★3 同窓会
よろしくお願いいたします。
明日投稿します。
5月の最初の土曜日に中学校3年の同窓会が初めて開催されることになった。
凜々花に言われてから体を鍛えて、猫背にならないよう気を付けた。
髪の毛を短くし、コンタクトに替え、オーダースーツで武装して出陣だ。
三宮駅前の居酒屋で18時からだったが、コンビニで神社のビジュアル本を衝動的に買って
しまった。一刻も早く読みたくなって、まだ17時なのに居酒屋に行ってみた。
6人掛けのテーブルが4つある誰も居ない個室に案内された。
誰もいなくてホッとしたけど、急に緊張してきた。
リベンジか・・・
最初に撃墜されたのは、幼なじみの穂崎花菜にフラれたことだ。
ん?フラれただけだよな・・・好きじゃないから断っただけ・・・
単なる自爆だ!
2回目に撃墜されたのは、バスケ部の前原小春にストーカー扱いされたこと。
何度思い出しても腹が立つ!
3回目に撃墜されたのは、嘘告されてOKしてしまい、
その場面を録画され、晒されたこと。
嘘告した峰亜津美、動画を撮って晒した波多野和樹と谷垣美月、
嘘告を見てあざ笑った沖代由利子。コイツらが本丸だ!
ヤツらに気に入られ、フッてあざ笑うことが出来るだろうか・・・
誰かが挨拶しながら引き戸を開いた。
「こんにちは~。」
幼なじみの穂崎花菜だった。
「・・・久しぶり、早いね。」
正直、動揺したけれど、なんとか自然に声が出せた、ほっ。
花菜は俺しかいないことに驚いたのか、挙動不審になっていた。
「えっ、し、桶島くんだけなの?」
「6時からだからね~」
「えっ、5時からでしょ?」
花菜はびっくりしながら、コートを脱いでハンガーにかけた。
「6時からだけど・・・誰も来てないでしょ。」
「大失敗だよ・・・」
がっくりしながら俺の右隣にトンと座った。
なぜ隣!
・・・
花菜とは中学校3年の時に同じクラスになったけど、話したことは・・・ないな!
高校も同じだったけど、同じクラスにはならず縁は切れたままだった。
・・・しかし、どんどん大人っぽく、キレイになっているな。
花菜は俺を上から下まで見ると少し驚いたようだった。
「・・・凄く変ったね。」
「・・・わかる?社会人デビューだよ。
この前、凜々花にいっぱいダメ出しくらって必死で直したんだ。
・・・穂崎さんはますますイイ感じだね。」
「ありがと。・・・桶島くんもカッコいいよ。」
みんなが来るまで1時間もあるので、生ビールを頼んで乾杯した。
緊張しているので、早いところ酔ってしまおう。
「う~ん、美味い!」
「だね~」
心底美味そうに生ビールを飲んだ後、こちらに向いてほんわか笑顔で話しかけてきた。
「桶島くんはソニック社なんだよね、研究職で働いているんだよね?」
「なんで知っているの?」
「おばさんがワンちゃんの散歩しているときに出会ったら、色々話してくれるからね。」
「そうなんだ。」
「うんうん、研究ばっかりしていて、家に全然帰ってこないとか、
彼女どころか友達もいないんじゃないかっていつも嘆いているよ。」
「・・・友達はいるよ。」
「彼女はいないんだね。」
嬉しそうだ。いや、優越感に浸っているのか?
「・・・そういう、穂崎さんは?」
「小学校の先生になったんだよ!」
「へー、どんな感じなの?」
ホントは彼氏がいるか訊いたんだけど、うまく躱されてしまった。
「2年生の担任をしているんだけど、子どもたち、可愛いよ~
子どもたち見ていたら、小学校時代の桶島くんや射場くんたちを思い出したよ。」
「毎日のように遊んでいたよね。」
「覚えているかな?初めて射場くんと同じクラスになって時にね、射場くんが私に絡んできたの。」
嬉しそうに話していた花菜だが、何やら声を潜めてきた。
「え~、そんなことあったかな?」
「うんうん、そしたら私を守って桶島くんが射場くんとケンカしたんだけど、結局、引き分けでね。
親友になっちゃったんだよ。・・・私を捨ててね。」
最後の言葉を放つとニヤニヤしていた。
「いやいやいや、ずっと三人で一緒に遊んでいたでしょ!」
俺を捨てたのはアンタだろって思った。
・・・子どものころの話に花が咲いた。
二人っきりになったときはどうしようって思ったけれど、
このまま誰も来なくてもいいなって思っていたら、幹事の二人が到着した。
射場隼人とその妻凜々花は俺たちの前に座った。
「おう、早いな。」
「ああ、穂崎さんは1時間も間違えたんだ。」
「ちょっと、恥ずかしいじゃない!」
花菜に肩を優しく叩かれた。
「桶島、ちょっと立ってみて。」
凜々花の目が今日も厳しい。
上から下までジロジロと眺めると評価を下した。
「そうね、前は下の下だったけど、今日は中の中ね。」
「凜々花の言うとおりにしたんだけど、中の中か~」
がっくりしてしまった。
「ちょっと厳しくないか?」
隼人が異論を挟むと凜々花は色をなして反論した。
「隼人は桶島に優しすぎる!」
「だから、俺に嫉妬するなよ!」
同級生たちが大きな声を出しながら次々と到着した。
「花菜、向こうの席に引っ越しするよ。」
「えっ、そ、そうなの。」
凜々花が花菜を連れて隣の席に移ってしまった。
・・・残念だ。
俺の左隣には前原小春が座った。うおっ、緊張感が甦って来た!
前原は小柄で茶髪を肩まで伸ばしていた。
中学校の時はショートだったよな・・・
いつも笑顔で可愛かったけど、大人になった今も可愛いな・・・
最後に峰亜津美と谷垣美月、沖代由利子の三人組が個室に入ってくると、
「こんにちは~。あれっ、射場、この人だれ?こんな人いたっけ?」
峰亜津美が俺を指さしていた。
「桶島真吾だよ。久しぶり。」
俺は笑顔を向けた。
「桶島くん!え~、あの、いん、小さかった?
背が高くって、すっごくカッコ良くなっているじゃない?」
「ホントだ!」
よしっ、凜々花にひどいこと言われたけど、そのアドバイスは正しかった!
つかみはOKだ!
できれば評価をお願いします。