大型異形が二体いて、子分? を使って私達を始末しようとしたものの、失敗したため自らが前線に出ることに。結果として、現状が出来上がった、ということですか?」


 道中でお互いの出来事を擦り合わせよう、ということになってから十数分。ヴァイスの洒落にならない失言によって生まれた微妙な空気は名残を見せないまでに消え失せ、いつも通りの平和な雰囲気へと戻っていた。


 そして話し合いを進める中、三人で一つの仮説を導き出したのだ。

 それは、「大型異形二体を筆頭に形成された異形の群れが発生し、ファタリアに被害をもたらしていた」という仮説。

 そこに行き着く中で、各々が浮かべていた疑問にも思考を巡らせて三人で納得する答えを引き出した。


 まず、森に入った際にスティル達が感じた魔力は十中八九、二体の大型異形のものであろうということ。

 そこから派生の疑問で、何故スティルとノワールは大型異形の魔力を曖昧にしか認識できなかったのか、というもの。事実、四人の中で最も魔力感知に優れているノワールがはっきりと感知出来なかったのだから、それなりの理由があるはず。

 それに対して一つの考えを述べたのはスティルだった。


「今回戦った異形は一回も〝魔法〟を使いませんでした。たまたま使用しなかっただけかもしれませんが、群れの形成のこともありますから、何とも言えません……ともかく、魔法を使わないことで自身の魔力を極限までに抑え込み、感知の目を掻い潜ったのかもしれません。知能は高かったようですし」


 とのことだった。それから念を押すように「私達の魔力感知は、万能というわけでも熟練というわけでもありません」と言っていたので、それも一つの要因として考えた。


 それから、異形を捜索しに行ったスティルとディアンはまだしも、それを目的としていなかったヴァイス達までもが大型に遭遇した理由。

 これについては運が悪かった、としか言えない。

 ニーファというイレギュラーがいたことによって、四人が分断されてしまったのだ。あとはそれに異形もフォーメーションを対応させるだけ。

 生憎、異形側も魔力の感知は可能なためそれが出来るのだ。結果勝てたことは幸いである。


 そして最大の謎である、群れの形成。一応、「狼型の異形だったために群れを形成する習性も似たのでは?」という仮説が一番可能性があったが、それでも理解は出来なかった。


 どこがあっているのかも分からないし、もしかしたら全て間違いかもしれないが、そうして三人は今回相手した異形達と、それに関する疑問に彼らなりの回答を示した。



「——! 〜〜、……〜!」


 そうして歩いている三人の耳に、何か言い争っているような声が薄らと聞こえてきた。皆一様に首を傾げていたが、声の主にヴァイスはいち早く気付く。


「ニーファさん?」

「えっ?」


 ヴァイスの言葉にスティルは驚いたような声をあげる。

 ここに彼女がいるということは、言い争っている相手は当然ノワールのはずだ。

 すぐに駆けつけるべきなのだろうが、言い争いの内容が気になってしまったヴァイスはその様子を覗くことにした。ギリギリまで近付いて、そばにあった木の影に隠れる。


「ちょっとお兄様……!」


 小声でそう呼びつけるスティルに対し、ヴァイスは人差し指を立てて「静かに」とジェスチャーする。

 彼は不服そうな顔をしていたが、ディアンもヴァイス側に行ったことで人数不利になったため、諦めて同じ行動をとった。


「酷いですよ、仲間を見捨てるなんて!」

「いや、見捨ててないけど……」


 予想通り、彼女が言い争っていた相手はノワールだった。

 ノワールが消極的だったため、言い争いというよりニーファが一方的に彼を責めているような図になっている。


「もうずっと戻ってきませんよ!? きっとヴァイスさんに何かあったんです! ああ、もしものことがあったら……」

「あの子は死なないから大丈夫だってば……」


 今日が初対面だというのに、ニーファは健気にもヴァイスを心配する言葉を放っていた。

 それに対し、ノワールは酷く冷ややかだ。ただ彼もヴァイスの特異体質を知っている人物だったので、仕方のないことでもあった。


 ここは両者のために自分が登場してやるべきだ。ヴァイスはそう思ったが、それと同時に少しの野次馬精神が湧いてくる。

 悪戯っ子のように笑みを浮かべて、よしと意気込んでから控えめに一歩踏み出した。


「その見捨てられた仲間っていうのは、僕のことかな?」


 首を傾げながら、わざと棒演技をしているように見せかけて言う。

 ヴァイスのことを視認したニーファは、薔薇柘榴の瞳をこぼさんとばかりに瞼を開き、口をぽかんと開けていた。

 そのうちに眉を頼りない程に下げ、その赤紅の瞳を潤わせながらこう言った。


「生きてる〜〜っ!!!!」

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