南天の木の下に
ぼくのおばあちゃんは植物が大好きで
いつも庭にはたくさんの花が咲き実がなっていたよ
ある日、ぼくはとてもこわい夢をみたんだ!
どんなにこわいかって?
それはとーっても大きなかいじゅうが
ぼくをあたまから食べようとするんだ!!
いっしょうけんめい走っても
ズンズンおいかけてきて
ちっとも逃げられない!
そしてついに
ガブリ!!!!
うわぁぁぁぁぁ
ぼくはそこでゆめからさめた
目からはなみだがポロポロ
それを見たおばあちゃんは
たいせつにそだてている庭の南天の木の下に
つれて行ってくれたんだ
「南天の木の下にはね バクっていう良い妖怪がすんでいてね
こわい夢を食べてくれるんだよ」
そういっておばあちゃんは南天の木にむかって
「バクくえ!バクくえ!バクくえ!」とおまじないをとなえた
「これでもう ぼくのこわい夢はバクが食べてくれたよ」
そういってしわしわの手でぼくのあたまをやさしくなでてくれたんだ
赤くきれいな南天の実とやさしいおばあちゃんの手
こわい夢は消えたけれど
そのふたつはぼくの心にのこって
ふしぎとふわふわとした気持ちになったよ
それからしばらくして
ぼくがすこしだけおにいちゃんになったころ
おばあちゃんはてんごくにいってしまった
でもだいじょうぶ!
もうおにいちゃんだから
こわい夢をみたって泣かないもん!
…でもたまには泣いちゃうかも
そのときは
こっそりと南天の木の下で
「バクくえ!バクくえ!バクくえ!」
っておまじないをとなえるね