★5 嘘告され、それを撮影され、SNSで晒された!
よろしくお願いいたします。
中学の頃を思い出しながらも、俺は前原と楽しそうなフリで話すことが出来た。
女の子は凜々花以外とは話したことがないので、好感度を上げることが出来るか
不安だったけど、話を真剣に聞いて相づちを大げさにうってみたら、
前原には効果的だったみたいだ。
だけど、やっぱり古傷がズキズキと痛くなってきた・・・
1時間が経過し、あとはデザートだけになったタイミングで、隼人が立ち上がった。
「お~い、盛り上がっているところ悪いけど、男は席移動してくれ~」
峰亜津美と谷垣美月、沖代由利子の三人組が声を上げた。
「桶島くん、こっち、こっち~」
右隣の峰は背が高めで痩せているのに胸が大きかった。
長い金髪、化粧がバッチリと決まっていて、美人と言えるだろう。
胸元の切れ込みが深いセーター、ミニスカートだった。
左隣の谷垣は、背は普通で、肩までの茶髪、たぬき顔で結構かわいい。
だけど、他人をいつもこき下ろしていたよな・・・
向かいに座っている沖代は小柄でちょっとぽっちゃり、黒髪が艶々と輝いていた。
「真吾く~ん、待っていたよ!」
「もっと早く回してよ、幹事さん!」
もう食べるのも、飲むのも終わっているみたいで、座った瞬間、
両隣から腕を組まれ、俺の腕に胸を押しつけてきた!
香水の匂いが凄い!もう臭いハラスメントっていうレベルだ!
ううっ、我慢だ、我慢!
「カッコいいよね、真吾くんって。ホントに給料いっぱいもらっているの?」
「うん、まあ。」
「キャー、凄い!凄い!」
・・・
中学2年の文化祭の時に、隼人に一緒に歌おうと誘われた。なんでそんな目立つことを!
前原小春へのストーカー行為の噂は、バスケ部内だけですぐに消えていたけど、
ペチャンコになっていた俺は学校では空気になっていた。
あまりにペチャンコになった俺に気づいた隼人から問いただされたが、
1年にレギュラーを奪われたからだと説明していた。
「なんで辞めるんだ!お前だったら、頑張ったらイケるって!」
とずいぶん励まされ、怒られていた。
これも励ましの一環だろうか?大きなお世話だけど・・・
「なんで俺が付き合わないといけないんだ?」
「凜々花に告白する前に、カッコいい俺を見せてやるんだ。」
「じゃあ、一人で歌えよ!」
「お前、歌うまいじゃん。親友なら一緒に歌って、俺を立ててくれるだろ?」
「イヤだよ!」
「歌うよな?」
「ええ~」
「う・た・う・よ・な!」
「お、おう!」
「それでこそ、なんでもOKの桶島だ!」
・・・
そして文化祭で隼人と二人で歌った。
拍手をたくさんもらったこともあって、メチャクチャ気持ちよかった。
その後すぐ、隼人は凜々花に告白して付き合うようになった。
・・・
文化祭の翌日、帰ろうとしたら峰亜津美に呼び止められた。
峰は当時から派手な顔立ちで、明るかったことからクラスの中心だった。
当然、俺とはまったく接触がなかったけど・・・
「ねえ桶島くん、私と付き合ってくれない?」
二人っきりになると、モジモジしながら告白された!
「えっ、でも、なんで?」
「文化祭で歌っているのが、凄くカッコよかったから・・・」
そのとき、俺が一番聞きたかった言葉だった。嬉しかった。
小さく、小さくなっていた自尊心がたちまち膨れ上がり、舞い上がってしまった。
峰の仕草も可愛らしかった。
「・・・ホントにいいの?」
「うん。」
一応、尋ねてみると満面の笑顔で応えてくれた!その笑顔がまた可愛かった!
「ありがとう、よろしくね!」
俺も満面の笑顔になると、峰の笑顔がイヤらしいものに変った!
「よかったなあ、桶島!お前に告白してくれるヤツなんて二度といないぞ!」
隣のクラスの波多野和樹がニヤニヤしながら、スマホで撮影しながら現れた!
「嘘告だけどね!」
違う場所から谷垣美月もニヤニヤしながら、スマホで撮影しながら現れた!
ドアップを狙っている!
「ゴメンね、アタシ、こんなことしたくなかったの。
だけど、桶島くん、調子にノっているから!きゃはははははは!」
峰が笑うと、波多野、谷垣、もうひとり来ていた沖代由利子も笑い出した。
俺は振り返り、とぼとぼと歩き出した。
「おいおい、彼女にさよならのキスくらいしたらどうだ?」
「きゃー、ステキ!」
「キモいから、止めてよ!」
笑い声がますます大きくなった。
メチャクチャ悲しくて、メチャクチャ情けなかった。
何を間違えたんだろうってそればっかり考えていた・・・
4日後の夕方、突然隼人と凜々花が俺の家にやって来た。
「・・・なあ真吾、なんで相談してくれないんだよ。」
悲しそうな隼人の声は震えていた。
どうもあの動画がヤツらのSNSを超えて学年中に拡散したようだ。
俺は携帯電話すらもっていないから、わからなかったけど・・・
波多野も文化祭で歌っていたけど、俺たちの方が圧倒的に盛り上がったのが
気にくわなかったんだろう。
「・・・ごめん。録画していたのは知っていたけど・・・。」
「・・・とりあえず、全部教えてくれ。」
号泣しながら一から説明すると、隼人は顔色を変えて立ち上がった。
「ちょっと、どうするつもり?」
「顔が倍になるまでぶん殴ってくる!」
「隼人!」
「もういいんだ!」
俺と凜々花は隼人の腕をつかんだ。
「よくない!俺がお前を誘わなかったら、こんなこと、ならなかった!」
「隼人のせいじゃない!騙したヤツらが悪いんだ。
だけど、もういい。
隼人が来てくれたから、怒ってくれたから、心配してくれたから、もういいんだ!」
「・・・ごめんな、俺のせいで・・・」
「ありがとう、隼人。」
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