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モノクロの君に捧げるモノローグ  作者: 花式カイロ
一章
3/61

1-2 対異形人工亜人

 さてと一息ついたところで移動を始めようと振り返る。一歩踏み出そうとして、不意に動きを止めた。

 雲一つもないのにパチ、パチと目先で稲妻が走る。

 異様な光景を目にしたヴァイスだが、その眉はミリ単位も動かない。むしろ見慣れたように観察しながら腕を組んだ。


「いるなら来なよ」


 遠くに呼びかけるようにして声を出す。あたりは風と小鳥が囀る音のみが奏でられている。

 数秒して、静寂を切り裂くような轟音が響き、ヴァイスの立つ寸歩先あたりの場所に雷が落ちた。焼き切れた雑草と立ち上る煙。

 それを掻き分けるようにして、一人の少年が現れた。


「やっぱバレるよね」


 揺れる黒髪と鈍く光る黄金色。ハイライトのない瞳とは真逆に、愉快げに作られた笑み。薄い唇からは軽いトーンで言葉が発されていた。


 その濡羽色の少年の名はノワール。歳はヴァイスより二つ上の十二歳。ヴァイスと同じく人工亜人であり、同じ地区を巡回しているその他数人のうちの一人だった。


「よく言うよ。あんなわかりやすく雷なんか出しちゃってさ」


 呆れたようにヴァイスは言う。ジト目で眼前の少年を見やれば、誤魔化すように微笑まれた。

 その顔に少しのイラつきを感じたが、冷静さを取り戻すようにヴァイスは一つ咳払いをして。そしてノワールに向き直った。


「それより、お前さっきまで向こうで見回りしてたじゃん。なんでこっちに来たんだよ。というか、他のメンバーは——」

「一気に質問しないでよ。一つずつ説明するから」


 捲し立てるヴァイスに嗜めるような声をかけた。ヴァイスは口を噤み、説明を待つようにして後ろ手を組む。

 ヴァイスのその様子を見てノワールは満足したように頷き、両手を使って一と二を表した。


「ここの地区、今日は異形の魔力があまり感知されていないんだってさ。だから、そんなに広範囲を巡回しなくても大丈夫だ、って言われたんだよ。その代わり見回りは二人一組でするようにって言われたから、君と僕が組むことになった、ってわけ」


 分かった? と最後に付け加えられて、ヴァイスはへぇ、と答えた。その後に、あっと声をあげる。


「じゃあ、他の二人には誰がつくの」

「それぞれ先生がつくから大丈夫だって」


 その質問を予想していたように、ノワールは間を置かずに答えた。ヴァイスは不服だとでも言う風に、えーとぶすくれる。


「なんで僕たちだけ新人同士の組み合わせなの〜? あいつらずるいー」


 聞き分けのない子ども——実際に子どもではあるが——みたく文句を垂れ、他の二人(・・・・)を羨みながら手足を揺らす。

 それを見たノワールは、小さく笑みをこぼした。


「まぁまぁ。きっと、僕たちなら先生がついてなくても大丈夫って判断されたんだよ。つまり信頼されてるってこと」


 口元に人差し指を当てて、ノワールは悪戯っぽく微笑む。そうすればヴァイスの表情は見る見るうちに明るくなっていき、意気込んだような表情を作った。


「信頼……ならそれに応えるためにも、見回り業務頑張らなくちゃ! ね、ノワール!」


 握り拳を作ってそう言ってみせる。

 素直を体現したようなヴァイスの姿を瞳に映したノワールは、瞼を細めて静かに微笑んでいた。

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