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モノクロの君に捧げるモノローグ  作者: 花式カイロ
一章
2/61

1-1 対異形人工亜人

 この作品には大量の出血・欠損・キャラが激しい苦痛に襲われるシーン等の残酷な描写があります。ご注意ください。

 物語の本筋と関係はありませんが、HLほかGL、BLなどの描写を含みます。それほど濃く描写するという訳ではないので、「3Lの描写がある」ということを把握していただければ幸いです。

 昔々、そのまた昔。異界という場所はとても穏やかな魔力に満ちていた。異界人たちはともに笑い、動物たちはのびのびと過ごし、個人個人が自由に生きる。

 正に平和と自由を描き写したようなその世界のバランスは、ある日突然崩れ去った。


 異形。魔力を生命源とし、生きるために他の生物を食い殺す化け物。

 突如現れ、瞬く間に溢れかえったそれが異界の脅威となるのに、そう時間はかからなかった。


 異界人たちは絶望した。魔法もろくに効かない未知の化け物。異界の生物は減らされていく一方。

 誰もが諦観していた中、異界に存在する五つの国のうち「亜人ノ国」の研究者たちは、異形と渡り合うべく死力を尽くした。


 戦いの最中研究を重ね、ついには異形に対抗しうるとある“もの”を造り出した。

 「亜人ノ国」に住む魔法使いと魔女。彼らをオリジナルとして生まれた者たち。彼らは高い戦闘力と豊富な魔力、そして他の種族とは違い異形に対して致命的なダメージを与えることができる特異性を持っていた。

 救世主とも言えるその者たちの誕生に、人々は驚き喜んだ。


 生き物全ての脅威となる異形を、いつかその者たちが殲滅してくれることを人々は祈った。

 どれだけ長い時をかけても、その過程でいくつもの犠牲があろうとも。たった一つの希望を抱きながら、人々は歪んだ世界で生きていた。


 異形殲滅の希望の星。実に重い責務を背負った彼らは、いつしかこう呼ばれるようになった。


 ——総称、対異形人工亜人。



 気温がちょうど上がり始めた昼下がり。一筋の生温い風に頬を撫でられ、なんとなく居心地の悪さを感じたヴァイスは袖で顔を乱雑に拭った。

 その行動が終わってから、つまらなそうに溜息を一つ吐く。極々平和な空気が、白皙の少年を包んでいた。


「……暇だなぁ」


 風に靡く草木を視界に入れながら、無意識のうちに独りごちた。辺りを見渡しながら、時折場所を移動して日々の業務である見回りをこなす。

 とは言ったものの、何も起こらなければヴァイスのすることは当然ない訳で。手持ち無沙汰に少しサイズの大きい制帽をいじりながら、草原を踏み締めた。


 ヴァイス。白の名を冠した対異形人工亜人の少年。この世界を危険に晒す化け物——通称異形を殲滅すべく生み出された人工的な亜人。

 推定五歳ほどの肉体と精神を持って目覚め、そこから五年が経ち現在十歳。

 今日も今日とて小さい体を一生懸命動かして、自身の責務を果たしていた。


 二十分ほどして、ヴァイスは見晴らしのいい高台に来ていた。

 少し先を見てみれば、ヴァイスの住んでいる「亜人ノ国」の中央都市部が見えた。土地に敷き詰められるようにして建てられた建造物、それに囲まれるようにして構えられた王家の城。

 遠くから見てもわかる豪華な装飾に、ヴァイスは思わず目を細めた。


 一つ瞬きをして少し視線をずらす。そこにはヴァイスの住居である寮が建っていた。視認した直後に溜息を吐いて、自らの足元へと視線を下す。


「帰りたいな……」


 ぽそりとヴァイスは呟いた。

 人工亜人たちの業務の一つである見回りは、基本的に週替わりで場所が指定されている。ただし、その指定に規則性は特にない。完全ランダムだ。先週は近場だったのに、今週はかなり遠い地区を指定されることなどざらにあることなのだ。


 そして今週はヴァイスとその他数人が“遠い地区”を指定されていた。

 朝早くから持ち場に着くためにやってきて、帰りは見回りで疲れた体に鞭打ってなんとか帰る。そんな日々が一週間も続くと思うと、憂鬱極まりなかった。

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