番外編 王と騎士の出会い 1
扉が開いた。アルフレッドは慌てて姿勢を正す。
「休め」
目の前の男に言われると同時に、腕を後ろで組み、休めの態勢をとる。
「ふむ、ご苦労。なぜ呼び出されたのかは理解できるか、スターリー」
「さあ」
アルフレッドは明後日の方を見て応える。それを見て男はふんと鼻を鳴らした。
「貴様がここに来たのは軍人になるためだ。貴族連中はお前がどこぞの戦場で野垂れ死ぬことを期待しているのだろうが、私は違う。お前がここに来た以上、使い物になるように鍛えるのが私の務めだ。故に貴様が王族であろうと手加減はせん」
「理解しております――レスター・バーンズ総司令」
レスターはその言葉に頷く。そして同時にアルフレッドを蹴とばした。
「ならば貴様が鍛錬にろくに参加していないことはどう言い訳するつもりだ――生憎と貴様を殺すことはできんが、それに近い状態に出来るんだぞ」
「いやあ、丁度腹痛が――でっ」
レスターが張り手をかます。アルフレッドは頬を押さえた。レスターはそれを冷ややかに見下ろす。
「貴様の腹のことなんざ知らん。罰は既に受けただろうから保留にしておいてやる。だが次サボるようなことになれば、私は陛下に貴様を殺す許可を頂くつもりだ。嫌なら次回からの訓練には必ず参加しろ――いいな?」
「えー」
レスターは腰から提げていた剣を引き抜き、アルフレッドの前に突き出す。
「返事は」
「イエス・サー」
アルフレッドは慌てて敬礼をした。
「……で?次の訓練には出るのか?」
「出るさ、死にたくないしな」
アルフレッドは図書館の窓枠に腰かけていた。目の前には眼鏡をかけた若者。オリバー・フルスタイン。オリバーは読んでいた本をぱたりと閉じると、そのまま立ち上がる。
「お前はいいよな、サボれて」
「親が偉いとこういうときに得するんだ……座学の成績も悪くないから、教官たちも何も言ってこないしな。それに……」
オリバーは眼鏡を持ち上げる。
「この目じゃ戦闘は絶望的だしな」
「お前どうやって入ったんだよ……」
「コネだ」
「はっきり言うなあ、お前」
アルフレッドは苦笑いを浮かべながら、外を見る。夕日が差し込み、思わず顔をしかめた。
と、そこに。
「お?」
窓の外では、誰かが剣を振っていた。もう訓練の時間は終了しているはずなのだが……。
「あれ、誰?」
「ああ、いつも自主練をしてるんだ。ホーク。ホーク・バーンズさ」
「へえ……」
アンドリューはホークを見下ろす。オリバーも隣に並んだ。
「……そのいかにも面白そうなものを見つけたって表情はやめろよな、毎度毎度その面見せられるこっちの身にもなってくれ」
「あ?でも面白ぇんだから仕方無えだろ」
「お前なあ……」
オリバーはあきれ顔でアルフレッドを見つめた。
「ホーク・バーンズ、ね……」
アルフレッドは口の中で、見下ろしている男の名前を転がした。
リヒテンブルク帝国陸軍士官学校。
かつて何名もの軍人が輩出した、リヒテンブルクの名門校である。アルフレッドが王となり、皇国軍が王と対立するまで、この学校では貴族たちが軍人となるために鍛錬を積んでいた。軍閥貴族と呼ばれる彼らは、ここで多くの訓練によってただの貴族から軍人へと生まれ変わり、皇国軍の活躍に貢献した。
そんな士官学校に通う生徒が二人。
アルフレッド・スターリーと、ホーク・バーンズ。
若き二人の物語は、まだ交わっていない……。
番外編、そんな長くはないですが数話分くらい続きます。本編もなるべく同時進行で行きたいですね、行けるかどうかは分かりませんが……。それにしても若くても王様は全然変わらねえな。まあそんなこんなで次は若いころのホークさんです、多分。お楽しみに。




