表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/49

第三十七話 追い立てる狩人

吹き飛んでいる始を見て、レナは眉をひそめた。

「あれは、魔力の塊……?」

以前、アンドリューから受けた一撃に似ている。あれは確か魔力の塊を暴発させたと言っていたはずだ。衝撃を受け、吹き飛んでいる始の姿は、そのときの状況に似ているように思われた。

「いや、違うな。魔力とは霊界のもの。直接物質界に干渉することは不可能なはずじゃ。あれはおそらく体術の一種じゃろう」

賢者はそう言って否定した。魔力の塊は確かに、それを知覚できる者にとっては手痛い一撃になるだろう。先日のレナが良い例だ。アンドリューはレナの耳元で魔力を暴発させることで、レナにまるで地面が揺れているかのように錯覚させた。だが、今回は違う。レナにとっては強い衝撃でも、実際にその肉体が吹き飛んだわけではない。始の肉体が吹き飛んでいるのはアンドリューの用いたものとは全くの別物だということになる。

「あいつ、口だけじゃないな。おそらく軍の武術の訓練でも受けているのだろう。すれ違いざまに攻撃を当てるのはリヒテンブルク皇国軍の特徴だ。何の訓練もなしに身につくものじゃない」

シルヴィアが補足する。まさに敵は戦闘のプロというわけだ。ただの怪力だというのなら、始にも対処はできただろう。だが、相手は戦闘のプロ。始はまさに絶好のカモだ。

「それだけではない」

賢者がさらに言う。その顔には、若干の汗が滲んでいた。

「あやつは結界を張った。おそらくそれは神器――つまり古の時代の兵器じゃが、おそらくそれだけではない。あの大剣もそうじゃろう」

「神器……それが何か問題が?」

「大ありじゃ。神器は使い手を選ぶ。要するに誰にでも扱えるような代物ではないのじゃ。そして、一つの神器に認められたものがもう一つに認められることなぞ、まずあり得ん」

神器とは古代から伝わる超兵器。訓練すれば誰にでも使える魔術とは違い、使うことのできる人間はごく一部のみ。しかしそれ故に威力は絶大だ。そして、一つの神器に適性のある者がもう一つの神器を扱う適性があるというのは本来あり得ないことなのだ。

「神器を扱うものたちは何かしらの能力が人間離れしているが故に選ばれる。いわば一点特化の者たちじゃ。そして、一点にのみ特化しているものが、他の分野をカバーできるものなど、まずありえん」

例えば足の速いものがいたとしよう。彼はもしかしたら、速く走ることのできる神器には選ばれるかもしれない。だが、彼が持つ者の腕力を何十倍にも上げる神器に選ばれることはまずありえないのだ。足の速い者ものが、力を何十倍にしても、元々力のある者に太刀打ちできるはずもない。異なるタイプの神器を同時に扱うのは全ての能力がとてつもなく高くない限り、不可能だ。

「先ほどの結界に大剣……あやつは二つの神器を使いこなしておる」

そんな不可能を可能にしている目の前の男。そんな男が聖剣を奪うとどうなるか。

「まさか……」

「ああ」

シルヴィアは遠くに映るジークを睨み据える。

「あいつ……或いは聖剣すらも扱えるかもしれん」



苛烈な攻めは激しさを増していた。

「ぐっ……」

「どうした、息が上がっているぞ」

先ほどまでのすれ違いざまの攻撃とは違い、至近距離から何度も剣を振り下ろされる。受け流しきれない衝撃が、体にずしりと響く。

「ツァーッ!」

「ぐおっ」

上段からの振り下ろし。剣を横に構えて受け止めるが、衝撃を殺しきることはできない。周囲に衝撃波が走り、膝を折りそうになるのを何とか耐えたが、ジークはそのまま叩き斬ろうと、剣に全体重をかけてくる。

「今ので確信したぞ……やはり貴様聖剣を扱えていない。担い手たる資格を持っているのは……」

カタカタと剣を震わせながら、ジークの剣は俺の目の前まで迫っていた。

「やはり、貴様は……」

「ギャーギャーギャーギャー……」

剣を横に払おうと動かす。少しでも均衡が崩れれば、体は真っ二つだ。膝は相変わらず笑っているし、おまけに顔の肉もひきつっている。

「やかましいんだよ、この野郎!」

それでも何とか相手に斬りつける。ジークも忌々しそうに後退した。これで仕切り直し。かなり体力は消耗しているが、それは向こうも同じだろう。あんな体験を担いで素早く移動しているのだ。あまり余裕があるとは思えない。

「くっ」

故に短期決戦。リーチは相手の方が長い。懐に踏み込み、大剣が振り回せないような距離に踏み込めば、あるいは何とかなるかもしれない。

俺はそう思って一歩を踏み出した。

と、そのとき。

「――⁉」

避けたのはただの勘だった。わずかに頬を何かが掠る。同時に熱い何かが顔をちろりと走る。血。一体何が起きたのか。

「フム、今のを躱すか。偶然にしては出来過ぎだな」

見ると、ジークは弓を構え、こちらに狙いを定めていた。一体いつの間にあんなものを引っ張り出したのか。

だが、そんなことを考えている間に、ジークは既に次の矢をつがえていた。

「だが、二度目は無い」

弓がびいんと揺れ、鋭い矢が空を切り裂いた。

そんなこんなでジーク戦の続きです。隔週更新がデフォになりつつありますが、次回はなるべく早めに更新したいと思います。ジーク戦もいよいよ山場です。ご期待ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ