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ワシ、袋の中を知るのじゃ。

 


 ―セレリア門前―


 何じゃろか?沢山の人間達が門の所で集まり、慌ただしくしとるんじゃが


「のぅ。街の門とはこんなに騒がしいモノなのかの?」


「いや?...何かあったのか?俺、先に行って聞いてくるから、おい!お前等ちょっと待ってろ!」


「リーダー、オイラの方が足早ぇし、オイラが行くぜ!」


「いやいや。サルド馬鹿だしリーダーの方が良いでしょ。」


「流石にオイラでも話しは出来るぜ?アリナーはオイラを何だと思ってんだ?!」


「馬鹿だと思ってるに決まってるじゃない。」


「今にアリナーにギャフンと言わしてやるんだからな!」


「はいはい。ギャフンギャフン。」


「くっ...!」


「二人共、いい加減にジャレ合うのは止めなさいね。」


「「なっ...?!」」


 この人間達はコロコロと表情を変え愉快じゃの。成る程の。ふむふむ。サルドとアリナーの二人は仲が良い故に沢山言葉を交わしとるんじゃな。


 ......あ、二人は(つがい)かの?ふむふむ。ワシ、普通の人間として、めっちゃ成長しとるのじゃ。今のワシは普通の人間じゃが、流石ワシじゃな。この調子じゃと直ぐに、普通の人間を理解してしまうんじゃなかろうかの。楽しみじゃ。


「おい!止めろって言ってんだろ!?あいつ等は危険じゃねぇって!」


「ダリル!お前どうかしちまったんじゃないか!?アレはライガルだろう!安全な訳無いだろう!」


「だからっ!」


「おい!そこの【レリシエル】のメンバーは此方に来い!」


 む?ダリルはいつの間にあそこに行ったんじゃ?...して、あの人間達は...怒りかの?何故あの人間達は怒りの表情なんじゃろか?


「え?何?何か戦闘体勢っぽい?」


「リーダーいつの間に話しに行ったんだ?」


「何か問題でもあったのかしら?取り敢えず門番の指示に従った方が良さそうだわ。レリ君は此処で待っててね?様子を見てくるわね。」


「うむ。」


 エマの言葉にワシはちゃんと分かっておるのじゃ。との意味を込め、威厳たっぷりに頷けば、神達が人間達を見守る時の様な表情でエマはワシの頭を撫でたのじゃ。


 ふむふむ。エマがワシの頭を撫でたのは、ワシがライガルを撫でてやるのと同義なんじゃろ。

 つまり、先程の表情は、良い子じゃの。愛らしいの。って事なんじゃな。ワシ、また1つ人間を理解したのじゃ。


 ワシはライガルの背に乗ったまま、三人が合流し、一層、人間達が騒がしくなっておるのを見ておるんじゃが、うむ。ワシだけ人間達と少々離れて居るでな。

 ...ワシも普通の人間としてやって行けたら、あの輪に入って行けるのかの?


「がルぁ?」


「ふむ。そうじゃな。ワシにはライガルが居るのじゃ。よしよし。ライガルは優しい子じゃの。」


「がるガァ!」


 ライガル、めっちゃ愛らしい。こう、胸の辺りがきゅうきゅうするのじゃ。うむうむ。人間の感情は愉快じゃの。


 ◆◆◆◆


「だぁからっ!レリもあのライガルも問題ねぇっつてんだ!お前じゃ話しにならん!ローズ呼んで来い!」


「なっ?!貴様!またローズ様に迷惑を掛ける気か!?今日という今日はっ...許さん!」


 全く...何故、何時も何時もすんなり門を通してくれないんだ?懇切丁寧に事情を説明しても何時もこうだ。

 ローズが入れば話しが早くて済むんだが、それすらも...やはり、拳で語るしか...


「はいはーい!ちょっと何よ?落ち着きなさいよ!」


 そう、こうして何時も仲間に助けて貰ってる。ちょっとリーダーとして情けないので、そろそろ門番達にはすんなり通してくれる様になってくれると有難い。


「リーダーと門番達の仲って、何でいつも悪いんだ?」


「はぁ、サルドはやっぱり馬鹿ね。いや...童貞に何言っても分からないでしょうね!ははっ」


「ななななっ?!どっ...童貞じゃねぇし!」


「あらー?その反応が既に...」


「もう...2人もお止めなさい。で、リーダーとサリムさんは何を揉めてらっしゃるのでしょう?私達を呼んだ理由は何でしょうか?」


「あ...あぁ、ライガルと身元不明な子供なぞ、街に入れる事は出来んと...だな...」


「...何ておっしゃいました?声が小さくて聞こえませんわ。もう一度、宜しいでしょうか?」


「うっ...だから、だな...街の安全上...」


 うん。そうだな。エマの笑顔の圧力、怖いよな。分かる。俺には良く分かるぞ!

 だから、そろそろ俺達を通してくれ。


「はぁ、お話しになりませんね。先ず、身分証が無くても、お金を払って仮の身分証を作り、街に入る事が出来ると、法律でもありますわよね?」


「うっ...まぁ...」


 あ、サリムがエマの圧力に圧されてる。汗が凄いぞ?早く俺達を通して楽になれば良いのだがな。


「次に、門番と言えど、兵士...まさか、テイマーを知らない...何て仰いませんわよね?」


「もっ、勿論知っておるぞ!」


「なら、あのライガルはテイムされた魔物であると、勿論分かりますわよね?」


「お、おう...」


「さて、レリ君を含め私達が街に入れない理由は無くなりましたわよね?」


「......。」


 あー...御愁傷様。


「...仮身分証を1枚、頼む。」


 弱ってる所を申し訳ないが、さっさと金を出し仮身分証を貰う。

 サリムも、エマには敵わないと分かってるんだから直ぐに引けば良いのだがな。学習しないな。何時も最終的には可哀想な位ションボリしてるんだよな。


 ◆◆◆◆


 む?人間達が戻って来る様じゃの。早く街に行ってみたいのじゃ。


「待たせたなレリ、ほら、仮身分証だ。このカードにレリの血をちょっと垂らせば、セレリアの街へ自由に出入り出来るぞ。無くなさない様にしろよ?」


「ふむ。分かったのじゃ。」


 ダリルから人間の文字が刻まれた金属の薄い板を受け取り...血を垂らす?

 ふむふむ。成る程の。良く観察してみれば、これには所有者を確定する為の術式が刻まれてる様じゃな。もう1つの世界とは違う確たる個別識別方法じゃな。科学と魔法、うむ。人間とは面白いの。


「レリ君、大丈夫よ?ちょっと手を貸してね。私が痛くない様に魔法を掛けてあげるわ。」


「ほう。成る程の。」


 エマに手を差し出せば、ワシに痛みを緩和させる様な魔法を掛けたみたいじゃの。ふむふむ。魔法とは中々心地良い体感じゃな。


「男としての第一歩!オイラのナイフでスパッとやるんだ!」


「馬鹿!本当にスパッとして大怪我したらどうするのよ?!レリ、ちょっと手を切らせて貰うわよ?大丈夫、指先をちょっとだけ切るだけだからね?」


「うむ。」


 血を1滴、金属の板...カードに垂らせば小さな光を放ち、人間のワシがこのカードの所有者だと認識された様じゃな。

 魔法とは中々に面白いの。


「一応、ライガルにもレリが使役しているっていう何か...ねぇか?」


「そうね。間違ってレリ君のライガルに攻撃でもされたら大変だわ。何か身に付けてあげる物があれば良いのだけれども...私はライガルに合うサイズの物は無いわ。」


「うーん...私も無いわよ?」


「オイラもねぇな!」


「装飾品かの?」


「がルぅ...」


「ライガルや、大丈夫じゃ。ワシ、色々あるでの。ライガルの好きな物を選ぶのじゃ。」


 腰に付けた袋から、ワシが転生した際に身に付けてが、今、ワシが付けて無い装飾品をライガルの前に全部出してみたのじゃが...

 む?何か装飾品が増えてる気がするんじゃが...


 袋の中を覗い......ふむ。ワシは何も見なかったのじゃ。


 天界に居る筈の子供達と目が合ったなど.........子供達よ......流石にワシでも、普通の人間が、天界と繋がった袋を持って居るなどあり得ぬと、分かるのじゃ。


 ワシ、もしかして、子供達に、信用されてないのかの?うぅむ...


「ななななっ?!」


「え?!」


「ちょっ!?」


「......」


「ガルぅ!がウ!」


「ふむ。ライガルはこれが気に入ったのじゃな?」


「ガぅ!がル!」


「「「「いやいやいやいや?!」」」」


「む?どうかしたのかの?」


「「「「......。」」」」


 なんじゃ?人間達の様子がおかしいのじゃ。ワシが出した装飾品を......成る程の。


「別に人間達も欲しいのなら、好きな物を持って行くが良いのじゃ。」


「だっ...!駄目よ!?もう!レリ君何者なの?!」


「え...?好きな物を...?いだっ!」


「馬鹿!何貰おうとしてるのよ!?」


「だっ...だって...これ...」


「ぜ...全部...神話級(しんわきゅう)...」


「何じゃ?良く分からんが、ワシは使わんでの。」


「ふぅ...レリ君、これからは、迂闊に出しては駄目ですよ?これは、神話級のアイテム、国の宝物庫ですら、多分レリ君が出した数は無いでしょう。...下手するとレリ君の命が狙われるかも知れません。分かりましたか?私達も他言しませんから、迂闊に、出しては、駄目ですよ?私とお約束出来ますね?」


「う...うむ。分かったのじゃ。」


 出しては駄目らしいのじゃ。ワシ、今、数個付けておるが...ワシ、人間として長寿を全う出来るのかの?


「さ、こんな物騒な物は早く閉まって下さい。」


「うむ。」


 エマの迫力に圧される様にライガルが選んだ装飾品以外を仕舞うのじゃ。


 さて、ライガルが選んだ装飾品は、武力の神アウティエルの気配がする...多分、ライガルの腕に付けれる大きさの装飾品、守りの神セタティエスの気配がする...これは...首輪?ライガルの首周りも立派な毛が生えておるのじゃが、首輪をしても良いモノなのかの?


「はいはーい!私がライガルに付けてあげたいです!」


「ガぅ!」


「うむ。アリナーに任せるのじゃ。」


「ありがとー!ライガル、手を貸してね?」


 ほう。アリナーはライガルを撫でながら器用にライガルの手首、首へと装飾品を付けたのじゃ。

 あれはそうやって付けるものなんじゃな。ライガルも満足そうじゃの。


「ライガルに神話級のアイテムを2つも付けてるってのもアレだが、まぁ、うん。さっさと街に入るか。」


「そうね。細かい事はハウスに帰ってからにしましょう。」


「やっと一息つけるぜ!」


 やっとワシ達は街に入るのじゃ。人間達が住む場所へ入るには色々大変なんじゃな。



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