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モノクロの君に捧げるモノローグ  作者: 花式カイロ
一章
23/61

番外編1-1

九話の後のディアン視点のお話です。

 重い足取りで廊下を歩くディアンを励ますみたく、窓から強い日が差し込んでいる。頭痛を発症した体には、その励ましはほんの少しだけキツかった。

 あまりの眩しさに目を細めれば、自動的に眉間の皺が濃くなった。

 これでは「顔が怖い」と言われるのも無理はないなと、どこか自嘲気味なことを考える。咄嗟にディアンを強面いじりする弟たちの顔が浮かんで、まぁいいかなんて思った。




 自室に戻ったディアンは、ヴァイスに宣言した通り昼寝を堪能することにした。

 簡素な作りの自室は方角にだけは気を遣っているのか、程よく日が差し込む。偏頭痛は別として、元から暑がりなディアンにとってはありがた迷惑だが、既に決められている部屋割りに文句を言うのはお門違いなのだろう。

 そうやって毎日諦めて、太陽が高い位置にいるにも関わらず、逃げるようにしてカーテンを閉めるのだ。

 代わりにつけた魔力灯を、細かな調節を繰り返しながらベストな明るさにした。魔力をいじって常夜灯みたく暖色にしようかとも思ったが、それだと気分が塞がりそうだったのでやめておいた。


 不意に思った。魔法だけでなく科学も発展したこの世界で、どうして今もなお寮内の明かりは魔力灯で統一されているのだろう、と。電気という、リモートコントローラー一つで点灯や消灯だけでなく、光量や色まで操作できる利便性に富んだ家電は、今や異界中に普及しているのに。


 そうして頭の中だけで文句を垂れている最中に思い出した。科学が急速に発展したのは、歴史上ではここ最近のことなのだと。ならばそれよりもずっと歴史に重みのあるであろうこの寮が、科学よりも魔法を贔屓にしているのは極々当たり前のことなのかもしれない。

 そう考えると、〝ディアン〟という存在がこの世界の中でどれだけちっぽけなのかを思い知らされるようだ。

 表には決して出さないが、この哲学じみた思考を身内に共有した場合のことを想像してみる。……イマジナリー兄弟たちは全員「意味が分からない」という顔をしていた。


 もう少し成長したら、きっと寮を出ることになるだろう。そしたら次にマイハウスとなるところは、明かりが全て電気なら最高だと思った。


 偏頭痛を悪化させるような思考はここいらでやめるとしよう。ディアンはベッドに転がり、ブランケットを自分自身に雑にかける。そんな時、休息を阻害するみたく、また一際強く頭が痛んだ。

 うざったいけれども慣れている。

 だから最近は、血が流れてるって感じがするわ、などと呑気なことを考える。そうでもしないとやってられなかった。

 実に面倒な体の不具合を、諦めるみたいに目を閉じた。



 少し眠るだけのつもりが、かなり寝込んでしまっていたらしい。空腹で目が覚めた時には既に数時間が経過していて、夕飯時になろうとしていた。

 自分自身に呆れるようにしながら、ノロノロと体を起こす。頭痛は改善されていた。


 ふと支給端末に目をやる。メッセージの通知がいくつか溜まっていて、なんだと思いながら重なった通知からメッセージアプリへと遷移した。


『おやつ食べた! ディアンにもお土産あるからね』

『頭痛、よくなりました? あまり頻繁に起こるようなら、一度診てもらいなさい』

『まだ寝てるの? 僕たち、夕飯は外で食べるからね』


 ヴァイス、スティル、ノワールの順に送られてきている。なぜか全部グループチャットの方に送られていて、三人とも自由すぎるだろと思った。わずかに上がった口角を、ディアン本人は認識していない。


『今起きた。俺はぼっち飯するわ』


 無感情で打ち込んだ文章を送信した。そのまま電源を落とそうと思ったが、即座に既読がついて思わず手が止まる。

 一つだけついた既読が誰なのかを考えるのは、ついついやってしまうことだった。


「……ふはっ」


 無言で送られてきた画像に思わず吹き出す。長方形に切り取られた枠内に、三人分の食事とピースサインが写っていた。

 ヴァイスはともかく、スティルやノワールがこんなことをするのは珍しい。だがそう考えた瞬間に、そもそもの発案がヴァイスなのだろうと一人で納得した。


 なんとコメントするか迷い、結局「美味そうだな」という陳腐なものに落ち着いた。

 これから食事ならわざわざこんなメッセージに返信は来ないだろうと思い、今度こそ端末の電源を落とす。そしてディアンも食堂に向かおうと自室を後にする。昼間とは打って変わって、羽が生えたような軽い心地だった。

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