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第二十六話 軍人

同時刻。

王都の東にある地方都市、ヤルーダ。そこはかつてない程人でごった返していた。

王への反乱。その総軍がこの都市に集まっていたのだ。地方の貴族たちが続々と集まり、その数は七万に届こうとしていた。

その総大将は帝国陸軍総司令。レスターは中心の洋館で一人思案に耽っていた。

七万。戦を起こすにしては少々不安の残る数字だ。王都の兵士は一万に届くかどうかだろうが、兵士としての格が違う。雑兵程度で太刀打ちできる相手ではない。何せ、王はかつて千の兵で万の敵に相対し、勝利したのだ。いくら消耗しているとはいえ、守りに徹すれば向こうもそう簡単には音を上げない。耐えていれば国境警備隊が援軍としてやってくる。そうすればこちらに勝ちの目はなくなる。故に一刻も早く出陣すべきだとレスターは主張したのだが、

「あの馬鹿どもめ……」

当の貴族どもは未だに出陣しようとしない。それどころか宴会を開く始末だ。既に戦で勝った気でいる。あるいは誰が主導権を握るという腹の探り合いか。どちらにしてもレスターにはどうでもいいこと。勝ちの目が薄いと暗に伝えても、閣下が何をおっしゃる、閣下がいれば百人力などと適当なことばかり。そもそも勝った後誰を王にするのかも決まっていないのだ。王族は王とその娘だけ。他は貴族たちの権力争いで殺されたり、あるいは世に下ったりした。己で己の首をしめてきた連中は、しかしそのことに気づいていない。

レスターはこの戦で勝つことは困難だろうと考えていた。七万とは言っても貴族の私兵の寄せ集めであり、自分の指示を理解できるとは思えない。王都でアンドリューが工作を行っていても、こちらが押し切れる可能性は低い。そうなれば援軍を呼ばれ、負けるだろう。故にレスターが考えるのはその後。周辺国に感付かれる前に戦いを終わらせることだけだった。

「だがそれでも遅いか」

レスターはふっと笑う。虫の音がやんでいた。刺客だ。乱雑に短刀を投げる。隅でくぐもった声がした。

「教会か。大方オムの方にも向かっているのだろうな」

すると宵闇から溶け出すように、黒い装束にみを包んだ男たちが姿を現した。数は七。先ほどの短刀を受けたであろうひとりは、手から血をしたたらせていた。

「閣下。お覚悟を」

「貴族連中はどうした……と、聞くだけ無駄か」

レスターは笑った。ここまで来たということは、道中貴族に出くわさぬ方がおかしい。つまりは全員始末してきたということだろう。

「一応アレの親父共はそれなりに骨のあるやつだったのだが……」

「貴方ほど聡明な方ならば理解できるでしょう。残っているのは閣下お一人です」

黒装束はそう言うと短刀を構えた。それを見てレスターは鼻をフンと鳴らした。

「もとより私は担がれたにすぎん。この戦には何の思い入れもないが……」

言いつつ短刀を投げる。相手がそれを弾く。レスターは一瞬にして距離をつめた。

「奪われるのはどうにも我慢ができん」

敵の頭を掴む。そのまま壁へと叩きつけた。それを見て他の者が一斉に飛びかかる。

「遅い!」

レスターは気絶している黒装束をつかむと乱雑に払う。そのまま吹き飛ぶ敵に短刀を投げつけた。

「貴様ら、私を殺しに来たのだろう?何だその腑抜けた殺気は」

言うと同時に腰の剣を引き抜いた。

「殺したいなら、本気で殺しに来い」

背後から短刀が飛ぶ。気配を殺していたのだろう。レスターの背中にぶすりと刃が刺さった。

だが、それを受けてもレスターは立ち続ける。短刀を引き抜くと、そのまま前へ投げ捨てた。からんと音を立てて、短刀が床に転がる。

「どうした、手負いの老人に、何を躊躇っている」

黒装束たちは動かない。動けないのだ。確かに敵はレスター一人。それに短刀を受け、死に体だ。だがなぜか動けない。こちらの有利は揺らいでないはずなのに。近づけば呑まれる。そんな不安が暗殺者たちを包んだ。

「やれやれ、貴様らも殺し屋なのだろう?だったらそれなりの覚悟を見せろ」

「こっ、殺し屋などではない!」

「馬鹿、やめろ!」

一人が激高し、レスターに突っ込む。それをレスターは淡々と切り捨てた。どさりと崩れ落ちる黒装束を見下ろし、レスターは呟く。

「……やれやれ、一人で突っ込むか。愚かだな」

血塗られた剣を突き出し、レスターは敵を睨んだ。

「目的を見失うな、貴様らは私を殺しに来たのだろう?思想も信条も捨てろ。ただ奪うことのみが貴様らの王道と知れ」

最早場は完全にレスターが支配していた。暗殺兵たちは何も言えずに、ただじっとレスターの言葉に耳を傾けるばかりであった。

「不利だと分かれば相手を囲め。一人ずつではなく、全員で一斉に仕掛けろ。動きを封じようなどと考えるな。ただ急所に狙いを定め――」

レスターは剣を構えなおした。そのまま息を継ぎ、叫ぶ。

「かかれェッ!」

暗殺者が距離をつめる。瞳にあるのは恐怖。そして敬意だろうか。だがその速度が落ちる気配はない。

「――」

迫りくる刃を前に、帝国最後の将は、にやりと笑った。

というわけでレスター退場です。個人的に結構好きなキャラだったんですが、どうでしょう。

明日の更新ができるかは分かりませんが、まあ今週中にもう一回は更新したい。

感想を貰えるとモチベが上がるので、下さい(懇願)

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