継母と異母妹
継母と異母妹は転生令嬢の定番ですよね。まぁ何もしませんが。
翌年の冬、お母様が亡くなった。
風邪を拗らせて、肺炎。そのまま儚くなってしまった。
それから半年ほどが過ぎ、お母様のいない生活に少しは慣れてきたこの頃。
「アリーチェ、明日新しい母親が来ることになった」
朝食の席で、お父様がそういった。
「新しいお継母様ですか」
「そうだ。妹も出来る。少しはさみしくなくなるだろう」
「そう、ですか」
まだお母様が亡くなって半年だというのに。
いえ、夢の中では最短3ヶ月ほどで再婚できると法律があったはずですし、半年は良心的なのでしょうか。あら?男性は関係なかったかしら?
そして、妹……。
「妹と言うのは、お幾つほどで」
「たしか、お前の一つ下だったか」
「……そうですか」
実母が亡くなって後妻が屋敷にやってくる。妹付きで。
あらら?これは夢の中のお話でよくあるパターンですわね。
野心ある継母と異母妹が正当な後継者を虐げ、ヒーローがざまぁしてくれるシンデレラストーリー。物語的によくある王道展開ですわ。
という事はもしかしてヒロインを苛める悪役令嬢モノのお話しの世界へ転生してしまったという事なのでしょうか。その場合、最後は継母と異母妹はざまぁされてしまいますし、お父様も爵位返上で最悪皆さま処刑なんてことになってしまう場合もありますわね。
別にそんなこと望んでおりません。なんとか継母や異母妹と仲良く出来ればいいですわね。
あら?そもそもまだ異母妹と決まったわけではありませんでした。早とちりはいけません。
お母様とお父様は本当に仲が良く、政略ではなく恋愛結婚だったのではないかと疑うほど。ですのでお父様が不貞を働いていたとも限りませんわ。
周りの親族がうるさいから良さげな寡婦を見繕ってきたなんてことかも知れません。
「楽しみですわ」
「……そうか」
少しばかり顔色のよろしくないお父様との食事を終え、明日を楽しみに過ごすのでした。お疲れでしたら少しは休んでくださいね、お父様。
◇
「初めまして、アリーチェ様。元ボルベロ男爵の娘セレナでございます。本日より宜しくお願い致します」
「ぷ、プリムラです。よろしく、お願いします」
翌日の正午を過ぎたころ、2人の女性がわが家へやってきた。
赤褐色の豊かな髪に豊満な体つきをした美女とお父様にそっくりなアンバーの髪の小柄な少女。
綺麗なブロンドで華奢なお母様。そんなお母様にそっくりな見た目の私。
決めつけはよくありません。わかってはおります。ですが、きっとアンバーの少女は私の異母妹なのでしょうね。
「……お父様はもうじきお戻りになるかと思います。先にサロンでお茶でもいただきましょう」
内心の動揺など欠片も見せず、優雅な笑みでお2人をサロンへとお連れする。
これでも侯爵令嬢ですもの。これ位の事が出来なくてどうしますか。
あら、セバスチャン。如何なさいましたの?え?案内はメイドにお任せください?……確かにそうね。私がやることではありませんでしたわ。
まぁ、そういうこともありますわよね。気にしたら負けですわ。
ブロンド:金髪 全世界における自然の金髪の人の割合はおよそ1.8%程度(地球では。異世界は知らん)
アンバー:琥珀 くすんだ赤みのある黄み寄りのブラウン
赤褐色:赤みを帯びたオレンジ色。赤の彩度が落ちたちょっと暗いオレンジ
継母:父の妻。自分とは血のつながっていない母親
養母:養子先の母親。養育してくれた義理の母親
義母:義理の母。多くは配偶者の母親のこと。養子先の母・育ての母である養母や、父の妻で血のつながりのない継母を指すこともある