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ワシ、街に着いたのじゃ。

 


 ふむ。一体どれだけ歩いたのじゃろうか?休憩を挟みつつ森の中を進んでおるが、まだまだ人間の身体に慣れてない故か、ワシだけが疲れを感じ、優しいライガルがワシを背に乗せ、変わらぬ風景の中進んでおるのじゃ。


「~~でね?キミの呼び名は【レリ】ってどう?」


「あら、アリナーにしては良いんじゃないかしら。凄く素敵ね。」


「ちょっと女っぽくね?【ゴードン】とか【ゴリアス】とか...もっと強そうな名前が良くねぇか?なんなら、オイラが名乗ろうか!」


「うわぁ...壊滅的センスだわー...無いわー。」


「アリナーは女だから分かんねぇんだ!なぁ?あんたならこのセンス分かんだろー?!」


「おいサルド!ガキんちょを困らせるんじゃねぇ!俺も男だが、サルドのセンスは分からんぞ。アリナーの【レリ】で良いんじゃないか?」


「流石リーダーね!分かってるわー」


「ふむ?ワシの呼び名が決まったのじゃな?」


「えぇ。君は今日から【レリ】よ。改めて宜しくね?レリ君。」


「「「レリ、宜しく(な・ね)!」」」


「う、うむ。宜しく頼むのじゃ。」


 良く聞いて無かったのじゃが、ワシの名が決まったみたいじゃ。

 ......神の名に近いの。分かりやすくて良いのじゃ。ワシの姿は人間でも神でも、レリが付く名っぽい感じなんじゃな。ふむ。


 しても、人間とはやはり不便な生きじゃな。考え事をすれば、他の者の会話が聞けんのじゃ。神ならば考え事しながら幾らでも話しをちゃんと処理出来たんじゃがな。ふむ。今のワシは人間じゃ。注意せねばならんの。


「~~レリ、どうだ?」


 .........うむ。次から注意するのじゃ。


「......何の話しじゃったんじゃ?」


「おいおい!オイラ達の話し、ちゃんと聞いてておくれよー!」


「すまんの。ワシはまだ人間に慣れとらんでな。じゃが、ワシも学習するでの。安心するのじゃ。」


 次から注意するでの。威厳たっぷりに宣言じゃ。うむうむ。人間達もワシが普通の人間らしい成長をすると期待するじゃろ。


「お、おぅ。」


「......そうね、えぇ、えぇ。その事で私達はレリ君にお話ししてたのよ?」


 何じゃ?思ってたのと違って、人間達はそれぞれ違う不思議な表情をしておるのじゃ。

 そして、エマ以外が、ワシから目を反らし目頭を押さえておる。...エマもワシの肩に手を置き、目尻にうっすら...涙かの?ワシは悲しませたのか、喜ばせたのか...どっちなんじゃろの?


「む?話しとは何じゃ?」


 既にワシに普通の人間らしさの成長を期待してたのかの?...ふむ。成る程、ワシは人間達を喜ばせたんじゃな。

 ワシも、もう1つの世界での娯楽を見てたでな。少しなら人間の感情も理解出来るんじゃて。

 ......しかし、人間の感情の推察に慣れるまで、まだ時間を要するの。


 神であった時には感情の起伏なぞ無かった故な、うむ。ワシ自身の人間としての、感情も色々経験してみたいものじゃな。


「私達はレリ君の今後の話しをしてたのよ。」


「ワシの?」


 ワシはこの人間達と共に街へ行き、暫く普通の人間を観察して学ぶつもりじゃが...うむ?そんな話ししなかったかの?むむむ?

 思わず首を傾げ考えるんじゃが、良く分からんで、話しの先を促す様にエマを見てみるのじゃ。

 したら、エマも肯定するかの様にワシに頷きを返し


「えぇ。昨日、私達は冒険ギルドに所属してるっていうお話しをしたのは、覚えているかしら?」


「うむ。覚えておるのじゃ。アレじゃろ?冒険ギルドに所属しておるパーティーとやらじゃろ?」


「そうだ。俺達は冒険ギルドで稼いで生活してるんだ。んで、だ。レリは知らんかも知れんが、普通の人間は働かざる者食うべからずなんだ。だから、街に着いたらレリも冒険ギルドに登録して俺達のパーティーに見習いとして入るんだ。」


 「リーダー!ちゃんと説明しないと脳筋語じゃ分からないわよ!」


 「なっ?!」


 「リーダーが言いたいのは、レリ君が心配だからレリ君が1人立ち出来る様に、私達がお手伝いさせて欲しいの。レリ君にとっても悪い話しじゃ無いと思うのだけれども、駄目...かしら?」


 「うむ。分かったのじゃ。ワシも普通の人間のことは分からんでな、主等に任せるのじゃ。」


 「......オイラが言うのもなんだけど、レリ、もっと考えてから返事した方が良くね?レリ街に着いたら他の奴らに直ぐ騙されちまうぞ!」


 「む?」


 ワシ、騙されとるのかの?確かに、人間は嘘を付く生き物じゃが...


 「馬鹿サルドは黙ってなさいよ!大丈夫よ!私達がレリを守るからね!」


 あ、成る程の。アリナーは拳でワシを守ってくれるんじゃな。

 ......しかし、サルドはワシに害を無しとらんと思うんじゃがの...何故だか、その事を告げる事が出来んのじゃよ...


 「おい。アリナー、レリが引いてるぞ?程々にしとけ。」


 「...レリ君、大丈夫よ...直ぐに慣れるわ。」


 「う、うむ。」


 慣れなければならんと言う使命感の様なモノを感じるのじゃ。...エマが言うんじゃし、普通の人間のワシも、きっと慣れるんじゃろ...多分。


 何故じゃろ?ワシ、多分、今、不安と言うモノを感じとる気がするのじゃ。胸の辺りがざわざわするのじゃ。

 ......あまり心地良く無いの。


 「がルぁ...」


 うむ。そうか、ライガルもワシと同じ事を思っておる様じゃな。ライガルや、心配無い様じゃぞ。と、言う思いを込め、ライガルの頭を撫でてやれば少し落ち着いてきたのじゃ。ワシが。



 街までの道中、人間達はワシの今後について色々言っておったのじゃが、取り敢えず、全てに頷いたのじゃ。



 「お?レリ、見えるか?街が見えて来たぞ!」


 「む?」


 ダリルに言われ指さす方を見たのじゃが、


 「木と道じゃな。」


 「あー、レリ小さいから見えないんじゃない?ライガルの肩に移動して、ライガルに肩車してもらったら見えるんじゃない?」


 成る程の。肩車とは何じゃか分からんかったが、アリナーに身ぶり手振り教えてもらい、理解したのじゃ。


 「ライガルや、頼むのじゃ。」


 「がァ!」


 「っと...おぉ!」


 ライガルが立ち上がる勢いに体勢を崩しそうになったのじゃが、ワシの視界に、人工物が見え、何も通さずワシ自身の目で見えた街に、ワシ、ちょっと心が高揚したのじゃ。これがきっと感動じゃの。


 うむうむ。ワシ、ちゃんと人間やっとるのじゃ。神の時には味わう事の無かった心の揺れが楽しいの。


 「ふふっ。レリ君も見えたのね?私達の拠点でもある【セレリア】って街よ。王都に少し近い街だから、人が多くて活気のある街なのよ。...人に慣れていないレリ君は初めビックリしちゃうかも知れないわね。」


 徐々に近づけば街の大きさが染々分かるのじゃ。

 ......街を囲む壁、高いんじゃが、汚い色じゃな。所々ヒビもあるしの。守りの為の壁がこんなんで大丈夫なのかの?


 そんな事を思いながらも、街の入り口に付くまで存分に壁を観察したのじゃ。



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