第三十四話 雷神の追撃
――やられた。
シルヴィアは苦笑いをしながら立ち上がる。力で押し負けるなんていつ以来だろう。子供の頃はしょっちゅうだったが、ここ最近は全然だ。だからこそ、シルヴィアは笑う。
「まだまだ上には行けると、そういうことだな」
それだけ言うとシルヴィアは飛びあがった。同時に足元に雷撃が掠った。
「相も変わらず正確だな」
笑うと同時に体を曲げる。軌道を追うように雷か追撃する。
「――フォーチュニング・サンダー」
雷撃が曲がった。躱しきれない。雷が当たる。同時に爆発。シルヴィアは再び地面に落ちる。
「遠近両対応か。流石は精霊、戦闘技能は一流だな」
爆発に何とか耐える。それでもダメージを無効化出来る訳ではない。ふらつきながら立ち上がると、雷神は剣を大きく振り上げていた。
「あ……」
まずい。痺れがまだ取れない。回避が間に合わない。
「何突っ立ってるんです」
雷神に炎の矢が側面から叩き込まれる。雷神の首がわずかに傾いだ。驚いたシルヴィアの横に、すたりとレナが着地する。
「他人の心配とは、余裕だな」
「生憎と、そこまで余裕はありませんが……敵の首を獲る寸前はある意味最も隙が大きくなりますから」
二人は背中合わせになった。お互いに顔も見ずに眼前の敵を見据える。
「言っておくが、私はお前に負ける気はない」
「そんなにボロボロで何を言ってるんです?」
「そういうお前も、息が荒いぞ……デスクワークばかりで体力が落ちてるんじゃないのか?」
「誰が……ッ!」
言うと同時にレナは火球を風神に向かって放つ。しかし、風神の直前で、火球は大きく軌道を逸らし、遠方へと飛んでいく。
「くっ……」
「成程、そちらはそちらで攻撃が当たらず苦労しているわけか」
「そっちも力負けしているようですが?」
「これは思ったよりも長引きそうですね……」
レナが言うと同時に。左右から風と雷が襲った。
「派手にやられてんなあ」
「あの二人が……」
信じられないことだ、あの二人がやられるなんて。このままでは失敗してしまうかもしれない。
「手も足も出ないって感じだな。古代兵器の生き残りは伊達じゃないってわけか」
「だけど、本当にそれでいいのかな?」
「そらどういうこった」
ガルルがこちらを見る。別に何か深い考えがあるわけじゃない。だけど、少し引っかかるところがあったのだ。
「風神、雷神は力を示せ、って言ってたけど倒せとは言わなかった。確かに奴らを倒せれば力を示したことにはなるだろうけど……」
「ふむ、他の道があるかもしれない、と?」
「契約に従うとか言ってる奴らがあんなフワフワした文言を言ってるの、違和感があるんだよなあ」
彼らと賢者の間の契約とやらがどんなものなのか分からない。だが、彼らはただの門番じゃない。迎撃するだけなら、試練を開始するなんて宣言はしなくていいはずだ。
「だったらそれを二人に教えてやらねえと……」
「でも、俺が気づいているようなこと、あの二人が気づいてないし……」
「そうでもないかもしれねえぞ?」
ガルルさんは言う。
「戦士が一番大事にするのは、どうすれば生き残れるかってことだ。そのために敵を殺す方法をまず一番に考える。手練れの戦士ほど、それは顕著だ。逆に、戦わずに済むなんて考えを持つのはかなり難しい」
ぽんとガルルが俺の肩を叩いた。
「自分にしかできないことってのは、何も戦いの中にだけ探さなくたっていいさ。お前はお前のままで、奴らの隣に立ってりゃあいいんだよ」
ガルルに背中を押される。つんのめって前に出てしまった。
「やべっ」
精霊たちがこちらを向く。どうやら俺を敵と認識したらしい。
「汝らの」
「力を示せ」
風神は手から風を。そして雷神は雷を、俺に向かって撃ちだした。思わず剣を前に出すが、これで防げるだろうか。
――イイヤ、ダメダナ。オマエハシッテイル。ワレヲヨベ。コノヨスベテノユガミヲ。
脳裏によぎる声に反応する間もなく、風雷が俺の許へと押し寄せる。
「しまっ」
「くっ」
二人が慌ててこちらへと向かう。俺にしかできないことだとか言われておいて、結局このザマとは、なんとも情けない話だ。
その時。
「合格じゃ」
老人の声と共に、二つの攻撃が霧散した。
そんなこんなで続きです。過去編はもうちょい待って……。次回はいよいよ賢者の登場です。
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