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頸を切られて倒れ込んだ異形を見ると、改めてその大きさがよく分かる。こんなのをよく単騎で討伐したものだと、ヴァイスは自分自身を労った。
後片付けをして、その後にディアン達の様子を見に行こう。
そう思いながら足を進めようとして、ヴァイスはふらつきどさっとそのまま膝をついてしまった。
「っ、ゔぅ゙、っぐ……い゙っ、あ゙ぁぁ……‼︎」
心臓あたりを押さえて苦悶の声を漏らす。地面についた方の手を強く握り締めた。地面を数ミリ抉るまでに力は込められ、それによって礫がヴァイスの手を傷つけるがその傷も瞬時に消えていく。
瞼を狭めたことで悪くなった視界の隙間から、ヴァイスはその光景を痛みを紛らわせるように見つめていた。
「……っ、はぁ! はぁ、はっ……」
そのうちに痛みもマシになっていき、ヴァイスはのろのろと体を起こす。額にじわりと滲んだ汗を拭って、一際大きく深呼吸をした。
右手を強く心の臓に押し当てる。生々しく命を感じさせる鼓動が、まるで直に触れているように伝わってきた。気持ちが悪い。
この身で感じた痛みと、傷の一つもない今のこの体。
釣り合わない情報に苛立ちを覚えながら、ヴァイスは再び立ち上がった。
ヴァイスの再生は大抵の怪我なら治してしまえる対応能力はあったが、それでも万能ではない。その名前の通り、再生の能力のみを持っているだけで、痛覚を消してはくれないのだ。
怪我の程度にもよるが、ヴァイスはこの能力を行使しても、体が感じる痛みから逃れることはできなかった。
「本当、嫌になるなぁ……」
元から血の気が全くないような白さであったヴァイスの肌は、気疲れから更に青白さが増している。怪我の治りを実感するために、左肩から右の腰の上あたりまで指でそっと撫で、そしてそのまま小さな拳を力強く握り締めた。
その時脳裏に過ったのは、「僕にとっては大事さ」と宣ったノワールのあの、悲しむような顔だった。
しばしの休憩を終え、再生を行使したことによる疲労も無くなってきた頃、森の奥へと向かう方から僅かに魔力の揺らぎを感じた。一瞬の間を置き、ディアンとスティルのことを思い出す。
——二人が向かった方向だ。
ヴァイスが感じる程のその大きさは、けれど誰のものかまでは分からない。
だがなんにせよ、この状況から彼らも自分と同じく異形と戦っているのだと推測できた。それならば、するべきことはただひとつ。
トンっと軽い音を響かせて、ヴァイスは走り出した。




