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第一話 わたし、アナタのことがキラいです。


 その街には小さなお花屋さんが有る。

お店の前に大きな緑色のパラソルを広げ

色とりどりのお花の鉢植えがその下に所狭しと咲き乱れ

まるで、花畑の中にある小さなお城の様


お姫様のような店員さんがニコニコ微笑みながら

いつもお花のお手入れをしている。

いつか立ち寄ってみたいと思う花の国




わたしは今日も“いつもどおり”その前を通り過ぎる・・・






- flower -






 制服のリボンを整え、かばんを持って部屋の入口、姿見の前に立つ。

気になった前髪を人差し指で整え、スカートのプリーツを右手でひと払い

変なクセを直し、今朝も“いつもどおり”鏡の中の自分と改めて向き合う。


「んーよし! 今日もカワイイっ。いつもどおり」


 ひと気のないリビングを抜け、まっすぐ玄関に向かう。

玄関に一番近い部屋のドアをノックして出かけることを伝える

これもほぼ、いつもどおりのルーチン。


「ママー、行ってくるねー」

「って、起きてるのかな・・・まぁいいか」


「はっ!──────あいぃー。いってらー」

「あ、ハナー!! 帰りに牛乳と卵買ってきてー」


「あのねママ、少しは外に出たほうがイイよ気分転換に」

「根詰めておしごとばかりして。どうせまた熱出すんだから!」

「熱出て甘えてきても──────無視するから」


「えっ、酷っ!」


 わたしのママは所謂絵描きさん。

わたしを育てながら仕事を続けるためにって勤めていた制作会社を辞めて

フリーランスのアニメーターとして在宅で仕事始めてからもう10年位に

なるけれど、アニメギョーカイの単価は年々安くなったて言って

仕事量を増やすからほぼ毎日デスマ状態で家に籠もりきり。

そんな無茶してるから、たまに熱を出す。


見ていられなくて、去年わたしが進学を諦めて就職する話をしたら

本気で叱られた。一人で抱え過ぎだよ・・・ママ



「わたし帰りに病院寄ってくるね」

「お買い物はお散歩がてらに行って、おねがい!」


「うぅー、頑張ってみるぅ。いってらっしゃいハナ」


「いってきます!」


 下駄箱に片手を突いて体重を預け、履いたスニーカーの右足の爪先を

トントンと二回突く。傘立ての横に立て掛けたテニスラケットと学校指定の

カバンを担いで家を出る。



 最寄り駅まで歩いて約10分。

私鉄で政令指定都市の中心駅で下車。少し離れた地下鉄駅までの道すがらに

気になっているそのお店は有った。朝の通学時間には、地下鉄駅まで続く

すずらん通りもシャッターがほとんど降りていて、その憧れのお店も他と

変わらず今朝も閉まっていた。

朝の七時半だもんね。


 でもたまに、シャッターが1/3ほど開いてる時があって

お花屋さんなのに、朝が早いのかな? なんて思った・・・


今日もそのシャッターが降りた眠れるお花の国の前を通り過ぎ

いつもの地下鉄駅にたどり着く。



 改札にスマホをかざして、いつもの時間のいつもの車両に乗るために

いつもの()()()()通勤通学客の顔ぶれと一緒にホームドアの前に並ぶ。

まもなく滑り込んできた急行に乗り込んで、いつもの見知った顔を見つけて

側に寄る。派手なグリーンのラケットバッグを担いだ幼馴染の男子

朝の挨拶にと、その背中をぺしりとはたいて、隣のつり革に手を伸ばす。


「いて・・・ よ、美住。手首の具合どうだ」

「おはよ明日太、──────良くはない・・・かな。帰りに病院行く予定」


「ふーん、そっか。まぁ無理するなよ」

「うん・・・ありがと」


 幼馴染ってさ、どうしてこうやって余計なお節介言うんだろうね!

ワタシ的に結構センシティブな話題なのに──────



 中学から本格的にずっと続けてきたテニス。

この怪我で出来なくなる訳じゃないんだけど、なんとなく続けてきちゃったのを

辞めるいいキッカケなのかなとも思う、受験もあるし。

そんなで今チョット悩んでる所なのにさ・・・明日太のバカ!


「おはよーハナちゃん、アスタ君!」

「おはよあみー」


「富田おまえリボン曲がってるぞ」

「あ・・・ほんとだ。えへー、マリみてみたい」

「──────なんだそりゃ」


 わたしが乗った駅から二駅先、親友のあみが乗り込んでいつもどおりの

顔ぶれが揃った! 今日もまるっといつも通り。

安心安心・・・



 その後も()()()()()()に時が進み、学食でいつもどおりの

カレーライスを食べて、いつもどおり苺ミルク味の紙パックジュースを飲んで

いつもどおり帰宅部のあみを昇降口で見送って、いつもどおり部室に顔を出す。


 病院へ行くために部活を早退する旨を部長に伝えて、いつもどおり軽く

コートに出て、早退。着替えを済ませスニーカーの右足の爪先をいつもどおり

二回地面に突いて部室を後にした。



でも──────

“安心いつもどおり”はそこで終わった・・・



 地下鉄を降りて、家と反対方向の病院へ向かうため、政令指定都市の

中心駅へとすずらん通りを朝と逆に歩く。まもなく見えてくる大きな緑色の

パラソル。その花屋さんの、お姫様みたいな店員さんがパラソルと同じ色の

エプロンをして如雨露でお花に水やりしていた。


 都市の真ん中、ビル群の中に突然、まるで絵本の世界が現実になって

現れてしまったように錯覚する。このお店だけが灰色の街の中で鮮やかな

彩りを湛えていて、お姫様が振りまいた魔法が花々の葉にのった小さな雫に

夕日が反射してキラキラ輝いている・・・


そのあまりにもステキで、キラキラな光景に思わず足を止めた。


「キレイ・・・あ、可愛い。なんて名前のお花なんだろう」


 パラソルの下に四角いケースいっぱいに並べられている

小さな花を手に取ろうとしゃがみ込む。これは赤紫、こっちは薄桃色に

これは白。小さく可愛い花が咲き乱れたそのカラフルな花畑に

手を伸ばした。


「あれ? 鉢植えかと思ったら違うんだ・・・」


 黒いフニャフニャの器に入った薄桃色の花を手にとった・・・

その時、横から突然突き飛ばされるような衝撃に、そのまま濡れた地面に

咄嗟に手を付いた。痛む方の手を──────


「やっ、痛ッ──────!」


 これから病院で観て貰う右手を突いてしまって手首に痛みが走る。

右手首を掴んで見上げるとそこには、お姫様と同じエプロンをして、黄色い

お花がいっぱい詰まったケースを手にした男の人が、わたしを見下ろしていた。


「悪い、ゴメン。見えなかった! 大丈夫か? ホラ」


 そのケースを地面に置いて、手首を掴んでしゃがんでいたわたしに

彼は真っ直ぐ手をのばす。このお店の人・・・なのかな?


きっと、抱えたお花でわたしが見えなかったんだ・・・

でも、どうしよう。ご厚意は有り難いけど・・・わたし、その手はとれない


「ご、ゴメンさない! わたしこそ邪魔してしま──────」

「あ──────・・・」



 痛む手首を押さえていた左手。

彼の差し出された手に思わず差し伸べてしまって、あわてて引っ込めた

左手を、彼がそっと掴んで、わたしを引き上げた。力強くて、でも優しくて

あったかい彼の手。


「よっと・・・大丈夫か? 怪我してないよな・・・」

彼に手を引かれ、ふわりと浮かぶように立ち上がってしまう──────


 知らない男の人の大きな手。

いつもなら、突然手を掴まれたなら・・・悲鳴を上げるほど怖いはずなのに


 何故かこの時はそんな事もなくて慌てて彼の手をはなして

痛む手首を胸の前で掴み直した。


「痛いのか、──────手首、もしかして痛めた?」


「ち、違います・・・これはテニスでその・・・してしまったので」


「・・・そっか、なら良かった。制服、ドロで汚れなかったか?」

「これ使って。用が済んだら捨てちまっていいから」


 そう云うと、その男性は赤いペイズリー柄のバンダナをエプロンの

ポケットから出し、わたしの頭の上にポンと置いた。


 わたしを助け起こすために地面に置いた重そうなお花ケースをひょいと

軽々持ち上げて・・・


「あと、ソレ気に入ったんならあげるよ、お詫び」

「バーベナって名前」


ただそれだけ言い残して、その彼はお店の方に向かった・・・


「ゆうこさーん! 配達の品って、これ1ケースだけー?」

「配達伝票はー?」




ドキドキしてた・・・


 男性恐怖症のわたしが、どうしてあの人には

恐怖を感じなかったんだろうって。バーベナを持ったまま、忙しそうに

お花のケースを運ぶその男性を思わず追ってしまう。


 小さな古いトラックの影へと姿が見えなくなるのを呆然としながら

お店の前まで追って、見える角度までゆっくり歩んでしまう。

トラックの後ろに見えた彼は、そのまま向こう側の側面に回り込んで

見えなくなり、運転席に横顔が見えたけど、すぐにそのトラックで

走り去ってしまった。


唖然としちゃってた。自分でもよく分らなくて・・・

突然の出来事で、彼にお礼も言えてなかった。


「ごめんなさいね。彼、忙しい人だから・・・大丈夫だった?」


 その声に振り返るとお店から出てきた憧れのお姫様みたいな店員さんが

思わず両手で持ってしまっていた薄桃色バーベナを小さなビニール袋に

入れてくれた。


「カスミくんがね、あなたにあげてって」


「──────いえ! あ・・・あのわたし、お金払います!!」


 あわててブレザーのポケットからお財布を取り出そうとして

手にしていた彼のバンダナを落としてた。そんな私にお姫様が微笑みながら

バンダナを拾い上げてバーベナと共に手渡してくれた。


「いいのよ、ぶつかっちゃってごめんなさいね・・・」

「あ、いらっしゃいませ、贈り物をお探しですか──────」


 お店に入るお客さんを見留て、お姫様はお店に戻っていった・・・


 お姫様以外にも、何人かのかわいい店員さんが忙しそうに働いている

夢の国みたいな憧れのお店に後ろ髪を引かれながらも病院の予約時間が迫り

わたしは仕方なくその場を後にした・・・


 ドキドキしながら私鉄に乗り、わたしは自宅マンションとは逆方向の

病院へ向かった。バンダナとお花の入ったビニール袋を手にして。



 常にいつもどおりのルーチンで安心を得ていたわたしにとって

憧れのお花の国での一件は、いつもどおりではないキラキラをわたしに齎した

混乱? 憧れ? それとも、もしかして──────ううん、それは無い



そんな事を思って歩いていると、いつの間にか病院へたどり着いてた。


 診察の順番待ちで待合室の椅子に座りながら、バーベナとバンダナ

に視線を落とす・・・。カスミさんって言うんだあの人──────。

彼もそうだったけどお店のキレイな店員さん達も、私やあみ、明日太と

違った時間感覚で生きてるような気がした。


社会人って、みんなそうなのかな・・・


 一心におしごとに向かい合っていて、忙しそうにしていてもどこか

余裕があって、みなさんキラキラ輝いて見えた。それはまるで、コートで

ボールを追っている時のわたしや明日太。

部員の皆んなのようなキラキラで・・・


「美住 はなさん、診察1番へお入りください」


 突然名前を呼ばれてドキっとした。

彼のバンダナをブレザーのポケットへ仕舞い、バーベナとラケットケース

を手にして診察室へ入る──────



「痛っ・・・」


「ふーむ、痛いですよね」

「では一緒にきらきら星しましょう、さぁハナさん私の真似して」

「キーラキラ光る──────」


「キーラキ、いたた・・・」


「はい結構です。そうですね──────」

「MRIの結果と身体所見で観る限り間違いないでしょう」

TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷です。」


「やっぱり・・・そうですか」


 テニスの有名プロ選手でもこの障害を抱えてる人がいっぱい居る。

プロ選手は職業病みたいなもんだって話では聞いていたけど


わたしは? このままテニスを続けてプロを目指すつもりなの?


「ハナさんは3年生でしたよね? テニスはしばらくお休みして」

「学業に専念するのも有効な治療法だと思いますよ」


「・・・・・・はい」


「幸い、痛みが出てはいますが難治性のTFCC損傷ではないようです」

「手首のオーバーユーズを控えてすこし様子を見ましょう──────」


 やっぱり・・・そんな気はずっとしてたんだよね、お母さんがあの人と

別れてから、わたしに打ち込める物をってテニスラケットを買ってくれた。

それからずっと続けてきたけど、この道を極めてプロになるつもりは

たぶんわたしには無いと思う。


 そんな事を思いながら、3階のカウンセリングルームの待合で小さな

薄桃色のバーベナに視線を落としていると、名前を呼ばれこんどは二週間に

一度カウンセリングをして頂く精神科の先生に向き合う。


「さて、その後いかがですか?」

「えへへ、大人の男の人は相変わらず苦手です。お酒を飲む人は特に・・・」

「でも・・・実は今日──────」


 カウンセリングの先生に今日出会った彼の話をする。

その話をしながら、気付くとまたドキドキしている自分がいて少し──────


「フフっそうですか、手の方はいかがでした?」

「やっぱり、お話した障害が出てるみたいで、暫く休むように言われました」


「美住さんの場合、打ち込める物で過去の恐怖、トラウマを緩和することが

 薬に頼らずともご自分で出来ています、頑張っていましたからね」

「でもそれはテニスに限った事ではないですよ」


「恋や学業、そうアルバイトをしてみるのも良いかもしれませんね───」




 私鉄の駅を降りてトボトボと自宅に向けて歩く──────

SMSで確認すると、制作会社人が原稿を取りに来ていたみたいで

結局ママは家を出れずにわたしは途中のスーパーで卵と牛乳を買って

自宅にたどり着く


「ただいま・・・」


 卵と牛乳を冷蔵庫にしまう。

ちょうど部屋から出てきたママが、おでこにひえひえ君を貼ったまま

わたしの後ろでコップに水を汲んで、飲みながらわたしの肩に手を置いた


「おかえりハナ。元気ないわね、病院どうだった?」


「・・・うん、しばらくテニス休みなさいって」

口にしたらなんだか鼻の奥がツーンと痛くなって胸の奥から何かが

溢れそうに成って・・・


「──────はーな、おいで・・・」

「大丈夫よ、テニスが一生できなくなるわけじゃない。少しお休みしましょ」

「他に打ち込めるものだって、きっといっぱいある」

「また一緒に見つけよ」

「ね、はな」


ママがわたしの頭を抱いてくれて、少し泣けちゃった。


 自室に戻ってカバンとラケットを机の横に、机の上にバーベナを

置いて、ベッドに突っ伏す。枕元の大きなカワウソのぬいぐるみを抱き寄せて

テニスについて、いろんな事を考える・・・


 苦手だったあの人。お父さんなんて呼びたくもないひどい人。

あの人はお酒を飲むと粗暴になって、時には大好きなママに暴力を振るう時も

あった。わたしが小学3年生の時に離婚が成立し、裁判所の命令であの人は

わたし達の元を去った。


 でも、わたしは大切なママに暴力を振るう時の、あの人の顔と

大きなその声。あの時の恐怖がフラッシュバックするトラウマを抱えて

しまった。

 それ以来、大人の男の人とお酒を飲む人に対する恐怖心が抜けずに

今日のカウンセリングの先生とも、もう十年来のお付き合いになる。


 あの人が居なくなってから、たまにママと一緒に遊びに行った

市営のテニスコートで明日太達と走り回っている時、その恐怖は

ウソみたいに忘れられて──────

 それ以来テニスを夢中でやって来た。もちろん好きだから続けていたけど

それが・・・もう暫く出来なくなると思うと、途端に不安になる。


『恋や学業、アルバイトをしてみるのも良いかもしれませんね──────』


 カウンセリングの先生の言葉を思い出し、ポケットから突然渡された

バンダナを取り出して眺める・・・アルバイトか──────


 アルバイトの経験がまったくないわけじゃない。

以前家計を助けようと、ショッピングモールのバーガーショップで

働いたことが在る。でも部活との両立は難しく、バイト先でキラキラを

見つけることが結局できなくて辞めてしまった。


「ハナーご飯だよぉー。もーダメよ電気もつけないで」

「あら何これどうしたの、バーベナの苗物なんて・・・」


 ママが部屋の明かりをともして机の上の淡桃色のバーベナが入った

袋を覗き込む。そういえば、あのお店の人たち。

どこかみんなキラキラしてた──────


「ほーら、おいでハナ。ご飯食べよ、冷めちゃうよ」


 ママに手を引かれて部屋を出る。

大好きなクリームシチューの香りが漂う

あったかいリビングに、ペイズリー柄の赤いバンダナを

手にしたまま──────



 ママのシチューを食べ、お風呂を済ませて部屋に戻ってきたら

不安な気持ちが少し落ち着いた。机の上のバーベナ、ママに聞いた話だと

この黒くてふにゃふにゃの器はポット苗というものらしい。

明日、植え替え用の鉢を買ってこなきゃ・・・


 ベッドに寝転んでカワウソのぬいぐるみに抱き着いて

彼がくれた赤いバンダナを手に取る。どうしてあの人には怖さを感じな

かったんだろわたし──────


 バンダナを口元に寄せると、少しの彼の香りとたぶん煙草の香り。

明らかな男性の気配なんだけど、不思議と嫌な気がしない・・・


なんとなく、痛む右手首に彼のバンダナを巻いてみる。

少しだけ、不安な気持ちに立ち向かえるような勇気を貰えた気がする

でも──────うーん、可愛くない・・・


「あ!」


裁縫箱をミシン机に持ち上げて考えた。夜遅いのでミシンハンドルを手回しで

ペイズリー柄の真っ赤なバンダナを少し工夫した。


「ふふっ、これでよし。かわいい!」






- flower -






翌日──────


 下駄箱に片手を突いて体重を預け、履いたスニーカーの右足の爪先を

トントンと二回突く。傘立ての横に立て掛けたテニスラケットのケース

を手に取ろうとして伸ばした右手、昨日作った赤いお守りに気づく


「・・・・・・うん、決めた!」


結局カバンだけを手にとって、たぶんまだ寝てるママに声を掛け

少し早めに家を出る。


 私鉄を降りて、地下鉄駅に向かいすずらん通りを歩いていると

昨日キラキラなイレギュラーが起こった開店前のお花屋さんの前を通り過ぎる。


「・・・・・・そっか、もうすぐ母の日なんだ」


 シャッターに貼られた母の日ギフトのチラシに目が留まる。

その上に貼られた可愛らしい手書きのPOPにも・・・


 改札にスマホをかざして、いつもの時間より少し早いホームに降りて

ベンチに腰を下ろす。通勤通学客、全く知らない顔ぶれが乗り込む列車を

二本見送って、昨日寝る前に作った手作りのお守りごと痛む方の手首を掴む。

まもなく滑り込んできたいつもの急行に乗るために

わたしは決意を元に立ち上がる。


 派手なグリーンのラケットバッグを担いだ幼馴染の背中をはたいて

隣のつり革に手を伸ばす。

 

「おはよ美住、ラケットどした?」

「うん! わたしテニス辞める」


「──────は?!」

「おま・・・手首そんなに悪かったのか?」


「ううん、K選手とおんなじだって。出来なくなるわけじゃないけどさ」

「でもそうじゃなくてね、わたし達もう受験じゃん」

「明日太もさぁ、考えたほうが良いんじゃん? 将来のこと」


「あ、あみーおはよ!」

「おはよーアスタ君、ハナちゃん。わー! そのシュシュすてき。作ったの?」


「ちぇ・・・何だよ。俺に相談もなしに突然──────」



こうしてまた“いつもどおり”がはじまる。


でも、もうわたしは“いつもどおり”に甘えるのは辞めた。

新しい希望のキラキラ星を、もう見つけたから──────



 今日からわたしもあみと同じ帰宅部。

突然の退部届を渡された顧問の先生は、それはそれは驚いていたけど

受験の話をしたら納得はしていた・・・ごめんなさい急な話で


 帰りが一緒になったあみは大喜びで、さっそく遊びに行こうって

誘ってくれたけれど。今日は用事があると伝えて、コーヒーショップで少し

話して別れた。



 そして──────


 グリーンのパラソルが目印のお花の国、憧れのキラキラお花屋さんの

前に立つ。右手の手作りシュシュを掴んで、おまじないの大丈夫と一つ

呟いてうなずき、如雨露のお姫様に声をかける──────


「こ、こんにちわ・・・」

「あら、あなた昨日の、フフっいらっしゃい」


 昨日頂いたバーベナの話をして、お庭がないウチでの育て方を聞いて

素焼きの小さな鉢と鉢皿を買って、そしていよいよドキドキしながら

核心の話題を切り出したんだ。


「あっあの! 募集のポップを見たんですけど・・・」

「アルバイトさんの募集の? フフ、嬉しい。コッチに来て説明するわね」


 お姫様に手を引かれ、カウンター裏のバックスペースへ。

スタッフ以外入ることが出来ないその一線を越えた時、緊張と期待に

胸がドキドキ高鳴ってしまう。


「お花屋さんにとってね、母の日は書き入れ時、忙しいし体力もいるの」

「あなたスポーツをしてるみたいだからそこは心配ないわね」


 ビックリした・・・

このお姫様は切れ長な微笑みの瞳でそんなことまでお見通しなのかなって

履歴書にテニスをしていたって書いていないのに・・・

あ! わたし履歴書も持たずにいきなり・・・


「だって、昨日テニスラケット持っていたでしょ、フフっ」


そんなことまで覚えていてくれたんだ・・・



 募集は、母の日近辺の二周間の短期バイトだった。

実績次第では長期? 普通のアルバイトとして続けることも出来るみたいで

いわば試用期間みたいなものなんだって聞かされて、また少し緊張した。


 紅茶とおやつにと、なぜか出された歌舞伎揚げを頂きながら

たまに、お客様の対応をするためにお店に戻るお姫様をカウンターの奥から

覗き見た──────



 スーツのお客様と談笑しながら、ガラスケースの中のお花をたくさん

取り出して、みるみるうちに素敵な花束に仕立て上げた。ロール状の

色とりどりのラッピングシートから花束に合った色を選び出して

裁ちばさみでシュッと一太刀。


 ループのない花鋏を持つ手を、たまに口元に寄せてお客様の話題に

クスクス微笑みながら、カウンターの棚に設えた色とりどりのたくさんの

リボンのロールから、シュルリと引き出した真っ赤な帯をあっという間に

大きなリボン結びに組み上げて花束に添えた。


「すごい──────」


 ものの5分程で大きなバラの花束をこしらえて、スーツのお客様へ

お渡しした。お姫様はお札を何枚も受け取っ、ご・・・五万円ぐらい???


あみや明日太と過ごしていた世界とは全く違う大人の世界の出来事に

なんとなく気後れしてしまう──────


「ハナちゃんおまたせ、えーっと何処まで話したかしら・・・」

「す、すごいですね花束・・・」


「え、今の?・・・フフ」

「なんかね飲み屋さんの女の子、今日誕生日なんですって」


 憧れだけで飛び込んだお花屋さんの裏側を垣間見て、ちょっと怖気づく

わたしだったらお客様の対応だけで、きっといっぱいいっぱいになって

しまうと思う。なのに、このお姫様は相槌だけじゃなくお客様とちゃんと

お話しながらあんな素敵な花束を、あんな短時間でこしらえて──────


わたし、憧れだけで飛び込んで、本当に務まるのかな・・・

右手のシュシュを思わず握りしめた・・・


「ハナちゃん──────最初はね、誰も出来ない。大丈夫よ」

「母の日ウイークを通じてお花屋さんをチョットだけ体験してみて」

「続けるかどうかはそれから考えればいいんだから。ね、美住はなさん!」


そう声を掛けられて少しだけ安心した。


「おっつー。配達の花どれ?」

「カスミンおっつー、このアレンジ、港北病院だって──────」


 突然聞こえたその声を聞いて、胸が今日一番にドキドキした。

昨日のわたしを引き起こした彼に店員さんの一人が、お花の籠と伝票

を手渡しながらお話してるのを、カウンター奥から思わず見ちゃう・・・


 なぜか胸が苦しくなって手首のシュシュを握りしめていると

彼がすっとこちらに視線を向けた。ドキっとしてあわてて目をそらす・・・

でも──────


「たかっち腹減ってんだろ、笑顔が可愛くないよ」

「はい歌舞伎揚げ。んじゃ行ってくる。ゆうこさーん! また」

「はい、カスミくん行ってらっしゃい」


わたしには一切関心なさげに彼は店を出ていってしまった

気付いてなかったのかな・・・


「フフッ相変わらず忙しい。じゃハナちゃん、このエントリーシートと」

「あとこれ、履歴書ね。面接の場所はエントリーシートに書いてあるから」

「面接、頑張ってね」


 お花のお姫様は、大きな書類入れの封筒にそれを仕舞ってくださり

わたしに手渡してくれた。面接・・・きょうのお話じゃなかったんだ

なんて思いながらドッキドキのファーストインプレッションを終えて

わたしは帰路についた──────



「ただいまー・・・」

「ママー?」

返事がないのでママの仕事部屋を覗く。


「ううぅぅ・・・おかえりハナ、遅かったわね・・・」

「聞いてよー、マジ修羅場。明後日までに追加原画上げなきゃ」

「ねぇ今晩イーツでいい? 原画マン一人逃亡で全部アタシに回ってきた」


「うわー、なんでもいいよわたし。ママ無理しないでね」



 部屋に戻り、受け取った封筒から履歴書とエントリーシートを取り出して

憧れのお店の名前を今はじめて知った・・・


フラワーショップHANAFUKU


 封筒と、エントリーシートにそう記されていた。

履歴書とエントリーシートを書きながらイーツが届くのを待つ。

あのお花のお姫様、佐々見 ゆうこ店長。少しウエーブの掛かったキレイな髪の

店長さん。大きな花束を作りながら、キラキラ輝いていた。


お仕事は大変そうだけど、優しい店長さんみたいで良かった


 そしてバンダナの彼、カスミさん。いつも忙しそうで、今日は

一度もお話出来なかった気になる人・・・

男の人なのに怖くなかった人って、明日太以外には・・・はじめてかも

やっぱり彼も、キラキラしてた


 やっぱり、あそこにはたくさんのキラキラが溢れてた・・・

不安もいっぱいあるけど、取り敢えず二週間頑張ってみようと思う。


「ハナーご飯来たよー食べよ、もうアタシお腹ペッコペコ」

「いまいくー、あのねママ、実は話したいことがあるの──────」






- flower -






面接の日──────


 土曜で学校が休みの日だけれど通学路を歩く。

すずらん通りのお店に差し掛かると、店長のゆうこさんが私に気付いて

店内に声を掛け、お店の皆さんが手を振ってくれた。

照れながらペコリと頭を下げて通り過ぎ、学校へ向かう地下鉄の上り線で

学校とは逆の二駅先にHANAFUKUの本店があると

エントリーシートに記されていた。


 下車した駅から10分ほど歩いていると、緊張と不安でドキドキしてくる

右手のシュシュを掴んで歩いていると、大きな交差点の向こうに花福本店

と書かれた、かすれた古くて大きな看板を見つける。交差点を渡って

その看板の下にたどり着くけど、シャッターには鍵が掛かっていた。


「あ、あのー・・・すいませーん」


 全くひと気がない・・・その建物の右にある細い路地を見ても

ここじゃないような気がして不安になりつつエントリーシートを改めて見る。

そこに記された地図には、駅からこの交差点をまっすぐに渡り

商店街の入口を越えてバス停の先にバラのマークが有った。


「な、なんだここじゃないみたい・・・倉庫とかなのかな」


 地図に従い交差点をまっすぐに flowershopHANAFUKUと印刷された

履歴書が入る封筒を、手首を握る胸に抱いて暫く進むと、バス停の向こうに

大きなテントが歩道を覆い、その下にお花や観葉植物が所狭しと

並べられているのが見えて少しホッとした


 お店に近づくと、腰にトンカチや道具をぶら下げた作業着の方が地面に

しゃがみこんで、ノコギリで木を切りながら、近頃じゃちょっと珍しい

ギャル系の子となにか話してる、大工さんかなと思いながら通り過ぎ

遂に面接会場のHANAFUKU本店にたどり着いた。


 政令指定都市の下町にあたる住宅街を幹線道が左右に分断する場所に

本店は有って、あのキラキラなお花の国とは違い、お仏壇に供える

お花や観葉植物がたくさんディスプレイされた店内。その奥で忙しそうに

チャキチャキ働いてるお姉さんが見えて、お店の前で改めてシュシュを

握って「大丈夫」と呟いて店内に進み、その店員さんに声を掛けた


「あ、あのっ・・・面接に伺った美住はなです!」


「あー面接の子ね」

「社長表に居たでしょ、今ちょうど一人面接中だから行ってごらん」

「あ、いらっしゃい仏花一対にお榊ですね二千円です──────」


 やっぱり、ゆうこ店長が言った通り・・・頑張ってね、かぁ

忙しさにあっさりアシラワれてしまった・・・。



 お店を出ると、ちょうどさっきの女の子が話しを終えたみたいで

すれ違う私に、瞳から星が飛び出すようなキャっピキャピな

ウインクをしてお店の中に入っていった・・・。


 社長さんて、この大工さん見たいな人?


 ママに暴力を奮ったあの人と背格好がどことなく重なって、足が震えそうに

なるのをシュシュを握りしめて大丈夫と何度も心のなかで唱え

その怖そうな社長さんに話しかけた・・・


「あぁもうひとりか。悪いな忙しくてこのまま話してもいいか?」


「あ、ハイ! 面接に伺った美住はなです!」


「聞こえてたよ、元気なのはすごくイイ、合格」

「で、いつから来れる──────」


えっそんな・・・履歴書もエントリーシートも見ること無く

ご、合格?


「あの、履歴書とかは・・・」


「あぁ、まぁ一応書いてもらったが、実際」

「使ってみなきゃお前さんがどういう人間かなんて、わからないだろ」

「ガクセーで未成年、親御さんのサインは?」


「は、ハイ! エントリーシートにちゃんと──────」


「じゃ中のさち子に渡して帰っていいよ。明日から来れる?」

「まぁ、気負わず頑張ってくれ」

「はい、面接終わりッ!」


 最初はあの人みたいにいきなり怒鳴られるんじゃないかってすっごく

怖かったけど、社長さんは最後にわたしを見上げて──────

にぃーっと顔をくしゃくしゃにした笑顔を一瞬だけ見せて下さり

何事もなかったように作業に戻ってしまった。


 うぅ・・・不安と緊張とちょっと怖くてでもうドッキドキだよ・・・

本当に大丈夫かなわたし。不安におどおどしながら店内に戻ると

さっきのウインクの子が、後ろ手に店内に在る大きな観葉を見上げていた。


 そんな横を通って接客を終えた店長さんの、チャキチャキさち子さんに

書類の封筒を預けて店を出た。


はぁ・・・明日からか、なんかすごく不安。


「ねぇ! 待って待って、アンタもバイトの面接。・・・でしょ?」

突然そんな声を掛けられドキッとして振り返る。


「やっぱ合格だった? 面接ってキンチョーするよなー」


 ギャルっぽいその子は、わたしを追うように駆け寄って、並びながら

歩き矢継ぎ早にバイトについて話し出す。

少しハスキーボイスのその子はデニムのジャケットに缶バッチを

いっぱい付けて、シブヤ系とは少し違った雰囲気だなーって


 その事を話すと豪快にハハハと笑ってわたしの肩をペシペシ叩いた

自分は下北系バンギャだって言ってさ──────


「ねぇ! この後時間在る? カラオケ行こうよ親交を深めようぜ」

「──────戦友ゥ」


せ、戦友?


 距離感が少しおかしなその子に押し切られて、駅前のカラオケ店に

連れ込まれてしまった。初対面の子に突然手を引かれてわたし

ドキドキしてシュシュをずっと握りしめていた。


 彼女はそんな事お構いなしに、ボディバックとデニムジャケットを

壁際のソファに放り投げて、歌本の端末も見ずに、本体のボタンで歌番を

直入力した。あ、暗記してるのかなんて思っていると、ミュージック

ボリュームをいっぱいまで上げた。曲がかかり始め、その大音量に

びっくりしてるとエコーが掛かったマイクでわたしに叫ぶ──────


『あのさー! 時間もったいないからー アタシ、ガンガン歌っちゃうから!』

『歌う曲決まったら教えてー!!』


 そういって歌い出す

彼女の第一声に凄くドキドキした、男の子かと思った。

彼女は驚くほど歌が上手くて、まるでライブハウスのライブを一人で独占して

居るような気がして、わたしはすっかり圧倒されちゃって・・・


彼女もすっごくキラキラしてて・・・


「ねぇー! 歌わないのー?」


 爆音で流れる曲の間奏にそんな事を言うから、わたしはキラキラな彼女の

歌をもっともっと聞いていたくて、もっと歌ってと伝えたんだけど


「えーー? 聞こえないー? なんてー?」

っていうので、わたしは笑いながらマイクを取って


『もっと聞かせてー!!』

って、そう叫んだんだ──────


『おっけー! お嬢さん、アタシの魂歌に聞き惚れなーー!』


 そう言って有名な男性ロックバンドの名曲や、知らないガールズバンド

の曲を中心に2時間歌い続けた。



「ハァハァ、歌ったー! マジ限界、喉いてー」

「ヨシなんか食おうぜ戦友ゥー」


 そう言って彼女は軽食をいっぱい頼んで、残り一時間お互いの事を紹介

しあった──────


 彼女は日高 きさら。歌が上手なバンギャル。学校も学年もバラバラの

高校学生バンドでギターを手にたまに、ライブハウスのステージに立ってる

らしい。どおりで歌ってる姿がキラキラしてる訳だね。


 話を聞くとわたしと同じ高3の同い年。でも彼女のスタイルと真反対の

私立の有名女子校在籍らしい。バンドメンバーをまとめ上げるリーダーだけあって

すごく人当たりがよくって男勝り。女子校みたいだからきっと校内にファンも

いっぱいよね。


だってキラキラでカッコイイもん


「ねぇ、ハナ! あハナって呼んでいい?」

「アタシはキサでもキサラでもいいからさ。ねぇハナのことも聞かせなよ!」


 そう言われて照れながら、自分の事をおかえしに話した。ママと二人暮らしの事

テニスをやってたこと、怪我をして辞めたことと。あと・・・あのヒトのせいで

男性恐怖症になってしまったこととか・・・


「そっか、好きなこと出来なくなるのって辛いな」

「アタシ歌えなくなったらさ、たぶん死ぬ」


「だ、ダメだよ! ぜったい死んじゃダメ!!」


「ハハハ心配してくれんだアタシの事、大丈夫そんくらい辛いって事」

「でもハナはさ、次のステージに向かって立ち上がった。カッケーよマジで」

「なぁ、なんでテニスの次のステージをさ、あの花屋のバイトに決めたんだ?」

「アタシはねー ──────」


 そう言われて考え込む。たしかに憧れのお店っていうのは有ったけどさ

でも、それだけだったのかな・・・ シュシュを握って考え込む・・・


「あーっ! おまえー。アタシわかっちったヒヒヒ」


『男だー、恋だー』


「えっ・・・やっ。ち、ちがっ───マイクでやめてよもう!」


「だってさ、そのシュシュさ手作りっしょ?」

「ハナのキレイ目コーデに全然合ってなよね、それ」


「そんなカッケー柄のシュシュなんて売ってないっテーのっ」

「ハナさー気付いてない? 不安になるとそれ握りしめてる」


『なぁなぁ、誰にもらったんだー?』


 ドキッとした。男の人が苦手なのに彼にもらったバンダナを身に着けていると

なんか勇気が貰える気がして・・・さっきの社長さんとの面接だってきっと

これがなかったら、えっ・・・これって──────


「あー、ヒヒ。赤くなった・・・いいなぁーマジ青春って感じ」


「ち、違うってばもう!」

「わたし、なんか夢中になれる事、探してて」


あれ? なんで必死になってるんだろう──────


「あのお店の人達みんな、一心に夢中でお仕事しててキラキラしてて・・・」

「キサちゃんも、歌ってる時すっごくキラキラしててさ」


そうだよ・・・わたし、テニスに変わるキラキラが欲しくて──────


「そういうのが憧れなの。だからあの西口のお店で募集を見てさ」

「テニスの代わりの・・・わたしが失くしちゃったキラキラを」

「あのお店で貰えるかなって・・・」


咄嗟に言い訳みたいに早口で話しちゃった、どうして──────だろ



「ハナさぁ、あんた、めちゃキラキラしてんじゃん今」


「えっ・・・」


 思っても見なかった、自分では失意の底で藻掻いてるような気持ちで居たのに

なんでキサちゃんにはそう見えたんだろう・・・


「アタシさ、本当はハナみたいなキレイメの服着てさー」

「好きんなった男と、港が見える公園でキスするのが夢でさ」

「──────憧れなんだよね」


「でもアタシさ、こんな声だし好きな曲もこんなんばっかだしさ」

「アタシから見たらハナは憧れの存在だよ・・・」

「カワイイし──────」


「やだ誂わないでよ・・・」


「要はさ、心構えの問題なわけさ、アタシのあこがれをハナは素で実践してる」

「ハナは今、アタシから見たら眩しいくらい輝いてる」

「でもさ──────」



「アンタ、それ自分で曇らせてない?」



「えっ──────」


 ドキっとした。確かにわたしは“いつもどおり”を繰り返して

変化のない安心をずっと求めてた。テニス意外のキラキラを自分の

選択肢から排除していたんだ・・・


 絶対に変わらない安定を求めていたんだ。

だからテニスができなくなって絶望して──────


痛む手首に巻いた彼のバンダナで作ったシュシュを握る。


「ホラまた、フフッ・・・」

「んま、明日から楽しくなりそうじゃん! 取り敢えず二週間よろしくなハナ」

「ヤッベ! もうこんな時間じゃんね。ハナ門限とかだいじょ?」


「うん、門限とか特に無いうちだから」


「ふぅん、じゃあさホテルいこっか! ハナ男以外なら平気なんでしょ?」


「えっ・・・や、ヤダ! 何言ってるのよキサちゃん!!」

うそ・・・きさちゃんってそっちのヒトなの?!


「まーたシュシュ握った。イヒヒ、かーいいなもー・・・」

「だーれーにー、貰ったんだー。そーれー?」


「もう、知らないっ!!」


「でもマジな話しさ、見つかるとイイな、あそこでアンタのキラキラ」

「アタシさ、マジなハナのキラキラ、見たいよ」

「今日の熱唱のお礼でさ、絶対見せてよ──────」


「眩しいぐらいのハナの煌き」




 駅からマンションまでの道のりを右手首を掴みながら歩く。

人は見かけによらぬものって諺にあるけれど、きさちゃんは本当に

そんな子だ。優しくてキラキラでカッコよくって。

でも、わたしの心をシッカリ見抜いてて・・・あの彼と同じぐらい

ドキドキさせられちゃった。


 不思議。あのお店に集まってくる人たちって、個性的で魅力的なヒトばかり

そんな中に飛び込んでわたし、本当に輝けるのかな・・・


 西口店長のあのヒトみたいにあっという間に大きくて素敵な花束を作りながら

微笑んで接客して。きさちゃんみたいに不安も恐れもなく緊張する面接の

あの場で、わたしに余裕のウインクが出来るほど堂々と。


 そして、この彼みたいに優しくて力強くて、お仕事に全力で向き合いながら 

初対面のわたしの手を取って、どん底から引き上げてくれるような──────



なんかわからない高揚に胸を高鳴らせて自宅のドアを開けた


「ただいまー・・・」


「あ、帰ってきた。ねぇハナこれさっき届いたんだけどさ」

「なんか心当たり、在る?」



 リビングのテーブルの上に小さな花束が乗っていた。

それはまるで結婚式で花嫁さんが持つような丸い小さなブーケ

ラッピングには小さなメッセージカードが添えられて・・・


宜しくな。


 書きなぐったようなチョット乱暴な字でただ一言だけそう記されていた。

その横に“園蔵”とスタンプ判子がほとんど横倒しの斜めに押されていた

まるでソレは、忙しいさなかに急いで書いたような・・・


「あっ! ちょっと、ハナー!」


心臓が止まりそうになって、掴んだ右手を胸の前で押さえる。

慌てて部屋に飛び込んで、今朝植え替えた素焼き鉢の花リビングに戻って

テーブルにおいた──────



その、知らない名の判子が押されたブーケは


この鉢植えと同じたくさんのバーベナの花で作られていた──────






- flower -






 ついに私の人生で二回目のアルバイト初日がやって来た。

当然、お仕事なのでいつものキレイ目のスカートルックを止め

パンツルックで家を出た。


 本店最寄り駅で下車して、ドキドキしながら改札を出るとすぐに

見知った顔が柱に寄りかかってスマホを眺めているのが見えて

そばに寄って肩をつつく。


「あーハナ! よかったぁー。先行っちまったのかと思ってさぁ」

「やっぱ不安じゃん? 一時間も前に着ちゃってさー」


 ふふっ、昨日あんなに堂々と何曲も熱唱してたのに、きさちゃんでも

やっぱり初めては不安なんだ。なんかチョット安心した・・・


「くそー! ハナは今日もカワイイなー」

「今日は正当なシュシュの使い方でサイドポニーじゃんか!」

「なぁハナおねがい! 手を繋いでいこうゼ」


「ダメ、またそうやって誂うんだから──────」

「あ! そうだ、きさちゃんさ、昨日お家にお花とか届いた?」


 思わず聞いてしまった・・・

きさちゃんは、届いてないって不思議そうにわたしの顔を覗き込んで

ニシシと笑った。やぶ蛇したあげく墓穴掘った気分だよ、うー・・・



 そんなやり取りをしながら商店街の入口を通り過ぎ、本店の前に来ると

背の小さなゆるふわ系の子がオロオロしていて店が開くのを待ってるみたい


 きさちゃんがお店を指差すと

頬をピンク色に染めた顔を上下にこくこく頷く・・・


思った。あー、この子はきっと即きさちゃんの餌食だなぁって



 彼女は夢宮 はるな。私と同じ学校の二年生。つまりわたしの後輩。

話を聞くと、はじめてのアルバイトみたいで、もう泣きそうになってた


はるちゃーん、まだ何もはじまってないよー。


 そんな半べそのはるちゃんを、きさちゃんが後ろから抱きかかえて

左右に揺らしながら満面の笑顔で笑ってる。

ゴメンネ、はるちゃん矛先がさっそくそっちに行っちゃった・・・



 そうこうしてるうちに、昨日履歴書を渡した店長さんがVespaと書かれた

白いスクーターで出勤してきて、バイクを降りるとわたし達に

シュっと右手を上げて、お店のシャッターを開けた。


 ついに始まるんだ・・・そうおもうとドキドキ心が高鳴る

隣の二人を見るときっと同じ心境なんだろうな、緊張してた。



 わたし達は店内二階の事務所でエプロンを受け取って荷物を置き

お店に降りてさっそく身に付ける。オロオロはるちゃんのエプロン、

その腰紐をきさちゃんが結ってると、ガラスケースの脇にテープで

張り出されていた伝票に目を通し終えた店長が、煙草を吸いおえて

吸い殻をコンクリの床にポトリと落として

振り向いた。


「じゃぼちぼち始めようか。あたしは荒山 さち」

「花福 藤乃宮本店の店長だ」


「よし! 少女共、自己紹介!!」


緊張しながらわたし達は自己紹介をした。

皆が自己紹介を終える頃には、わたしたちの紹介に頷いていた

店長が二本目の煙草を吸い終えて──────


「みんな、悪いけどあたし、人の苗字覚えるの苦手だから名前で呼ぶ」

「他意はないから気を悪くしないで」


ふふっ、やっぱりチャッキチャキだ店長さん。


「きさら、はるな、はな、まずは店の前の掃き掃除、ハイ開始!」

三人はお互いの顔を見合わせてクスクス笑い、揃って──────


「はい、店長っ!!」


 そう云って始まった“いつものよう”ではない新しい一日。

きさちゃんが昨日わたしに呼びかけた「戦友」って言葉を思い出して

なんとなく可笑しくてクスクス笑えた。



 二十分ぐらいだったかな・・・

現代っ子には使い慣れない竹箒でお店の前をぐるっと掃き掃除。

正直そんなに汚れては居ないんだけど・・・

合格ラインがわからないよね。


 お店のなかを伺うと、店長さんがイソイソと花束を作っていた。

それもスゴイ手際で──────




「ひー、腰痛ぁ──────」

きさちゃんがそう云って腰を叩いていると、店の前に少し大きめの

トラックがお店に横付けされる。まるで示し合わせたようなタイミングで

店長が店から飛び出して


「少女共! 物資が着たぞー、さぁ店を飾るよ!」


 店長軍曹がそう云いながら、トラックの幌を開ける。

トラックの荷台には渡し板が幾重にも重なり、その上に所狭しとぎっしり

お花のケースが詰まってた。なんかそれが凄くキラキラに見えて・・・


「ステキ・・・あ──────」


 運転席から現れたバンダナの彼が、わたし達に目もくれず荷台のフタを

下ろしてひょいと荷台に上がる。

 

「カスミ、今日から二週間頑張ってもらう娘達。自己紹介、ハイ!」

チャキチャキ店長がそう彼に言うと、カスミさんが照れくさそうに

ほっぺを掻きながら


「園蔵 華墨、二十歳。宜しく」

それだけ云って、渡し板の棚からお花の詰まったケースをどんどん下ろし始める


「少女共! カスミがフラコン下ろすから、あんた達はそれぞれの場所に運んで」

「鉢植えはこっち、苗物はそっち。大きな鉢の観葉はカスミが運ぶから触るな」

「重いから怪我するぞ、さぁ!MOVE.MOVE.」



ひー、すごいまさに軍隊だよー。きさちゃん実は知ってたの?

約一時間掛けて、面接の時見たお花屋さんが

日曜朝の下町に出来上がる。


 はるちゃんはお店の奥で真っ青な顔してひっくり返した花桶に座り込み

きさちゃんはスポドリ飲んで、はるちゃんのほっぺをつついて大喜び。


 私も流石に使ったことのない筋肉が悲鳴を上げてた・・・

そんなあたしに、鉢から落ちた砂を掃いてこいと、店長に竹箒を渡されて

お店の外に出る。


 心地よい疲れに額の汗を手の甲で拭っていると

カスミさんはくわえタバコで店の脇からホースリールを引っ張り出して

店の周りにお水撒きをしている。竹箒に顎を乗せながらそれを見ていると

不思議とクスクス擽ったい笑いがこみ上げてきた。



 だってそうじゃない?

テニス部だったらさ、準備体操して、軽くアップでコートの周りを走ってから

部活を始めるのに、このお店の人達ときたらフフフッ。

いきなり全力疾走なんだもん・・・体壊しちゃうよ普通。


 それなのに、カスミくんも店長さんも一切苦痛に感じてる様子もなくて。

まるで、「あハイ。今、起きたので顔を洗いますね」みたいに

平然としてるんだもん・・・そんな彼らの日常がさ


今まさに彼がホースで撒いている水滴に反射した朝日が

映り込んだキラキラみたいに

輝いて見えて・・・


 やっぱり昨日まで普通だった、あみと明日太とわたしの居た世界とは

時間の流れが全く違うんだ・・・なんか身体は辛いのに新鮮な心地よさ。


 時計を見るといつのまにか9時半を少し回る頃。

新人バイト組が不安になって固まってたあの時からいつの間にかもう

二時間近く立ってるなんて・・・


「ハナ! 濡れるからそこどけ、流すから!」


 そう言われてお店の前に並んだ花達の隅に左右のスニーカーが隠れると

彼が飛ばした水流が、開店時に鉢からこぼれ落ちた砂埃を地面から洗い

流していく・・・それまでただの歩道だったのにさ、いつの間にかホラね。


お花畑だよ? もう、なんだかぜんぶが可笑しくて。

これってたぶん、ランナーズハイだと思う。


「なーに笑ってんだハナ隊員。プライス立てるから手伝え」


 店から出てきた店長が、緑色の棒についた手書きの値札の束を

わたしの頭にポンと乗せる。

お花の名前がわからない私に店長がしゃがんだ目の前にある鉢植えの

名前を呼び上げて、わたしがその名前をプライスタグの中から探し出して

店長に渡す。


なんだかそれも神経衰弱ゲームをしてるみたいでさ・・・


「楽しそうだなハナ。はいベゴニア600円 はやくしな」


ほらね──────。



 10時を回る頃にはお客様がちらほら来店してくる。

下町のお店だけ有って、朝に売れていくのはお仏壇に供える

“仏花”と神棚に捧げる“お榊”がメイン。


 きさちゃんはなんだか手慣れたように

レジ打ちしながら、ニコニコお婆ちゃんの接客してる。


 はるちゃんは赤ちゃんを抱いたお客様にオロオロしながら

接客して、そのままカウンターに案内して伝票を書いてもらってる・・・

売れたのかな?


私は店内の鉢植えに如雨露で水やりしながらそんな二人を見てた。


 彼はと云うと──────

カウンター奥の作業スペースで店長と一緒に煙草を吸いながら

二人で目元を真っ黒に染めながらわたし達を見てた・・・

悪魔が悪巧みをしてるように・・・


怖っ!


 お客さんが引けたタイミングで三人はバックスペースに

呼び出された。カスミくんが近くのコンビニで仕入れてきた袋を開けて

買ってきた飲み物を何本もバックスペースの机の上に広げその中から

歌舞伎揚げの袋を取り出して、当然のようにパーティー開けする


 歌舞伎揚げをワッシと鷲掴みしてガサガサとエプロンのポケットに

突っ込むのを店長が彼の頭にチョップして止める。


 わたしがクスクス笑いながら観てると

店長がタバコに火を灯しながら次なる指令を語り始めた。


「少女共、休憩しながら聞いて。明日からの配属先を伝える」


わたし達はそんな店長軍曹の命令をごくりと固唾を飲んで聞く・・・


「きさら、アンタ接客得意ね。下町のお客さんと相性もいい」

「藤乃宮本店で店売りを担当して」


「ガッテン承知!」



「はるな、アンタなんか存在感ある。んで、なんか売れる」

「西口店で店売り! むこうで頑張って」


「は、ひゃい!」



「ハナ、アンタガッツ有って身体も良く動く。元気イイし、カンも悪くない」

「藤乃宮本店で店売りと裏方担当──────」


「えっ・・・」


 わたしはすっかりこの後、あのお花の国で姫店長と一緒に花売りするもんだと

思い込んでいた・・・たくさんのキラキラが溢れるあの場所で・・・

なのに──────え?



えええっーーー!!



「どしたハナ、ハイ返事!」

「は、ハイ!」


うーわ返事・・・しちゃったよ・・・うぅー


 この店長さん、チャキチャキして一心不乱に見えて、この短時間で

わたし達の性格や得意を見抜いてたんだ。

スゴイの通り越してちょっと怖いよ・・・


 もしかして! この前、あの姫店長とお話してた時からわたし見られてた?!

ゆうこさんがわたしがテニスラケット持ってたの覚えてたのって・・・

全部、情報共有されてた・・・のかな



お、恐るべし社会人──────



「やったぜ! ハナ、アタシらずっと一緒だ、頑張ろうな!」


「う・・・うん」


ねぇわたし、この戦場で輝けると思う?

・・・きさちゃん。



「んじゃそういう事で、明日から出勤はそれぞれの店に直行で」

「understand? そろそろ西口の開店時間ね」

「カスミ、そっち宜しく。きさら、コッチ来な──────」


「アンタに店売りの極意、お客の心の掴み方。おしえてやるクックック」

あー・・・この店長、やっぱりだいぶ──────


「ハナ! 行くぞ。はるなっち、荷物持っておいで西口に行くから」


 ひゃいと若干怯えながらぐるぐるの瞳でカバンがある二階へ階段を

駆け上がっていった。いやぁぁ転ばないでよー・・・ 



てか、カスミくんなんでわたしだけ呼び捨てなの?



 そうして、きさちゃんが手をふる本店から、さっきのトラックに乗せられて

わたしとはるなちゃんを西口のお花の国へ・・・

と思ったら──────。



「ここ、ウチの倉庫な。で、入り口こっち」


 大きなシャッターがあるビルの一階にトラックが横付けされてカスミくんが

わたし達を置いて車を出ていく。オロオロはるちゃんと一緒にわたしもなんとなく

その彼のを追う。


「ひゃう・・・ま、真っ暗」

「つまずくから二人はそこ動かないで、今電気つけっから」

カスミくんが、事務所っぽい一角のスイッチを入れると倉庫内に明かりが灯る


「えっ・・・す、すご」


 その倉庫の中には、すごい量のカーネーションの鉢植えが所狭しとさっきの

フラコンに詰められて壁際の棚を中心に、移動式の棚台車、その上に幾重にも

倉庫一面まっかっか──────


「今ココにあるのが、再来週の母の日までに売るギフトのカーネ約1000鉢」

「火曜と土曜、来週の火曜のセリで社長が追加で2000鉢を仕入れてくっから」

「合計約3000。それを本店、西口の両店総動員で」

「再来週の母の日目掛け」

「全部──────」


「売るッ!」


「で、二人コッチ来て──────」


まってまって、ごめんカスミくん。チョット意味わからないですね・・・


カーネーションで真っ赤な棚の隙間を縫って、カスミくんの後を二人で追うと

今度は重そうな扉の前に来た。


「ココがストッカー。はるなっちは──────まあ入ることはないと思うけど」

「ハナ! おまえはたぶん結構入ることになると思うから」


やっぱり、なんでわたしだけ呼び捨てなのよカスミくんってば・・・

あ、こっちもすっご


 彼が開いたストッカーの扉の向こうは、まさに真冬。

お花が咲いてしまわないように低温にされたその室内には、新聞紙に包まれた

切り花って花束とかに使うお花が、ものすごい束で白い桶に漬けられて眠っていた


「はるなっち外にいてね、ハナちょっとコッチ来い」


「・・・はい」

「いいか、ここに入る時は必ず扉を開けておく事。いいか絶対覚えろ」

「もし、中で扉が閉まっちまったら──────」



 あのさ、どうしてわたしだけさっきから当たりが強いのよカスミくん

あのとき、お花の国で突き飛ばされたわたしの手を引いてくれた時は

もっと優しかったのに──────



 あーなんか腹たってきた。もう、心のなかではくん付けやめよ

よろしくねカスミのばか! やっぱ、わたし勘違いしてたんだ

彼になんか夢見てたんだね──────



「ハナ、ちゃんと聞いてた? マジで危ないんだからな、覚えた?」

「き、きいてたよ!」


 なによ──────、昨日のブーケとかさ、思わせぶりな事

しといてさぁ、あーわかった。キツイ仕事から逃げ出さないように

ホケン打ったってことな訳ね?


「やべ、もうこんな時間・・・ 西口行くからシャッターの前で待ってて」

「今、西口の軽トラ出すから、危ないからここにいろな」


 そう云ってカスミは本店のトラックと西口の古い軽トラを入れ替えて

ブッぷくれたわたしと、オメメぐるぐるはるちゃんの前に車を付けた。



「はるなっち助手席に乗って、ハナ!コッチ来て」


 ふてくされてカスミの後を追う。トラックの荷台、キャンバスのカーテンを

開けてカスミが荷台に上がる。お花の詰まった荷台の渡し板を組み替えて

荷台から降りる。


「ハナ乗れ、ココに座ってココ掴んで。絶対に顔出すなよ」

「俺がオマワリに捕まるから──────」


「ちょ! なんでわたしだけ荷台なんですか!!」


「は? だってさ、この車二人乗りだし・・・」

「って、時間無いからごねるなよ!」



なにこの扱い・・・あぁそうですか、わたしは“お荷物”ってわけねカスミ!


「ったく。ハナはいおやつ」


 そう云ってカスミはポケットから歌舞伎揚げを

ふたつ取り出して荷台の私に・・・って!!

なんで投げるのよ食べ物を!

いっこ落としたじゃない。ばかばかっ!! 


餌付けかっ!!


 そんなわたしの事なんか一切お構いなしに、カスミに荷台のカーテンを

閉められてしまう。真っ暗になった荷台で歌舞伎揚げにかぶりついた。


なによ・・・

美味しいのムカつく!



 10分ほど荷台の中のお花と一緒に揺られていると

車がゆっくり停まる。はぁ着いたのねわたしの憧れ()()()お花の国に

再びカーテンが開かれ、すっかりジト目のわたしを見て

姫店長がクスクス微笑んでた。


「おはようハナちゃん、フフフお疲れ様。」

「うー・・・ゆうこさーん、おは──────」


「わーこれが新人ちゃん二号で、そっちが一号ちゃんね!」

「やった、ふたりとも激カワー!!」


「おはようございます。短い間ですがよろしくお願いいたします」


 ゆうこさんに飛びついて荷台の私に手を伸ばしたお姉さん達・・・

確か昨日面接に向かう為に、このお花の国、花福西口店の前を通った時

ゆうこさんと一緒に手を振ってくれてたヒトたちだ──────


「ハナ!はやく降りろじゃま。店開けるぞ」


「──────はいはい」


 そう()()()()()に言われて荷台から降りる。

お花の国はシャッターが上げられ目印のパラソルが開かれては居るけれど・・・

お花がない。・・・ってまさか、ウソでしょカスミぃ!


「二回戦だハナ!俺が下ろすから“黒ちゃん”と“たかちゃん”の所に運んで」


まじか、まじだ・・・

これをカスミは大学がない時は毎日やってるってこと?!

体力バカかあなた・・・



 私がお花の国に感じていたキラキラふわふわな夢は

この時、見事にガラガラと音を立てて崩れ去っていった。



なによこれっ!!

三人の中でわたしだけ、めちゃガテン系のバイトじゃん!!



 そう思いながらも軽トラから大体30枚のフラコンをお店の前まで

運んで流石にヘロヘロ時計を見ると・・・

えっ! もう11時すぎなの?!


 荷運びの最中、すれ違いに自己紹介してくれた新庄たかこさんと

黒山ゆきさんが、どんどんお店をお花で飾り付けていく・・・


んん、あー。さっき倉庫で行っておけばよかった・・・


「・・・あの、ゆうこさん」

「どうしたのハナちゃん」


「ちょっと・・・お花摘みに」

「フフ、いってらっしゃい。後はいいよ私達にまかせて」

ペコリと頭を下げてお店のトイレに飛び込んだ・・・



「──────むぅ、カスミめ」


 ゆうこさんの花束に見惚れたバックスペースの奥

トイレで用を済ませ降ろしたデニムを持ち上げて、手を洗う。

身体が安心しちゃったのか、へなへなと再びお便座に座り込む──────


 つ、つかれた・・・

まさか二店舗の開店作業がぶっ通しで行われるなんて思ってなかった

太ももに両ひじを突いてあごを支えると、ため息が吹き出した・・・ 


 たしかに、あの日最初にこのバックスペースに来た時。

お花屋さんとしてのテクニカルなお仕事に不安を覚えたのは確かだけれど

ゆうこさんが云ってくれたように最初は誰も出来ないよって意味も分かる


・・・最初からあんなのはムリ!


 でも、まさか・・・あのキラキラで素敵なお花屋さんの裏側が

こんなに過酷だなんて想像もつかなかったよ──────。

そう思ってまたため息が一つ突いて出ると

外のバックスペースで話し声が聞こえてきた・・・

わたしの名前が出て思わず聞き耳を立ててしまう。



「──────。もう、そんなこと言っちゃダメよ、メ!」


「でもさぁゆうこさん、俺やっぱハナと一緒は駄目だわ」

「アイツ・・・無駄に眩しくてそばに居られるとツライってかさ」


「きら──────」


「こら! 声が大きいわよカスミくん、ダメよそんなこと言っちゃ──────」



決定的だった。



やっぱりそうだったんだねカスミって──────

思わせぶりな事されて、ちょっと舞い上がっちゃったけどさ──────

そっちがそういうつもりなら・・・はいはいわかりました。



上等じゃない。



 わたしをキライならキライって面と向かってはっきり云いなさいよ

あによ男のくせにッ! こっちはいつでも辞めて、アンタの前から

居なく・・・なっ──────て



──────いや、そうじゃない・・・



 アンタだってこのバイト絶対にキツイはず。

これでもわたし、テニスっていう勝負の世界にずっと居たのよ

ククク、いいよ──────カスミ、じゃ勝負しよっか──────




どっちが先に、へたばってバイト辞めるか勝負よカスミっ!!




「あのあの・・・ちょっとごめんなさい」

「あ、はるなさんゴメンね。カスミくん表の水やり手伝ってきて、おねがい」


 女の園から不遜な男子を追い出すゆうこさん、さすが!

そういう気遣いがないのよカスミ。

アンタにはっ!


 トイレの扉がノックされて決意を元に立ち上がる。

突然開かれた扉にはるなちゃんがひゃう! と声を上げたのをそっと抱いて

席を譲る、そのままズンズンとバックスペースに出る。


思わず今朝、姿見の前で結ってしまった、()()()()()サイドポニー。

髪留めの真っ赤なシュシュを一気に引き抜く。


 宿敵から受け取ったバンダナで作った真っ赤なペイズリー柄のシュシュ

それをキッと睨みつけてから、思いっきり噛み付いて、後ろ手に髪をまとめ上げる

噛み付いたシュシュで後ろ髪全部を本気(マジ)ポニーに結い上げる。

見てなさいよカスミッ!


「ハーナちゃん!」


 ゆうこさんがカウンターから振り返ってわたしの右手をそっと掴んで

今にも店を飛び出そうとする勢いのわたしを止めた。


「ね、今日カスミくんからおやつ貰った?」

突然そんな事聞かれて、すこし戸惑った。


そう、さっき荷台に

  “積載”された時に、餌投げ渡された・・・


「は、はい・・・」

「フフっ幾つ貰えたの、ひとつ?」

「えっ、ふたつですけど・・・」



「おーい、ハナ! グズグズすんな藤乃宮帰るぞ!」



「ハナちゃんあのね、カスミくんね──────」

「気になる子には無意識にたくさんあげちゃうのよ、お・や・つ 」

「可愛いでしょ? 覚えておいてあげてね」

「じゃ、頑張ってねハナちゃん!」



だってさカスミっ!

姫店長ゆうこさんにフォローさせるんじゃないわよばーか!!


 そう思いながら店の前で仁王立ちの宿敵のカスミを追い越して

勝手に軽トラの助手席の乗り込んでやった。窓枠に肘をついて

窓の外のお花の国を眺めていると


アイツ・・・


今度はゆきさんに歌舞伎揚げ渡してる。

はぁ、そう言えばこのあいだたかさんにもあげてたよね歌舞伎揚げ!

まーったく節操ないよねアンタってさ!



当然──────、腹たった。



そんな気も、まったくないけど、なんとなく。

ゆきさんに渡してるその数を気にしていると

ゆきさんは優雅な仕草でそれ丁寧に断った


ばーかばーか!・・・断られてやんの・・・べ。


 頭を掻きながら、店の中に入っていくカスミ。

少しだけムカッ腹がスゥって収まった。


あーわたし、ゆきさん好きぃ・・・


ポケットの中から残りの一つ。歌舞伎揚げを取り出して

アンタの顔に見立てて平手でパンと袋を叩いて真っ二つにわって

半分、ガリリとかぶりつく──────



 店の中からキレイな籠花が乗った黄色いフラコンをウエイターみたいに

片手で持って、伝票を口に咥えたカスミが戻ってくる。


あによ、カッコつけちゃって

落として台無しにシたのを、ゆうこさんに怒られたらイイんだ・・・


 荷台にフラコンを乗せて運転席に戻ったカスミ

咥えた伝票をダッシュボードに投げ置いてため息をつく。


「はぁー、とりあえずお疲れ。ほら、おやつ」


「──────いらない、今食べました」


「そっか。んー、ハナなんか怒ってるか?」

「ううーん、ぜーんぜん怒ってないよー、カスミ()()()


ニィーーっコリ笑ってそう言ってやった。



ごめんねカスミくん。わたし、あなたの()()()に居てッ!!






- flower -






 帰り際に配達が一件入って、付き合わされる。

さっきの花かご・・・アレンジメントだっけ? それを近くの

市民病院まで配達みたい。


全国お花屋さんネットワーク。“花えんじぇる”

加盟店のお花屋さんでカタログを見て注文するとたとえ届け先が遠方でも

届け先の最寄りにある加盟店がカタログの品を作って届けてくれる

システムらしい。


で、その流れからあなた、なんか自分の事を話してるけど

ごめんねカスミーン。


わたし、あなたのことは全く興味ない!


「──────。でさ俺、さち子に言ったんだ・・・」

「なぁ──────ハナ聞いてる?」


「あのさ、カスミ君。なんでわたしだけ呼び捨てなの?」


 興味なくてマーッタク聞いてませんでしたー。

とも言えないので、とりあえず腹の立つ疑問の一つを投げ返してやった。



「──────ごめん、なんか呼びやすくてさ」

「じゃ・・・ハナっち──────とか」


今ッ! 結ったポニーテールが浮いたんじゃないかって位に鳥肌立った!


「やめてよいまさら! もう・・・いいよハナで」


 そう呼ばれてたほうがまだマシ。

なんで敵にあだ名で呼ばれなきゃいけないのよっ!


「はぁ。まぁ疲れたよな・・・」

「バイトで入ってくる男集も下手すりゃ1日持たずに数時間で逃げ出すからな」

「帰ったらちょうどメシだからさ、もうちょっと我慢してくれなハナ」


お腹空いてイライラしてるわけじゃないわよッ!


 でも、たしかに男の子でもツライのは確か。フラコン一枚に鉢植えが6つ

その全てに土が詰まってる。同じガテン系でも土木のお仕事なら見た目で

判断できるけど、お花屋さんは表側がキラキラなぶん落差がすごい・・・

まぁ、わたしもその落差にやっつけられてる一人なんだけども・・・


「やべ、ちっとトイレ・・・やっぱさっき行っときゃよかったな」

「女の縄張りでなんか入りづらいんだよな西口の便所」

「コンビニ止まるけど、お前は大丈夫か?」


ホラまた! そういう所ッ、全くデリカシーが無いのよキミ!!

「平気です。たれる前に行ってきてください」


「んー・・・。な~んで怒ってるかなぁ・・・」

それはたぶんね、あなたには一生わからないと思うよカスミ!


 病院に向かう途中のコンビニに軽トラが停車してイソイソと

車を降りるカスミ。降りた途端、今までもじもじしてたのに

スッと背を伸ばしてさ・・・。たれればイイんだわ!


「はぁ──────・・・なによ、もう」


 なんでわたし、こんなにオコなんだろ・・・

なんか馬鹿らしくなってきた。そりゃさ、昨日あんな素敵なブーケを

届けてくれたりさ、このシュシュのバンダナをくれたりして

ひょっとしたら・・・なんて思ったけどさ──────


意味分かんないよ・・・


なんでわたしがキライならそんな事したんだろ

ねぇカスミあんたってさ、一体どういうヒトなの?


 この歌舞伎揚げにしてもそう。西口の子皆にあげてるみたいだし

そう言えば、ゆうこさんに一次面接受けてる時も紅茶のアテが歌舞伎揚げ

だった・・・餌付け? それとも厚意? わけわかんない!

あ、戻ってきた・・・


「あーあ、出た出た──────」


 キったなッ!! あのねぇ、わたし女子なんだけど? 男友達のノリで話すな!

ガッサガサコンビニ袋かき回してるあんたに云ってるのよカスミっ

頭の中でだけれど・・・


「ん。」

「え・・・」


 なに・・・これ、わたしが好きなグミキャンディ。しかも大好きなグレープ

なんで知ってるのよ!! 缶コーヒーを開けて飲んでないでさ・・・

カスミ! あんたまさかス、ストーカーとかそん──────


「チョット!なんでわたしが好きなお菓子知ってるのよ!!」


「は? だってテニスのかばんに付いてただろ、そのキャラ」

「な、ハナさ。煙草吸っていいか? 煙かったらそこのハンドル回して窓開けてな」

「いくよ、ベルトして──────」


な、なんなのよもう!!


 車のギヤを巧みに操作してバックしながら、火の着いていない煙草咥えた

その横顔は少し憂いを宿していて・・・、少し走るとカチリと音がして

手慣れた手付きでなにかを口元に、細く開けた窓に向かってフッっと

煙を逃した──────


「あのさ──────、俺のことキライならそれでいい。仕方ないよ」

「でもさ、俺も流石にツライよ。そんなにツンケンされちゃさ」


 なに・・・言ってるのよ──────あなたがさっき


「二週間だけ、二週間だけでいいからさ」

「ガマンしてフツーに接してくれないかな?」

「──────あまりそばに行かないようにするから・・・さ」


ち、ちが・・・なんで・・・よ


「つーいた。ちっと届けてくるから、待っててな」


 そう言うと車を降りてアレンジを持っていってしまった。

な、なによ・・・急にそん──────あ! あいつ伝票忘れてる!!


「カスミッ・・・だめ聞こえてない。もう、ばかばかッ!!」


伝票を掴み、車を飛び出して彼を追う・・・

なんで・・・そんな・・・ひょいひょいスキップしてるだけで

速いのよバカ!


もう・・・ちょ・・・つと、掴まえたっ!


「おっと、アレ? ハナ車に居たんじゃ」

「カスミっ! で、伝票・・・ハァ・・・ハァ・・・」

「もうカスミ足速いよ・・・この体力バカぁ」


「やべ・・・俺よくやるんだこれ。ありがとな──────」


「──────ハナ」


 そう言ってカスミはわたしの頭に手をおいて、ポンポンと弾ませた。

そして振り返って病院の裏手の入口に向かっていった・・・




 固まってしまった。

昔、あの人の事をまだ、“おとうさん”と呼んでた頃

ボール遊びが上手だって。わたしの頭に・・・


手を・・・


おいて──────



「ッ──────!!」



 振り返って車まで走る。何かが頬を伝うのを認めたくなくて手で

拭いながら必死にッ。車の助手席に飛び込んで靴を脱ぎ、シートの上で膝を抱えて

その中に顔を押し込む・・・


止まって! お願い、はやく止まればか! ・・・止まってよ!!

絶対に見られたくないカスミに・・・


なんで? なんで今さら──────今、思い出すのよこんな事・・・

ずっと忘れてたはずなのにっ!


「ッ!! カスミの──────ばかぁぁ・・・」




その涙はカスミが戻ってくる直前まで止まらなかった──────




「ふー、おまたせ。今日はなんか午前中からハードだな・・・」

「いつもはこんなじゃないんだよ・・・」


「・・・・・・」


「はぁ、無視はやめてくれ・・・頼むから。クるんだ俺そういうの」

「戻ったらさち子に相談してハナに近づかないようにするから──────」


「・・・・・・やだ」

「避けないでっ──────いいから・・・」


今たぶん顔も目も真っ赤だわたし・・・ぜったい見られたくない──────


「・・・な、もしかしてなんか具合悪いかハナ? 熱とか・・・」


 彼の手がわたしのおでこに伸びるのを、手でゆっくりはらう。

お願いだから・・・今優しくしないで。


「12時半か・・・。さ、帰ろハナ」

「・・・うん」


 横目で車をバックする彼の横顔をちらりと伺う・・・

カスミのせいなんだからね・・・。そんな彼は煙草を一振りして口に咥え

さっきみたいにボタンを押し込む。カチリと音がして、手慣れた手付きで

煙草に火を付けてまたギアの上に手をおく。



その手に・・・なんか、わかんないけど右手を重ねる・・・

──────やっぱり・・・怖くない



「んっ・・・。あーぁ!ムっつかしいなぁー、年頃の女の子の扱いって・・・」

「さ、帰ってあったかいご飯食べようぜ。ハナ」

「・・・・・・うん」


「ところでさ、さっきオレの事、カスミって名前で呼んだろ?」



「・・・・・・呼んでない」

「わたしは──────、あなたのことがキライです」


「──────そういう事は人の顔見て言うもんだ」

「そうだろハナ──────」


「・・・・・・怖いから──────ちゃんと前見て運転してカスミ」


「フッ、ふぅ~~。へーいへい──────」



 そうして本店に着いて、わたしを下ろしたカスミは

倉庫に車を戻しに行った。なんなのもう・・・初日の午前中だけで

こんなに色々あったら、わたし・・・心がもたないよ──────


「・・・ただいまぁ」


「あ! 帰ってきた、ハナー! ちょっち見てみろイイか」

「こうして紙をスーってしてクルッ、ぱ! なァスゲーだろ・・・ハナ?」


「ハナ。何かあった?」


 きさちゃんがお仏花の紙巻きを披露してくれたの、複雑な気持ちで見ちゃう

きっと、わたし達が色々あった間に、さち店長に教わったんだね。


「ううん! なんでも無いよ! スゴイねもうお仕事一個覚えちゃったんだ!」


「な、ハナ。アンタ──────泣いた?」


「ち、ちがうよ! 砂が目に入っちゃってさー。痛いよねー」


 咄嗟に付いたそんなウソはきさちゃんにはシッカリバッチリお見通しで

手首を掴まれて抱かれてしまう・・・ 



だめだよ今そんなことしたら・・・



「あーぁ! ハナさー、ポニーテールのがやっぱバチクソカワイイなーー」

(初日の午前中でもうそんな、眩しいぐらいにキラッキラに輝いちまって)


「・・・・ばか」



「おー戻ってきたな。よーし少女共、メシ頼むぞー・・・・・・」

「って──────、おー? なんだ百合か」


「おまえら! ウチは花屋だ」

「ユリとバラなら売るほどあるんだがなぁ・・・」


 さちさんが突然さ、そんなお花屋さんジョーク言うもんだからさ・・・

なんかもう可笑しくて可笑しくて・・・わたしとキサちゃんで大笑いしちゃった。


「お、なーんだ。みんなで楽しそうじゃねぇか、オジサンも混ぜてくれや」


二階から煙草に火をつけながら社長が降りてきた。




それから帰ってきたカスミと皆で店屋物を頼んでお昼した


わたしは“いつもどおり”のカレーライス。


でも今日のカレーライスは“いつも”よりチョットだけ──────



しょっぱかったかな・・・




- flower -



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