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第四十話 獣との攻防

まず最初にしかけたのはレナだった。

「シッ」

早撃ちの火矢。貫通力を強化する術式を三重にしてかけるが、獣の頬には傷一つつかない。どうやら獣の皮膚は生物のそれを優に超えているようだ。

「とんでもない硬さですね……」

そう言いつつレナは乱雑に手を放った。きらりと瞬いた後にすぐに爆発。効いているとは微塵も思わないが、多少の足止めにはなるだろう。素早くジークとシルヴィアの許へと駆け寄る。

「あれは簡単には止まりませんね……切り札があるなら出し惜しみせずに教えていただきたいのですが」

「私の槍はあくまで神器の模倣品。残念ながら威力は本物には劣るだろうな」

「そちらは?」

「……神器の解放さえ当てればあるいは……だが」

「何か問題でも?」

ジークは手元の大剣を見つめる。

「先ほどの斬撃でかなりの魔力を消費した。撃てないこともないが、時間がかかる」

「となると、私たちの仕事はそれまでの時間稼ぎですね」

「簡単に言ってくれるな全く」

シルヴィアが自嘲気味に笑った。

「無理ですか?」

「誰にものを言っている」

そう言って、シルヴィアは槍をくるくると振り回した。そのまま、二人はジークを庇うようにして立つ。

「あいつを人に返すぞ」

「当然です」



シルヴィアは手元の槍を弄んだ。獣は確かに動きが読みやすいものの、しかし全ての攻撃は悉く通じない。当たりはするが、硬い皮膚に阻まれてしまうのだ。

「傷一つつけられないとはな……」

甘く見ていたわけではない。だが、神器に相当するような武器の攻撃を難なく受け止められるとは予想はつかないだろう。

「一つ救いがあるとすれば、これで倒す必要はないことぐらいか」

目的は時間稼ぎ。敵の動きを止めるだけなら、神器を放り投げるだけでも事足りる。当然、魔力の消費は激しいが、手元のカードが全て通用しない以上、次に繋げるしかない。

「始……」

あの姿が何に由来するのか、シルヴィアには分からない。彼女はレナと違い、聖痕を身に宿しているわけではないのだ。だが、それでも今の姿が禍々しいものであることは分かる。理性を失い、思うがままに暴力を振るう。そんな在り方は勇者とは程遠いだろう。故に認める訳にはいかない。暴力を振るう痛みも、人を傷つけることへの葛藤も、人の身で乗り越えるべきことだと思うから。故にシルヴィアは強く思う。緋村始を、人へと返す。今はそれだけを考えるのだ。

「とは言うものの、実際問題手詰まりだしな……」

あの姿が何に由来するのかは重要ではない。しかし、何が痛いるのかぐらいははっきりさせておきたかった。ジークの攻撃が効くかどうかもまだ分からない。レナはそれに当てにしているようだが、シルヴィアは楽観視していなかった。

「おい、まだか⁉」

「今やってる!」

ジークが不機嫌そうに叫び返す。剣に宿る魔力は膨大だが、しかし巨大な魔を祓うには至らない。ジークの額には汗が浮かんでいた。巨大な魔力はいつ暴発するともしれない。その制御には本来とてつもない集中力が必要だろう。ついさっきまで重傷を負っていた人間に可能なことではない。だがそれでも、やらなければ全員ここであの獣に始末されてしまうのだ。やるしかない。つい先ほどまで敵対していたはずの二人と一人は、ここに来て見事な連携を見せていた。

だが。

「ぐっ……」

シルヴィアの槍を獣が捉えた。片手で叩き落とすと、そのままシルヴィアを殴り飛ばそうとする。

「揺雷!」

しかしそこに素早く駆けるのは雷の槍。レナだ。素早くシルヴィアの許に駆け寄ると、レナはシルヴィアの背中に手を回した。

「もう限界ですか」

「誰が……っ」

そう言って立ち上がろうとするシルヴィアの肩を押さえつけ、レナがそっと耳元で囁いた。

「アレの見当はつきました。少しばかり考えがあるのですが」

「……一応聞いておくが、私に何をさせようというんだ?」

「あれを釘づけにしておいてください。動かれると失敗するかもしれません。それに、気取られるのも」

「ああ、分かった。だが長くはもたんぞ。魔力も、武器もそろそろ尽きる」

「ええ。彼が神器を解放するまでで構いません。どちらにしても、そこまでにケリがつかねば終わりです」

それだけ言うと、レナは獣に向かって火矢を放つ。しかし獣はそれを難なく弾き飛ばした。

「やはり術を使うほどに硬くなっていますね……アレ相手に短期決戦とか、正直かなり無理ゲーなんですが……」

レナは火矢と雷を交互に放つ。そしてそのままシルヴィアを睨み付ける。

「全く、文官は肉体労働というものを馬鹿にし過ぎじゃないか」

そんなことを言いながらシルヴィアを立ち上がる。獣はレナに向かってぐるると唸っているた。

「おい」

低い声で槍を叩きつける。ぎょろりと獣が睨み付けてくるが構わずその胴に回し蹴りを放った。

「よそ見をするな、相手は私だ」

獣はその顔に醜悪な笑みを浮かべた。それを苦々しく思いつつ、シルヴィアは一人呟く。

「長丁場になりそうだ、これは……」

お久しぶりです、風間です。獣戦もいよいよヤマ場。次回でそろそろ完結かなあといった感じです。新章もちょいちょい書いていきたいですね。過去編もちゃんとやります。許して。

それでは次回。

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