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番外編 王と騎士の出会い 2

ぴたりと止まった剣を見据えた後、ホークは力を抜いた。明日の訓練もある。今日は早めに切り上げよう。

「励んでいるようだな」

近づいてくる人影。遠目でも誰だか分かる。ホークは剣を鞘にしまうと、素早く敬礼した。

「休め」

同時に手を後ろで組み、足を開く。近づいてくる人影はホークの前まで来ると、その姿を明らかにした。レスターだ。レスターは地面に残った足跡を見る。

「フム。魔術による機動力の上昇か。その制御は上手くいっていないようだが……」

「ハッ、申し訳ありません」

「構わん。元来戦場においては一撃離脱が基本だ。不動の敵相手であれば何度も切り返して斬るのは悪くないが、実際の戦闘の動きはもっと直線的だ。ここまで狭い空間で複雑な挙動をとる必要はあまりないからな」

ホークが訓練していたのは建物の陰。広さにしても大したものではなく、ニメートル四方といったところだ。ここで加速と急停止を行うのは熟練の兵士でも困難だろう。それを何とか可能にしているホークは確かに優秀だが、その訓練にも大して意味はないのだ。

「加速して敵に近づき、すれ違いざまに斬りつけ、そのまま離脱する。制動を行えば確かに安定だが、どちらかといえば加速の訓練を積んだ方が良いだろうな」

リヒテンブルクの戦闘方法は単純だ。素早く敵に突っ込んで攻撃し、反撃の前に離脱する。彼らが勝利を重ねているのはその戦法を徹底しているからだ。故にリヒテンブルクの兵士に求められるのは素早く敵に近づく能力である。正確に移動するよりもいかに敵陣に早く切り込むかの方が重要だ。ホークの訓練は前者に対しては確かに有用だが、後者には不向きだ。故にレスターはあまり非難はしなかったが、

「動かぬ敵を倒す予定でもあるのか?」

そんなことを、聞いてきた。

「……」

ホークは何も言わずに空を見つめる。それを見てもレスターは特に咎めることもなく、

「折角だ、成果を見せてみろ」

それだけ言って一歩下がった。

「ハッ」

ホークはそう言うと剣を引き抜いた。息を吐き、空間を見据える。

「――」

精神を研ぎ澄まし、余計なものを排除する。視覚、聴覚、そして触覚。限界まで切り落とし、目の前に仮想の敵を思い浮かべる。

大男。持っているのは戦斧。崩すは難儀。隙は無し。超えるべき壁をはっきりとイメージし、ホークは、

「シッ!」

行った。突きを出しつつ加速。すぐさまに切り返し、反転。来た道を戻るようにして再び突き。

今度は横へ回転しつつ、軌道にフェイントを入れる。再び切り返し。仮想の敵を突き崩すための突進を、ホークは何度も繰り返す。それはさながら舞のようだった。荒々しく、しかしどこか洗練された殺しの技。

「……」

息が苦しい。それでもホークは崩せない、敵は健在。ならばここが限界か。ホークは加速を止める。そのまま勢いよく上へ跳ねると、すれ違いざまに横一閃。すたりと着地してから、ホークはふうと息をついた。

「フム。見事なものだな。空中における軌道の制御を含めて、実戦部隊でも上位の部類に入るだろう」

だが、とレスターは続ける。

「私を殺すには至らない」

それにホークは答えない。沈黙を守るホークに対して、レスターはフンと鼻を鳴らした。

「まあ良い――それより明日の訓練には面白い奴が来る。相手をしてやれ」

「はっ」

上官の命令は絶対。故にホークは素早く敬礼をした。それを見るとレスターは頷き、

「励め」

それだけ言うと立ち去った。ホークはそれを姿勢を正して見送る。

――私を殺すには至らない――

「……」

背中に隠した左手を、ホークはぎゅっと握りしめた。

お久しぶりです、番外編になります。若いころのホークさんですが、今も昔も機嫌が悪そうですね。レスターさんは、まあ親馬鹿ということで一つ。

次回は本編かなあ。まあ番外編はゆっくり追っていただければと。それでは次回。

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