表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

ワシ、人間と遭遇したのじゃ。

 


 ドサッ...ゴンッ!


「なっ?!...つぅ...!」


 何じゃ?!どうしたのじゃ!?突然ワシの身体中が痛み辺りを見回しながらワシは現状確認をしたのじゃ。


「がルルぅ!がルぁ!」


「お前達!陣形を崩すな!」


「「おう!」」


「サルド!お前がメンバーの中で一番足が早い!急いでギルドに報告し、援軍を連れて来い!」


「リーダー!」


「大丈夫だ!俺達は全力で時間稼ぎをする!早く行け!」


「くっ...!リーダー...皆...直ぐに援軍を連れて来る!生きておくれよ!」


 ......本当にどうなっとるんじゃ?


 ワシ、多分、ライガルから落ちたのじゃろ。故に身体中が痛いんじゃな。

 ...ふむ。ライガルの身体で前が見えんのじゃ。


「あ痛たた...ふむ。」


 初めての痛みは不愉快じゃが、ワシの身体は壊れておらん様じゃな。


「ライガルや、どうなっとるんじゃ?」


 全身の毛を逆立てるライガルを撫でてやりながら、ワシは身体を動かし見えんかったライガルの身体の先を見てみたのじゃ。


「がルぅ!がルゥが!」


「ふむ。成る程の。人間を見付けてくれたんじゃな。ライガルは良い子じゃのぉ。」


「「「なっ...!?」」」


「子供が何故ライガルと一緒に?!」


「おっ...おい!ガキんちょ!危ないぞ!」


「早くこっちに来い!」


「う、うむ?」


 人間達が何言ってるかさっぱり分からんのじゃ。一体何が危ないんじゃ?周りを見ても、ワシ、ライガル、人間達しか居らんのじゃが...


「ライガルや、何か分からんが危ない様じゃから移動するかの?」


「がルぅ?」


「お主等、何が危険か分からんが、安全な場所に案内してくれんかの?」


「いやいやいや!?ライガル!ライガルが危険だから!」


「え?何?!どういう事?!」


「ガキんちょ...お前もしかして...【テイマー】なのか?」


「え?でもこのライガル、首輪してないわよ?」


「それに、あの年でライガルを【テイム】するなんて、あるんだろうか?」


 何か、あの人間達、喜怒哀楽が激しいのじゃ。ワシ、置いてきぼりで暇じゃな。

 しかし、人間達は危険じゃと言いながら随分と悠長にお喋りしておるの。移動せんで良いのかの?


 ワシは、ライガルと戯れながら人間達が落ち着くのを待ったのじゃった。


「此処で議論してても仕方がねぇ。おい!そこのガキんちょ!」


 ふむふむ。ライガルの毛並み、温かさは心地良いの。このままギュッとして、もう一眠りしたいのじゃ。


「お前だよ!お前!ガキんちょ!」


「がルゥが!ガウ!」


「うおっ?!」


「これこれライガルや、落ち着くのじゃ。して、人間よ。ワシに何か用かの?」


 この人間は少々乱暴モノじゃな。少し肩が痛かったのじゃ。ワシを守ろうとしてくれておるライガルの優しさを少しは見習って欲しいのじゃ。


「お...おぅ。お前と、そのライガルとの関係を、だな...」


「む?ライガルとワシの関係...とな?ライガルはワシの初めての友達じゃが...それがどうしたんじゃ?」


「な、成る程...そのライガルは人間を襲ったりはしないのか...?」


 人間は一体何が言いたいんじゃろか?チラッとライガルを見てみた。

 うむ。首を傾げて愛らしいのじゃ。何と無くライガルをわしゃわしゃ撫で


「ふむ。ワシは襲われて無いのじゃ。ワシの初めての友達は愛らしく、賢く良い子なのじゃ。」


 ワシは普通の人間になったが、威厳たっぷりに友達であるライガルの良さを人間に伝えたのじゃ。


「そ、そうか。」


 良く分からんかったが、あの人間達の代表の様な人間は、少し離れた場所に居る人間達の元へ戻り、また何か話し合っておるのかの?

 再び暇になったのじゃ。ふむふむ。普通の人間に馴染む為にもあの人間達を観察してみようかの。


 人間達は4人、男2人に女2人、男の1人が代表みたいじゃな。成る程の。人間達は武器の様なモノをそれぞれ持って居る様じゃが、戦いに長けた人間達じゃろか?

 代表の男は大きな剣、足が早いらしいもう1人の男は小さな剣を数本、女は2人共に...何じゃ?棒の先に何か力の籠った装飾品が付いたモノじゃの。


 あ、魔法を使う為の武器かの?何か子供達が言っていた気がするのじゃ。ふむふむ。1人は赤い装飾品が付いており、1人は青い装飾品かの...

 確か、赤は火、青は水を司どる色じゃった気がするのじゃ。


 うむ。流石にこっちを見ながらコソコソと話されるのは不愉快になって来たのじゃ。


「お主等、さっきから一体何なのじゃ?」


「あ、いや...」


「ちょっとリーダー!ほら!」


「う......ふぅー...よし!

 あー...ガキんちょ、俺達は【冒険ギルド】に所属しているこのパーティーのリーダーで、俺はダリルってんだ。で、だな...お前は何処から来たんだ?親はどうした?何故ライガルと一緒に此処に居るんだ?」


「む?」


 何か沢山質問されたのじゃ...ちょっとびっくりしたのじゃよ。しかし...


「冒険ギルドとは何じゃ?戦いに長けた人間かの?...今、人間達は戦の最中じゃたのか?」


 今は大体平和じゃと聞いておったんじゃかな。


「は?ん??」


「えっと...先ずは冒険ギルドの説明からするわね?」


 ダリルと言う人間はワシの質問が良く分からんかったのか、代わりに青い装飾品の女、エマが説明してくれた話しによるとじゃな。


 冒険ギルドとは、【魔物】と呼ばれる生物と戦ったり、ダンジョンと呼ばれる場所で戦ったり、人間を守る為に人間と戦ったり......


「つまり、戦う人間の集まる所なんじゃな?」


「んー...冒険者達それぞれ個人的に冒険者になる理由があるけれど、基本的概念としては、弱い一般市民達を守る為に戦おうね。って感じかしら?戦闘狂の集まりでは無いの。そこは理解してくれると嬉しいわ。」


「ふむ。良い人間の集まりなんじゃな。」


「お、おぉ...そんな真っ直ぐな目で言われると...何だかアレだ。」


 え?違うのかの?ちょっと人間とは難しいのじゃ。


「ふふっ。そう言ってくれると嬉しいわ。それで...君...名前は?」


 ......あ。ワシ、人間での名前...無いのじゃ。

 そうじゃよな...ワシ達神も個体識別するのに名を与え使っておるで、人間達も親から初めての祝福として、個体識別の為の名を貰う...と、聞いたのじゃ。


「ふむ。ワシ、親が居らんでな。名前は無いのじゃ。ワシの事は好きに呼ぶが良いのじゃ。」


 取り敢えず、誤魔化す為に威厳たっぷりに言ってみたのじゃが...

 何だか、失敗してワシに怒られると思っておるワシの子供達みたいな表情をしてるのじゃが、ワシ、別に怒らんぞ?ワシ、人間でも威厳があり過ぎるのかの?


「......知らなかったとは言え...ごめんなさいね...」


「そうか...すまん!」


「オイラ達を許しておくれよ!そうだよな!だから、ライガルが友達なんだな!」


「アンタ馬鹿なの?!ちょっと、いや、ずっと黙ってなよ!ウチの馬鹿がごめんね?」


「イタ!アリナー!何するんだよ!」


「馬鹿を叩いただけよ!あ、私はアリナーって言うの宜しくね。で、この馬鹿はサルドよ。」


「う、うむ?」


「がルぁ?」


 だから、ワシ、怒らんぞ?ライガルも首を傾げておるのじゃ。ふむ。何だかいきなり喧しくなったのじゃ。

 ......これが、普通の人間と言うやつなのかの?暫く共にして観察させてくれると有り難いのじゃが...


「ワシとライガルをお主等と共にさせてくれんかの?人間達が居る場所へ行きたいのじゃ。」


「「「「勿論!良いぞ(わ)!」」」」


「う、うむ。宜しく頼むのじゃ。」


「ガウる!」


 めっちゃ歓迎されたのじゃ。ワシ、人間達の勢いにちょっとびっくりしたのじゃよ。心優しい人間で嬉しいの。人間達もワシの子供の様なモノじゃしの。うむうむ。


「今日はもう遅いからキャンプをして、明日出発しよう。」


「分かったのじゃ。」


 ワシはライガルと共に再び眠るのじゃった。



 ◆◆◆◆◆



「あの子の言葉を聞くと、きっとおじいさんに育てられたのね。そして多分...」


「くっ...みなまで言うな!」


「えー、リーダーってばこの手の話しに弱すぎでしょ!」


「アイツ、まだ子供なのに...神様が居るならアイツを救ってやっておくれよ!可哀想過ぎるだろ!」


「きっと、神様は私達にあの子を救いなさいと仰ってるのよ。あの子は中々聡明な子だと思うわ。私達でしっかり教育してあげれば...」


「あぁ、そうだな。街に馴染むまでは俺達が色々教えてやろう!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ