★9 こりずに魅了された!
よろしくお願いいたします。
走り出して角を2つ曲がると、疲れて立ち止まった。
手を繋いでいることを思い出して、慌てて手を放した。
息を整えると花菜は輝く笑顔を見せた。
「助けてくれてありがとう。三回目だね。」
ま、まぶしい!
「い、いや、波多野はぶっ飛ばそうかなって思っていたから。」
「あっ、殴られていたけど、大丈夫?痛くない?」
花菜は心配そうな顔になった。
「大丈夫、大丈夫。」
「でも頬が赤くなっているよ。」
街灯はあるものの薄暗かったから、ぐいっと近づいて来て、頬に手を伸ばしてきた!
後ろに下がりたいけど、体が動かない!
頬に指先が触れた!
「ああ、全然、まったく、これっぽっちも痛くない。大丈夫。」
ホントはちょっと痛いけど・・・
「・・・そう、良かった。ねえ、走ったら喉が乾いたね。カフェにでも行かない?」
ニッコリと微笑まれ、魅了されてしまった。
コイツは魔法使いか?答えは「イエス!」しか思い浮かばない・・・
「あ、ああ、行こうか。」
痺れたように答えた。
悪寒を感じた!慌てて辺りをキョロキョロ窺う。
ニヤニヤ笑う同級生は・・・いない?
スマホを向けているヤツは・・・いない?
誰も俺を気にしていない?
花菜は両手で俺の右手を強く握った。
「私はお、真吾を騙したりしないよ!」
「あ、ああ、うん。」
憑きものが落ちた。悪寒はなくなった。
「でも、傷つけちゃったよね、ゴメンね。」
「え、ああ、ほ、か、花菜は悪くない?うん、全然悪くないよ。
えっと、どこ、行くんだったっけ?」
花菜は手を繋いだまま歩き出した。
ふわふわとした多幸感が押し寄せてきた。
・・・
カフェで4人掛けに座っている。
前は空いていて隣には花菜が座っている。
くだらないことを話しているのに、凄く楽しい!なんなんだ?
突然、肩を思いっきり強く握られた!
「痛い!」
そーっと振り返ると、鬼の形相の隼人と凜々花がいた!
「お・ま・え~、心配して何度も連絡したのに、
無視して女の子ときゃっきゃ、うふふか!
いい加減にしろよ!」
「隼人をすっごく心配させるってこの最低ヤローが!」
「ひ~、すいません!」
・・・
「カラオケが終わって店の外に出たらさ、パトカーが来てて、
波多野が警察官に拘束されて喚いていたよ。
「桶島が悪いんだ~」って。あんまり面白いから、動画撮っちゃったけど、見る?」
意地悪な笑顔を浮かべて隼人がスマホを手に持った。
「・・・別にいいや。」
俺が断ると、隼人は機嫌を悪くした。
「すぐに、お前が心配になってメンションしたのに・・・」
「ホントだ!ゴメン!」
「まあ、いいや。で、どうなったんだ?全部、聞かせろ。」
花菜に聞かせたくないな・・・
できれば評価をお願いします。