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第一話 大脱出


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、こんちくしょう!」

「捕まえろ! 王に害成すものを生かして返すな!」

「今ならまだ間に合うぞ~」

それ五秒前くらいだったら考えたんですけどね、ええテメエ隣の人の話聞いてましたかこの野郎。このまま行くと間に合うことはなさそうだ。

「くっそう、何がどうなっているか、説明しやがれやこんにゃろう!」

なんて叫びも向こうに聞こえやしないだろう。まあ聞こえていたところでどうにかなる問題ではないんだろうけど。

皆さん毎度お馴染み緋村始です。

ええと、どこから説明すればいいんでしょうか……。

「待て、王を殴ってただで済むと思うなよ……!」

「殺せ殺せ、事後承諾でいいから殺せ!」

今、絶賛逃走中です。



「……マジかよ」

気づけば目の前の景色は大きく変わっていた。赤い絨毯。前時代的な兵士。おまけに目の前にはいかにも王様ですというようなローブを身にまとっているオッサン。おまけにどうも不幸なことに俺の拳はオッサンにがっつりめり込んでいたらしい。オッサンの方は特に何かを言うこともなく絨毯に突っ伏していた。

「あ、あの~」

「……」

「え、嘘でしょ……ほら何か言ってくださいよ、元気ですとか、問題ないとか」

「……」

「あ、もしかして日本語分かりません? えっとじゃあ……はう、ドゥドゥ?」

オッサンは応えない。これは本当にまずいかもしれない。打ちどころが悪かったのだろうか。いやでもまさか俺みたいなやつのパンチで気絶するなんて思わないし。でも結構思いっきり殴っちゃったしなあ。これってもしかしなくても俺のせいになっていまうんではなかろうか。

「あ」

ふと思い立ったように周囲を見渡す。見れば周りには槍か何かを持った兵士がびっくりしたようにこっちを見ている。皆何があったのかよく分からないのだろう。俺だって分からないけどな。

とにかく、オッサンがこんな調子じゃあこの人たちに説明した方がいいだろう。

「ええっと……サ、サイトシーング?」

ハハン、と肩をすくめてみせる。生まれて初めてこんなアメリカンコメディアンみてえな笑い方したよ、全く。

「……」

「……」

きまずい沈黙が流れる。おかしいな、海外の人間に会ったら大体こう言っておけば大丈夫だって父ちゃん言ってたんだけどなあ。

「はは、ははは、は……」

「……」

「……」

「……ごめんなさい」

逃げた。

途端に兵士も思い出したかのようにわあっとこちらを追ってくる。とんでもない数だ。大広間のようなところを抜け、ようやっと城を出た、と思った瞬間に。

「殺せ殺せえ!」

とんでもない罵声が聞こえてきた、というわけだ。

なんていうか、急転直下すぎてもう何が何だか分からないよ……。



「くっそう、どうしてこんなしち面倒なことに……っ」

何とか市街地のようなところに出た。道行く人々が何だなんだとこちらを振り返るが、気にすることもなく走り抜ける。

「だから、さっきから悪気は無かったって言ってるでしょうが!」

「おのれ賊め、訳の分からないことばかり言いおって……」

振り向いて弁明しても、衛兵たちは聞く耳を持たない。というよりもこちらの言っていることが理解できないようだ。もしかして言葉が通じていないんだろうか。その割に俺には連中の言葉が分かるんだが……。

「待て待て待て待てえっ!」

とか考えているうちに衛兵たちとの距離はかなり縮まっていた。まずい。このままでは追いつかれてしまう。何とか引き離さないと……。

「って、ンなこと言われて止まる奴がいるわけないじゃないかよ……!」

道を適当に曲がる、狭い一本道だ。これなら、取り囲まれることはないはずだ。

「フハハ、馬鹿め、ここなら魔法を撃ったところでお前に避けることなどできまい!」

「へ?」

今、魔法って……。

「ぬん!」

驚く暇もなく、男は手に光を宿し、ささっと何かを描いた。円の中にいくつものひっかき傷のような文字。ひょっとしなくても、映画とかでよく見るような魔方陣だ。

ものの五秒ほどでそれを完成させると、男は両手を勢いよく突き出し、

「我、古の契約に従い大気の雷を震わす」

「ちょっ、待っ――」

「揺雷!」

叫びと共に、雷が足元に放たれる。地面が爆音と共に抉られた。

「うおわっ――テメエ、危ねえだろ!」

「ハッハー、まだまだぁ!」

二度目、三度目の雷撃――揺雷が放たれ、俺の足元に爆発が起きた。

「死ぬっ、死ぬっ、流石にこれは死ぬって!」

「ふははは、そらそらそらそら!」

何か、何か武器になるものを手に入れなければ。このままでは雷撃をまともに受けて、下手すれば死ぬ。

「……くそっ」

何とか通りを抜け、広い広場に出くわした。人々が何事かといった表情でこちらを見返すが、例によって無視した。

武器、何か武器は……。

「あれは……」

広場の中央にはやたら錆びた剣が突き刺さっていた。

「ちょうどいいや……っと」

すれ違いざまに剣をひっつかみ、とりあえず握った。そのまま加速を利用して一気に引っこ抜いた。素早く反転し、敵に相対する。

「オラオラ来やがれ……え?」

おかしい。

あれほど続いていた雷撃がすっかり止まっていた。大通りに出たから魔法を撃つのを止めたのだろうか。だがあれ程うるさかった連中が静かになったのは一体全体どういう訳だろう。

「まさか具合が悪くなったとか……」

そんな馬鹿な話があるかとも思うが、俺があいつらを倒したなんて覚えはないし、絶対無理だ。いや無理だろ、どうすんだよ、これ。持つだけ持ったけど、剣の扱いなんてちっともわからないし。

……とりあえず、両手で持ってそれっぽく構えてみる。

ひい、という声が上がる。え、さっき衛兵が追っかけてきたときはここまでリアクションとってなかったのに。見ればさっきこちらに魔法を撃ってきた兵士もガタガタと足を振るわせている。

「おい、大丈夫か?」

「え? お前、今なんて……」

「だから、大丈夫かどうかって聞いてるんだけど」

「え? ああ、大丈夫……」

やはりおかしい。さっきまでまるでこっちの話を聞いていなかったのに、何でいきなりこちらの話を聞けるようになったのだろうか。

「それよりも貴様、その剣……」

「んあ?」

「おい、賊は捕らえたか?」

遅れてきた兵士たちも、こちらに駆け寄ってくるが、その途中で歩みを止める。

「どうした?一体なぜ立ち止まって……」

司令官のような男がやって来たが、こちらの姿を見て黙り込んでしまう。

「ななななななななななななな」

「へ?」

しかし司令官は流石に優秀だった。

「とりあえずひっ捕らえろ!」

「ええええええええええええ!?」

逃走時間三十分弱。結局俺は捕まってしまった。途中おっかなびっくりに扱われたおかげで、特に危ない目に遭わなかったのがせめてもの救いだろうか。

尤もこれからどんな目に遭うかなんてわかったもんじゃないけれど。



いよいよ本編が始まりました。開幕から追われている主人公で大丈夫なんだろうか……。

ま、まあ一応武器も手に入れたし、大丈夫だよね。

一話当たりの文字数がよく分かってないので指摘があると嬉しいです。

あと、次回あたりにヒロインが出ます!多分!

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